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第15話 次は配信機材をちょめちょめだー!

「確かに言われたわ。3Dモデルを1日で作るって」



 そう言ってアキコさんは腕を組み、口元をへの字にして「私は今、大事な話をしています」という空気を醸し出している。怒っているわけではない。怒るには、状況が混とんとし過ぎていた。



「うんうん! あれ? でも私は今日作るって言ってたから正確に言うと8時間くらいの計算になるんじゃないかな?」

「正確に言うと6時間と20分だよ、姫君。完成はその半分ほどの時間だったね」

「そうそう。途中で眠っちゃった地雷系お嬢ちゃんの方が時間がかかったよな! 流石に親御さんに連絡入れなきゃ不味いからってお嬢ちゃんを起こして家族に連絡入れて迎えに来てもらって」

「……起きたら自分のベッドだった。その節は、どうもお世話になりました」

「正直会社立ち上げて二番目に焦ったわ。未成年略取はシャレにならない……こほん。ではなくて」



 『私が言葉を口にすると、ホスト系優男とゴリラ系大学生も一緒に楽しそうに話し始める。結局この人たち、一晩中私が機械を弄ってるのをニコニコしながらずっと見てるだけだった! 途中で「楽しい?」って聞いてみたら二人そろって「最高!」って答えてたから、この人たちの中ではこのやり取り自体が面白いものなんだろう。暇を全力で謳歌するのも文明人らしいからまぁ良し!』



「あのね。私が言いたいのはね。この短時間で3Dモデルを作る、というのはまぁ技術的な事は私もよく分かんないから良いとして! なんか数か月かかるとか前に大手Vタレの暴露話で聞いたことがあった気がしたけどそれは置いといて!!」

「じゃあ万事オッケーって事で次に移るね! うっひょー! 次は配信機材をちょめちょめだー!」

「まだよ! まだ私の、この、Vタレ歴4年の私の語りたいリビドーは終わってないわ!」



 アキコさんはそう言ってズビシ、と俺を指差す。語りたいリビドーってなんだろう。オタクが好きな物が話題に上がった時に内心テンション爆上げで早口で語りだすアレの事だろうか。アレなら仕方ないな。大人しく聞いてあげないと気持ちが納まらないだろう。アレを無理やり抑え込もうとするとその後半日くらい「あそこでああ言えばよかった」とか「折角語るチャンスが」とか引きずっちゃうからね。


 そんな俺の内心は兎も角。アキコさんはズビシと指さした後、「あー」だとか「うー」だとかうめき声を上げながら四方に視線を送り、天井を一度仰いで、そして今度は自分を指差した。



「私が知ってる3Dモデルってぇ! 身体にトラッキングだとかなんとか、そういうの色々ついたスーツ着て動きを読み取ってぇ! 3DモデルをあたかもVタレ本人が動いてるみたいに動かすものなんだけどぉ!」

「うんうん! そういうのもあるね!」

「これ! 現実の私が! オーイシアキコになってるの!!?」



 叫ぶようにそう言うアキコさんだが、ちょっとだけ間違っている。オーイシアキコになってるんじゃなくて、オーイシアキコの3Dモデルが現実のアキコさんと重なる様に出ているだけだ。あと若干オーバーリアクションになるように調整されているから、オーイシアキコは完全に顔芸をしているんだが、まぁそこは指摘しない方がみんな幸せになるだろう。



 これに関しては、正直『私にとっても痛恨事だった。本当はどこでもこんな風にアキコさんをオーイシアキコに変えるようにしたかったんだけどね! 今ある機材じゃ頑張ってもこの部屋の中だけしかアキコさんをオーイシアキコに変身! させられないんだ。春葉原で買い集めたパーツじゃちょーっと性能不足だったから、その辺はおいおい自作で補わないと。課題が見つかるのは良いことだね。更に発展する事に繋がるんだから!』



