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第14話 よし、ここはプランBで行こう

 自動車の音。お店から流れるBGM。雑踏を歩く人々。色とりどりの照明。それらすべてにテンションが上がりそうになるのを堪えながら、街を歩く。ついきょろきょろと周囲を見渡してしまうのは、まぁ我慢にも限界があるからだ。


 この光景は、『九十九あきら』にとって宝の山に等しいものだ。こうなりたくて、この光景を取り戻したくて駆けずり回った経験が、興奮となって体の奥から湧き上がってくる。


 周りから見たら可愛い女の子がにっこにこしながら町をキョロキョロぶらついているように見えるんだろう。当然、男に声をかけられる事も多くなる。たとえば「ねぇ彼女! 随分とご機嫌だね! 俺も君と出会えて超ごきげんだからお仲間って事でお茶しない?」だとか「君の笑顔に吸い込まれそう。ね、一緒に俺も遊びたいなぁ」だとかそういう感じだ。


 まぁ、それもそうだろうなというべきか。九十九あきらは作中だと(そもそも人が他に居ないため)色恋沙汰が一切ないんだが、かなり整った容姿をしている女の子だ。そのため一応目立たないようにレンタルスペースでシャツとジーンズみたいな目立たない服に着替えておいたんだが、これだったら元のキラッキラ光る白衣を着てた方が男避けになったかもしれない。


 大体の奴は無視して歩いているとそのまま諦めて離れていくんだが、中にはずっと付いてきて話しかけてくる根性入った奴も居るから、少し困った。『別についてくるだけで邪魔しないなら良いじゃん。人類皆友達!』って言われてもだな。変に勘違いさせるのも良くないんだよな。


 ガン無視してるのについてくる奴らは三人。一人は最初に声をかけてきてから無視して歩いていたらなにかが琴線に触れたのか、俺の一歩後ろを訳知り顔で歩いてくるホストみたいな恰好をした兄ちゃんで、二人目は開口一番に「一目ぼれした。付き合ってくれ」と言ってきたちょっと頭が緩そうな体格の良い大学生風の兄ちゃん。そして三人目は、明らかに関わったら地雷じゃね? とか言われそうな顔色が悪く目の下にクマがあって、気温が高いのに何故か両手首が見えない位に長い袖の黒パーカーを着た13~4くらいの女の子だ。


 なんで女の子が声かけてくるんだよと思ったんだが、この子いきなり「お姉さん、楽しそう」とか言ってきていきなり後ろについてきたんだよ。なにか変なもの見えてらっしゃる? 俺の今の姿『坂東メンチ』じゃなくて『九十九あきら』だよな?


 かれこれ30分くらい男二人の会話を聞きながら、後ろをとことことついてくる女の子の歩幅に合わせた速度に切り替えて歩き続けてる。そろそろ目的地に到着するんだが、どうすんだこの状況。


 『ま、ついてきたものはしょうがない。よりよい発展のためにはほどほどの妥協も重要だよね!』と言われてもこの状況で発展って言われてもな。ただ、まぁ、『九十九あきら』は来るものを拒まない。それが分かっていたから無視して歩き続けてたんだが、な。



「これから仕事だから、邪魔しないなら好きにしていーよ」

「! おお、声まで麗しい」

「分かった! 出来る事なら何でもするから、傍に居させてくれ!」

「…………ん」



 三者三様の言葉が返ってくる中、『私はちらっと振り返り、三人に笑いかける。中肉中背の優男にゴリラみたいな体格の学生さん。それにどこか遠くを見ているようで、縋り付いてくるように私を見る女の子。バラバラの三人が一緒に私の背中を追いかけてくるのがとても可笑しい。まるでブレーメンの音楽隊を率いているみたい!』


 『音楽隊なら音楽がなきゃね! レッツミュージック!』じゃないんだよ。路上でちんどんしてたら目立っちゃうから止めなさい。ちょっと気を抜くとすぐに暴走しそうになる体をなんとか制御しながら数分。俺たちは目的地である春葉原の電気街へ到着する。


 そして到着した瞬間、俺の身体は『九十九あきら』の意思に抗いきれず、目についた店に飛び込んだ。



「うっっっひょー! これメモリのばら売り!? 5個に1個くらい動作不良品っぽいけどジャンクパーツって事かな!? お宝さがしみたいで楽しいね!! こっちのは95仕様のPC用カスタムパーツ!? なんでこんなレトロ物が美品でおいてるのすげー! あっちは⑱って暖簾があるけどなにかな! あ、私は入っちゃダメ!? はい!!」



 店内に入ってすぐ目につく品を叫びながら手に取り、叫びながらぐるぐる回って、叫びすぎて店員に怒られて店を追い出される。


 だいたいこの流れを3回ほど繰り返した辺りで、『九十九あきら』はようやく満足したらしい。身体の制御を奪い返して、拳でこんこんと自分の頭を叩くと『あいて』と心の中で声が聞こえてきた。お前、マジでお前な。


