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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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103/136

第103話 プロレスこそ最強だっ!!!

『なんだ、テメェ』



 チゲェダ・ローハゲの口から、自然とその言葉が漏れだした。


 目の前に立つ男は、見覚えのある人物だった。数日前、記者会見の場にスーツを着てやってきたジャップのサルだ。サルの顔なんてチゲェダには見分けられないから確証はないが、たしかこのくらいの背格好だったのを覚えている。


 それは問題ではない。


 ジャップは濃い茶色のパンタロンに前を開けた革ジャン一枚を羽織った姿で会場に現れた。会場と言っても現在は関係者しかいない。これは彼がVタレという特殊な職業についており、職業柄素顔を晒す事は出来ないと試合前から取り決めていた件にチゲェダが噛みついたためだ。替え玉でも用意されたら堪らないとごねると、じゃあ試合前に素顔で顔を合わせようと約束が交わされた。


 その要求が通った時、チゲェダは内心ほくそ笑んでいた。意外と押しに弱いなと。これならリングでも楽に相手取れそうだとジャップを見下してすらいた。


 だがその余裕もジャップが会場に現れ、その体を目にするまでだった。開いた革ジャンの間から見える体付きを見ただけでチゲェダは背筋に電流が走るのを感じた。


 決して分厚いわけではない。だが、機能美に溢れた美しい肉体だった。スーツの上からでは全く想像できなかったジャップの身体に、チゲェダの頭が瞬時に戦闘モードへと切り替わる。



「チゲェダさん、これで約束は果たされましたね?」


『あ……ああ』


「ああ、本番はマスクを着けて試合をしますんで。Vタレは観客に顔を見せるわけにはいかないんでね」



 顔を合わせたら難癖をつけてやろう。それとも軽く脅かしてやろうか。事前に考えていた事が全て頭から零れ落ち、言われた言葉に頷きを返す事しか出来なかった。チゲェダが納得した事を確認したジャップはそう口にして、革ジャンのポケットに入れていたのだろうマスクを取り出して被る。


 下手糞なクマの顔が書かれたマスクは控えめに言っても滑稽だった。だが、それを被った男の雰囲気が嗤う気分にさせてくれない。あと数十分後に殴り合う相手に自分が委縮している事を、チゲェダは自覚する。



『……チッ。おい、薬を寄越せ! 強烈にキマる奴だ!』


『は、はい!』



 チゲェダに背を向けて遠ざかるジャップを見ながら、チゲェダはサルに気後れした自分に腹を立てた。付き人に指示をして頑丈なトランクケースを持ってこさせる。中身は注射器とステロイドと興奮剤を絶妙にミックスしたオリジナルブレンドのドーピング剤だ。こいつの力でチゲェダは過去にオーストリアの王者の鼻骨を粉砕し大きな大会で優勝する事ができたのだ。ドーピングチェックは係員を買収すれば簡単にすり抜けられるし、それで優勝賞金を手に出来るならやらない手はない。コスパとタイパに優れた頭のいいやり方って奴だ。


 そして今回の試合はエキシビジョンマッチであり、賞金はあるが大会規定なんてものはない。ドーピングチェックすらないのだ!


 これで薬を使わないバカは居ないだろう。どうせあのジャップもステロイドやらをフルに決めてあの体を作っているに違いない。薬の力で強くなったと思いあがった素人にプロとして世間の厳しさを教えてやらないといけないだろう。


 気落ちしていた気分が一気に高揚してきたのを感じながらチゲェダはトランクを付き人に渡し、ちょうど目の前に殴りやすい顔があったから付き人をぶん殴る。べきりと頬骨を砕く音が響き、グルンと勢いのまま一回転して付き人は倒れた。ビクビクと震える付き人の様子をゲラゲラ笑った後、チゲェダはパンっと掌に拳をぶつけて戦意を高める。この様が20分後のあのジャップの姿だとほくそ笑んで。









『ラウンドガールは君ん所の社長? え、本気?』


「んだよアキコさん可愛いだろうが!」



 なんて不毛すぎるカイザーとのやり取りの末、試合の合間の清涼剤としてラウンドガールをアキコさんにすることが決まった。もちろん本人に許可をもらってないのでその後に土下座した。



「えっと、別にやるのは良いんだけど。私、一也くんが酷い目に遭う所は見たくないよ……?」


「あ、大丈夫です。“俺は”ノーダメで終わらせる予定なんで」



 と三顧の礼もかくやとばかりに拝み倒し、じゃあそれならという訳で一応3ラウンド分のラウンドガールをVVVのVタレにしようという事が決定。2ラウンド目はアキコさんがやるとして、3ラウンド目は『さやか』が担当する事になる。気が荒い連中が多い場所だからアキコさんの護衛を兼ねて『さやか』に頼んだのだ。こいつなら大抵の人間を叩きのめせるからな。


 まぁあくまでも『さやか』は念のためって所だ。会場内はちゃんと雨宮セキュリティーの人員で警備してるし念のためにアキコさんと『さやか』の周りには腕っこきのガードマンを複数名つけてもらう予定だから心配はいらないだろう。それに『かすが』もこの会場に来るみたいだからな。雨宮セキュリティーの人たちも本気で臨んでくれるだろう。


 あいつに3ラウンド目のラウンドガールを頼もうと思ったんだけどなぁ。やる事があるからって断られたんだ。あいつはあいつで米国内に足がかりを作ろうとしてるらしく、今回の試合は渡りに船だったとか。後で聞く話が増えたな?


 さて試合前の準備はこれで万端整った。前売りチケットの売れ行きも好調でカイザーからは「ファイトマネーは期待してくれ!」と言われてるくらいだし、ネット配信の方も新しい試みって事で結構問い合わせが多いらしい。このネット配信が豪華で、なんとリングを8つのカメラで映し出し、好みの角度から試合を見る事が出来るって優れものだ。テレビとかだと定点の画面が多いから、細かく見たいって人は嬉しいだろう。


 俺にとっても嬉しい。言い逃れできないほどにカメラを入れたのは、細かい動きを全て届けるためでもあったからだ。



『譲るんだからとことんぶちのめせよ?』


「分かってる」



 メンチから静かな激励を受け、待合室を出る。リングに繋がる廊下には警備員と応援に来れたVVVのタレントたちの姿がある。彼らとハイタッチを交わしながら、熱気渦巻く白いマットへ続く道を歩く。


 煌めくようなライト。熱さすら感じる光の渦を浴びて、心臓がエンジンのように唸りを上げて血液を全身に送り始める。



『来たぞ。来たぞ一也! 全世界の注目を浴びて! リングの上で雌雄を決するっっ! これぞ漢の本懐! 闘人の本質! スポットライトを浴びて俺たちの魂は炎になるんだっっっ!!!』



 プ ロ レ ス こ そ 最 強 だ っ ! ! !



 そう心の中で叫び猛る相棒に胸を叩くことで合図を送り、リングまでの道を駆けだしていく。


 ワッと膨れ上がる観客の熱。声援とも罵声とも取れない声の嵐を潜り抜け、リングローブに手をかけ一気に飛び上がる。


 着地した瞬間、全方位から浴びせられる視線と声援。対面には顔を赤黒く変色させ、こちらを殺そうとばかりににらみつける敵。最高だ。


 最高の舞台が、これから幕を開ける。力と力のぶつかり合い。どっちが強いかだけの真剣勝負。


 闘いが始まるのだ。

山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)

『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』



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