「僕も配信事業は噛んだ事があるが」



 俺とアキコさんのやり取りを見ていたホスト風優男が、アキコさんを眺めながら前置きのようにそう言って。



「現実の背景に3Dモデルを入れ込むという技術自体は、ある。だがあれは無線センサーを装着してそのセンサーの通りにモデルを動かし、画面上で現実の背景にあたかも3Dモデルが登場するようにみせるものだ。少なくともWEBカメラによるモーションキャプチャーでは現状難しいし、そもそもWEBカメラで3Dモデルを動かすにしてもここまでの精度を出す事はできないものなんだ。たとえそれが専用のカメラを使った物であっても。制度で言うなら大手Vタレ事務所が扱うトラッキングスーツでもここまでの精度のものはそう多くないんじゃないかな。そしてセンサーは確かに五体の動きを伝えてくれるが長時間動かせば実体とアバターとのズレがどうしたって出てくるという欠点もある。それらを踏まえて、確かに、画面上では似たような事を出来る技術は存在するといえる。だが、それは、似たような事をするという意味だ! 現実で、空間に3Dモデルを投射する技術は存在しない! 今この瞬間、目にするまでは僕もそう思っていた! そりゃそうだろSFじゃないんだから! しかも数時間が経過しているというのにこのオーイシアキコはどうだ! 立ち位置も動きも開始当初から全く変化がない! 周囲の磁気で精度が落ちる事もない! この部屋の中でしか使えない? そんなの些事だろ! これは、配信業界どころか全世界に衝撃が走る技術革新だよ!」

「お、おう。詳しいんだなお前。ギョーカイジンって奴か」

「詳しい!? 詳しくなんてない! 目の前で起きてる事がなんなのか全く理解できないで一晩ずっとワクワクさせられた僕が業界人を語るなんておこがましいにも程がある! 予感を信じてよかった! 匂いがしたんだよ彼女に声をかけた時! スカウトのつもりで声をかけた瞬間、革新の匂いを彼女から感じたんだ!」

「……すごい、喋るね」



 ほとんど一息で言い切ったホスト風優男に、ゴリラ系大学生が率直な感想を口にする。傍から見てたら「素人意見で恐縮ですが……」に近い空気を感じたんだが、ホスト風優男にとっては認めがたい事であるらしい。いや、十分詳しいと思うぞ。なんなら俺よりもVタレについて詳しそうだ。『私はこーいうのが楽しいかな? って思いながら作ってるだけだもんね!』


 そんなホスト風優男の怒涛の発言を聞いて、アキコさん扮するオーイシアキコはぱくぱくと口を何度か開け閉めした後、腕を組んで近くの椅子に座った。



「……私が言いたい事、全部言われちゃった」

「じゃあ万事オッケー事もなしってことね!」

「ううううう、認める……! 3Dモデル作成中! とか配信で匂わせてネタにしたかったのにぃ!」

「良く分かんねーけど、たった一晩で3Dってのが出来た! ってのの方がすげーんじゃねぇの?」

「……………………確かに!!?」



 ゴリラ系大学生の一言にアキコさんがぽーん、と太鼓を叩くような勢いで膝を叩いた。アキコさんがそれで良いならまぁ、いいか。『じゃ、こーこのうれいも無くなったし文明開化、しちゃおうか!』じゃねーんだよ。ゴリラ系大学生の頭でも叩くのか?


 『あれはざんぎり頭でしょ? OSは私が使ってたのをこのコンピタちゃんに合わせて作り変えるから性能あーっぷ! 十数世代くらい性能違うから色々できるようになるよ? 更に更にそんなの秒で終わっちゃうから残りの時間はコンピタちゃんパワーアップツールの作成にあてられるし! 外でも3Dモデルが使えるように投射機も開発しないとね! 耳につけるタイプの奴かペンダント型か迷うなぁ! ねね、一也はどっちの方がいいと思う!?』って言われてもな。


 アキコさんがつける……耳。いや、胸元。谷間。うん、ペンダント型が良いんじゃないかな。他意はない。


 ところで三人組はいつまでここに居るつもりなんだろ。アキコさんも普通にもう受け入れてるし。名前も知らないんだけどね?

書き溜めはなし。ギリギリの日々。明日以降は不定期です。


山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(料金8999円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』の権利を獲得しました

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル中 1週間)



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