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2話 開幕

 夜宮よみや 大河たいが 19歳 無一文


 プロフィールが更新されました。悲しい。


 いや冗談ではなく、非常にマズい。もしこの異世界転移が長時間続くならば、寝食が必要となる。そうなると当然金銭も必要となるわけで……。なんだか早速詰んでしまった感がある。とにかくすぐにでも始められる仕事を探さねばならない。


 俺は、日雇いで即日給与が出る仕事を探すことにした。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 結論から言おう。ダメでした。


 露店や建物内の店を10件くらい巡ってみたが、見事なまでに撃沈した。当然と言えば当然である。というか「この世界の文字が読めない」という新たな問題が発覚した。そのため求人が出てるかどうか不明なので、手当たり次第に各店を突撃する羽目になったのだった。何故言葉は分かるのに文字は読めないのか…。謎である。


 ここまで結構時間をかけてしまい、だんだん空腹が限界に近付いてきた…。


 トボトボと途方に暮れつつ歩いていたら、気づけば門が見えてきた。見上げるような大きな門だ。一見したところ、この街の出入り口のようである。チラリと門から外を見てみると、すぐ右手奥には森が広がっており、目の前には整備された道が真っ直ぐ続いている。


「森か…」


 もしかすると、食べられる植物や木の実もあるかもしれない。そんな期待を抱き、門の外へ出て森へ向かおうとした。その時だった。


「そこの君。止まりなさい」


 突然声を掛けられた。

 声の方を振り返ると、門の方から二人の兵士のような人たちが近づいてきていた。腰に帯剣しているところを見るに、門番だろうか。剣を販売している露店もあったので、やはりこの世界では帯剣は一般的なのだろうか…。


「君。冒険者かい?見たところ、武器も無いようだけど…」


 自分の世界との違いを改めて噛みしめていたところ、門番から質問された。「冒険者」。やはりこういう世界ならばいるだろうとは思っていた。


「いえ、俺は大学せ…じゃなくて、旅人です」


 大学生という単語が通じないのは、先ほどの職探しで把握済みだ。なので、便宜上「旅人」と答えることにした。「異世界の」という壮大な旅人だがな。


「武器もないなら、その森への立ち入りはやめておきなさい」


「え…?」


 マジで?武器携帯必須?


「この森、結構危険な魔獣が出るんですよ」


 少々困惑していたところ、もう一人の門番が補足してくれた。先ほどの門番よりも若い。


「丸腰で入ったら、間違いなく魔獣に食い殺されますよ」


 そんな恐ろしいことを笑いながら教えてくれた。だとしたら、ここの門番というのは結構命懸けの仕事なのでは? というかそんな危険な森が街のすぐ外にあるのかよ。


「森には結界がある。高ランクの魔獣に襲われる心配は無いが、それでも丸腰で入るのは危険だ」


 今度は先ほどの門番の人から補足が入った。聞けば、森の奥には結界が張られており、危険な魔獣がその結界外に出てくることは無いとのこと。なるほど、それであれば安心だ。しかし、そうなると…この空腹をどうしたものか…。


 そう考えたのがいけなかったのかもしれない。空腹を再認識した瞬間、割と大きめの音で腹が鳴ってしまった…。


「………」「………」


 門番二人の無言の視線。


「いや…あの実はですね…」


 俺は耐え切れず、森に入ろうとした理由を話した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「僕が持っているパンで良ければ食べますか?」


「良いんですか…!」


 異世界から来たことを除き、事情を全て説明した後に若い方の門番がそう言って、自身のパンをくれた。


「僕は小食で、今日はあまりお腹空いていないので」


 爽やかに笑いながら、そう言ってくれた。こんな訳の分からない謎の旅人に、何の躊躇いもなく食料を分けてくれるとは…ちょっと泣きそう。ちなみもう一人の門番は「やれやれ」といった感じだったので、こちらの若い門番は常日頃からこんな感じなのかもしれない。


「さぁ持ち場に戻るぞ。君も武器が無い内は、森に近づくのはやめておきなさい」


 そう言って、もう一人の門番は門の方に戻り始めた。


「了解でーす」


「あ、すいません…失礼でなければ、お名前を伺っても良いですか?」


「僕ですか?僕はカイルと言います」


「カイルさん…本当にありがとうございました。このお礼は必ずします」


「大袈裟ですよ。気にしないでください。」


 カイルさんはそう言ってくれるが、こちらとしては非常に助かった。この恩は必ず返したい。そこまで考えて、俺はもう一人の門番の人にもお礼を言うのを忘れていたことを思い出す。あの人の静止がなければ、俺は森に入り命を落としていたかもしれない。


 俺は先ほどの門番の人を追いかけようと、門の方を見て ――――― 固まった。





 巨大なイノシシような獣が、門番を食い千切っていた。


 


 


 




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