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第52話 おたんこなすのアキラちゃんはどこに行ったの!!?

『速報です。本日、東京デカイサイトにて行われたイベントに対して英国政府からの声明が発表されました。内容は一個人の感情によって国家レベルでの損失が発生した。日本国及び当該の女性には強く抗議すると共に、技術的嫌がらせ、所謂テクニカルハラスメントに対する謝罪と賠償責任を果たすよう要求するとの事です。コメンテーターの左極さん、この声明ですがどのような事が考えられるでしょうか?』


『日本政府が悪いですよ。自国の技術者が他国の技術より優れたものを全世界に発表しちゃったんでしょう? 英国の損失をちゃんと補填してあげないと世界秩序を乱す行為になっちゃうから』


『なるほど。国売大学の羽翼先生、いかがでしょうか』


『その通り。日本政府が悪いですね。今回の反省を踏まえてこのテクハラを行った企業だっけ? そこの技術を中国か韓国に移転するのを考えた方が良いんじゃないかな』


『なるほど。貴重なご意見ありがとうございました。それでは次のコーナーです。国会議事堂前で行われている現政権に対する反対デモの人数が30万人を突破したとデモを主宰する中枢革命連合より発表されました。交通規制等は行われていないとの事です』



 ピッとリモコンを操作してアキコさんがテレビ画面を消した。今流れていた番組は月曜朝の名物と呼ばれる『リベラリストニュース』という番組で、偏向報道を公言している面白すぎて話題になっている番組だ。この番組の次の時間には『国粋報道』という真反対の論調のニュース番組が流れるため、この時間だけはニュース番組を見てるという若者も結構いるらしい。


 まぁ、そんなどうでもいいニュース番組のあれこれはどうでもいい。問題はこのニュースを見たアキコさんの表情が面白すぎることだ。


 無、と呼ぶべきだろうか。なんの表情も浮かべずにテレビの電源を落とした後、アキコさんはちょっと口を開けて斜め上を見て制止した。毎日のように彼女の顔を見ていた俺には分かる。あの顔は「もーむり。なにもかんがえたくない」の顔だ。


 大体20秒から30秒ほどだろうか。真面目過ぎるためにずっと呆けるという事が出来ないアキコさんは意識を取り戻すと、クワッと目じりを釣り上げて大きく叫んだ。



「アキラちゃんはどこ!? おたんこなすのアキラちゃんはどこに行ったの!!?」


『他社からの勧誘が酷かったため講演会後にこちらの手引きで会場から外に出したきりですね。連絡は取れるはずですが』


「じゃあ急いで戻ってと伝えてください! かすがちゃんも今日は一日、お疲れさまでした!!」


『いえいえ、こちらも良い仕事を頂きありがとうございました。また来年も開催される事を期待しています』



 プリプリと怒っていてもその怒りをこちらに向けることはない。この辺りアキコさんの根は生真面目なんだな、と思う。まぁ、頼まれたとはいえ連絡を入れることはないんだが。なんせ本人はレンタルを解除した後に俺の脳内でリリーベルとワイワイ歓送会を言ってるし。


 あ、そういえば結局今日は魂羽織を使ってないんだから、そのままアキコさんの所に『アキラ』を残していくのも手か。うん、そうしよう。アキコさんの明日の機嫌が大分変わってくるからな。たっぷり2時間くらい絞られた辺りで助けに入れば時間制限的にも問題ないだろう。


 ブーブー文句を垂れる『あきら』を魂羽織に入れたあと、首根っこ掴んで『部屋に戻ってました』とアキコさんの前に差し出してミッションコンプリート。怒られついでに今日話した量子コンピュータについてもアキコさんに説明してくれ。講演会のヒートアップっぷりを考えるにアレ作らされる可能性もあるしね。


 さて、激動のVVVエキスポも無事終了した。SNSでの反応はかなり上々で、Vタレファンだけではなく結構幅広い分野の人が立体映像アトラクションを楽しんでくれたみたいだ。特にアキコさんたちが一度試して「これは無理」とデチューンされた立体映像ホラーハウスは大評判で、多分世界一怖いんじゃないかとSNSの話題トレンドを総なめする勢いで話題にあげられている。


 あとは映像関連の会社から、この技術を作ったアトラクションを自社でも作りたい、使いたいという要望が結構挙げられているらしい。特に他の事務所のVタレとかがこれを言ってるみたいで、忙しくて気付かなかったが今回のイベント中には他の事務所や個人のVタレなんかも参加してたそうだ。


 それらのVタレが実際に歩いた感想をSNSで書いて、これを自分の配信で使えたら、使いたい。というか機材を売ってくれ! と言ってるそうだ。まぁ、そこはお値段交渉次第と言いますかね?


 SNSの反応を楽しみながら『雨宮かすが』のまま雨宮セキュリティーの車に乗り込む。イベントの後処理はまだまだ残っているからな。雨宮セキュリティー名義で確保している郊外の倉庫へと向かうと、複数人の口が堅い雨宮セキュリティー社員と本来の姿に戻った『ドッペルゲンガーのセシル』が汚れても良い服装で待機していた。


 汚れても良い、ではないな。すでに結構汚れている。はぁ、と一つため息を吐く。この様子じゃ結構苦戦しているかな?



『お疲れ様。セシル、調子が悪そうだな?』


『人数が多いから仕方ないさ。まぁ、最初にお話しした人たちが喋らなくなってからは皆口が軽くなってね。半分は喋ってくれたよ』


『そんなに入り込まれてるのが問題なんだがなぁ。うちが舐められてるのか日本が舐められてるのか』


『どっちもじゃないかな。雨宮セキュリティーは出来たばっかりだし、そもそも日本はスパイ天国だからね』


『問題だな。私は、舐められるのが嫌いなんだ。ああ、武器を持ち込んでいないただの「お客さん」は?』


『そっちは隣の倉庫だね。お話だけしかしてないけど、そちらはちゃんと会話するつもりはあるらしい』



 会話を交わしながら普段身に着けている学生服を脱ぎ、傍らに立つ無表情な社員にそれを預ける。泣いたり笑ったりできなくした後は忠実な『かすが』の部下になった彼は、目の前で何が起きても『かすが』の指示に忠実に従う素晴らしい社員だ。故にこの場でも彼は大活躍してくれているようで、倉庫の中に入った瞬間、その場にいたほぼ全ての人間の視線は彼か、もしくはセシルに向けられることとなる。


 多分に怯えを含んだ視線を流し見て、満足そうにうなずいた『かすが』は『どうやら私は必要ないようだ。私の上着を汚すなよ』と口にし、『セシル』を伴って生臭い匂いに包まれた倉庫を後にした。有能な部下というものはやはり良いものだ。

山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)


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