 今までに無かったことだったので俺にとっても予想外過ぎる一連の行動だったが、これはどう判断すればいいんだ。これまでレンタルしてきた『赤神さやか』や『坂東メンチ』、それに『鬼畜クマ』の時には、俺の感情と彼らの感情が一体化して彼らの言葉を代弁する事はあったが、ここまではっきりとした行動を取ってきたのは初めてだ。


 『NEET NOW』を多用するのは、やっぱり不味いのでは。そんな気持ちが湧いてくるけれど、もうあのアプリなしの生活なんて考える事も出来ない。『NEET NOW』のお陰で俺はブラック企業から脱出する事が出来たし、DTを失ったのだ。


 それに、なんだかんだで。怖いという感情よりも楽しいという感情の方が、強いんだよな。『メンチ』とはなんか。互いに友達みたいな感じで付き合えてると思うし。『赤神さやか』? なんか小刻みに値段が下がってくんだよな、あいつ。何が言いたいんだろ。


 まぁ……今はそんな事よりも仕事だ。時間は有限だし、『九十九あきら』の暴走で何店舗か出禁になっちゃったからな。これ以上遊んでる余裕はない。


 そういえば付いてきてた三人はどうしたんだろう。いきなりの狂乱に流石に愛想が尽きて消えてくれたのかな? そう思って周囲を見渡すと、三人はバッチリスマホを持って満面の笑顔でこちらにカメラを向けていた。



「……なにしてんの?」

「永久保存を少々」

「あんまりにも可愛かったから! 俺、これずっと待ち受けにするよ!」

「おねーさん、やっぱり楽しそう」



 俺の言葉に帰ってきた言葉は、やっぱり三者三様であった。


 ああ、もう。分かった。分かったから。じゃあお前ら、荷物持ちくらいはしてくれよ? 結構な荷物になる予定だからな!





「というわけでこんちゃー! お仕事に参りましたー!」

「こんちゃー! じゃなくて。あ、あの。え、業者さん? でも貴方未成年よね?」

「お邪魔します」

「荷物ここに置きますね!」

「……疲れた。おねーさん、だっこして」

「本当にどちら様!??」



 昨日ぶりに見るアキコさんは、心底戸惑ったような表情を浮かべている。あれ、電子機器の業者さんが行くからって伝えてた筈なんだけどな。あ、もしかして業者に見えなくて戸惑ってるのか? 確かに俺たちの面々を見ると、業者らしい恰好をした奴が誰も居ないな。明らかに半分は未成年だし!


 これは失態だったな。どういう人物が行くかなんて報告してなかった。流石に今、この場でスマホを出して「これこれこういう可愛い女の子がくるよ! ブレーメンの音楽隊を率いて!」なんて送ったら後でアキコさんになんて言われるか分かったもんじゃないぞ。


 ……よし、ここはプランBで行こう。



「おねーさんがメンチちゃんの彼女さんで一也の上司さん? 私九十九あきら! 一也のぉ、おねーさん的な存在的な?」

「えぇ……一也くん。こんな若い子にお姉さんプレイを……」

「妹かもしれないよ! 嘘嘘。私、電子機器の専門家でとっても詳しいから! 一也に助けてって言われてきたんだけど、連絡きてない?」



 そう言って、『覗き込むように、見上げるようにアキコちゃんの瞳を見る。嘘は言ってないし言う必要もない。だって、私の技術は世界一だから』。その自信を『九十九あきら』の瞳から感じ取ったのか。アキコさんの表情は戸惑うようなものから次第に経営者のものへと変わっていった。



「ま! かるーく実力見せてあげるから乞うご期待!」

「そうね。まぁ、一也くんが頼んでるならそう変な事にもならないでしょ。それで、今日はどういう機器を入れる予定? 配信に関するものとしか聞いていないんだけれど」

「うーん、そだね。一也くんから頼まれてた必要なものは大体用意してあるんだけど、まぁ時間もないし」



 そう口にしながら、買いこんできた荷物をちらっと眺めて、にこっと笑ってアキコさんを見る。



「とりあえず今日のうちにトラッキングなしで自由に動く3Dモデルをつくろっか!」

「そう、トラッキングなしで動く……今日のうち???」




 俺の言葉を聞いて、オウム返しのようにその言葉を口にして、途中で言葉の意味に気付いてアキコさんは呆けたような表情を浮かべる。ああ、しまったなぁ。今の表情こそ配信で出すべきものだったのに。取れ高の無駄打ちをさせてしまうとは、俺もまだまだだな。


今日はたまたま書けました。明日以降は不定期です。


山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(料金8999円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』の権利を獲得しました

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル中 1週間)



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― 新着の感想 ―
もうこの娘をvにした方が色々人気でそう  キャラ設定もこのままで、と思ったが、 作中の版権キャラだから不味いかと思いなおし あれ?でも作中で変身中「原作」に言及した人居たっけ?と気が付く あれ?もし…
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