指輪の謎
俺は言われるがままに彼についていくことにした。現状を全く把握できていない俺にとって、ここの住人と出会えたことは幸運と言える。彼の言う安全な場所に辿り着いたらいくつか質問しよう。移動し始めてかれこれ30分が経過したところで小さな洞窟が見えた。
「着いたぜ。今日はここで野宿だな。」
彼は洞窟の中に入っていき荷物を降ろし、膝くらいの高さがある岩に腰かけた。
「心配しないでもここに危険な生き物は入ってこないぜ。ここらのやつは暗い所に入ってこないんだ。」
顔に心配とでも書いてあったのだろうか。彼は俺の顔を見るなり洞窟内が安全なことを説明してくれた。
「俺は飯の支度してくるからお前はここで休んでな。戦闘での疲れがまだ残ってんだろ?」
「もしかして見てたのか?」
俺がそう聞くと荷物の中から鍋やら包丁を取り出しながら答えた。
「ああ、見てたぜ。すっげーぎこちない動きだったが狙いはよかったぜ。ちょっと危なっかしくて心臓にいいもんじゃねーけどな。」
恐らく彼は俺が槍で防戦している辺りから見ていたのだろう。そこで俺は気になっていたことを一つ訊ねた。
「もしかして俺の背後で起きた爆発音、君がやったの?」
すると彼はいたずらを楽しむような笑みで
「まぁな、おせっかいとは思ったんだが相手の動きが止まれば反撃しやすいと思ってさ。」
確かにあの爆発音がなければどうなっていたか分からなかった。
「そっか、助けてくれてありがとね。」
俺は素直に感謝の言葉を述べた。
「いいって別に、俺は好きにやったわけだし。それに___」
彼は先ほどの子どもっぽい表情から一瞬で真剣な目つきに変わり
「お前には訊きたいことがあるしな」
そう言い残すと彼は化け物と調理器具を持って洞窟から出て行った。
俺が洞窟に辿り着いたときは外は明るかったのに、気が付けばもう真っ暗である。今は何時くらいなのだろうか、時計がないと不便だな。
「よしそろそろいい感じだ。食おうぜ」
目の前には肉や野菜の入ったスープに、こんがり焼けた骨付き肉が並べられている。ここにきて初めての食事だ。
「いただきます」
俺は恐る恐るスープを口にした。あっこれ美味しい。これがさっき倒した化け物とは思えない。
「どうだ、美味いか?」
彼は目をキラキラと輝かせながら何かを期待しているような目で俺を見ていた。
「うん、すごく美味しい。」
「そっか!それはよかった!」
俺が感想を言うと彼は嬉しそうに尻尾をブンブン振りながら答えた。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名はジクシスだ。ジクシス=カニル・レイジリア。呼びづらいだろうからジークでいいぜ。お前の名前は何っていうんだ?」
ジークは俺にも自己紹介を求めるが俺は__
「ごめんジーク、俺自分の名前を憶えていないんだ。」
ジークは目を丸くしている。
「そっそんなわけないだろ?自分の名前だぜ?そんな記憶喪失みたいな________いや、そうなのか?」
俺は首を縦に振る。俺はジークに自分の名前を思い出せないこと、別の世界から来てここがどこだか分からないことを説明した。初めは半信半疑な様子のジークだったが、俺が話しているときの表情から何かを感じ取ったのか今は静かに俺の話を聞いてくれている。
「まぁ冗談でここまで語れないわな。」
「信じてくれるのか?」
「俺を騙したところでメリットもないしな。それに俺が気になっていることと関係しているかもしれないしな。」
ジークはばつの悪そうな笑みを浮かべそう答えた。
気になっていること、そういえば先も俺に訊きたいことがあることがあると言っていた。一体何だろうか。ジークは犬獣人だしもしかしたら人間はこの世界に存在しないのだろうか。だとしたら気になることがあっても不思議ではない。しかし彼からされた質問は唐突なものだった。
「お前、その指にはめた2つのリングをどこで手に入れた?」
リング?この指輪のことだろうか。どこで手に入れたと言われても近くに落ちていただけで俺は拾っただけだ。けど訊き方からして彼の物なのだろうか。
「もしかしてこれジークの?勝手にはめててごめんね。」
彼に返そう、そう思い指輪を外そうとするとジークに止められた。
「いや、俺のではない。俺が質問したのはそういうことではなくて、えっとな、ちょっとタイム。」
ジークは何て説明しようか・・・と言わんばかりに唸りだし、しばらくして再び口を開く。
「そのリングはコンストリングと呼ばれていて、世界に88個しか存在しないものなんだ。」
「コンストリング?」
「ああ、リングの力は多種多様で俺が知る限り、槍や弓を具現化させるもの、生物を召喚するもの、肉体強化や回復など能力付加するものが確認されている。どのリングの力も強大で一般的な武器や魔術でやり合うのは厳しいとされているほどだ。」
この世界には魔術も存在するのか。話を聞けば聞くほど知らないことが増えていく。ジークの話を聞く限り俺のリングは槍の具現化と回復付与をするものらしい。しかし分からない。どうしてジークは俺がリングを持っていることに食いつくのか。希少価値が高いことは分かったが、俺以外にも計86個のリングの所有者がいるはずだ。別に珍しくもないだろう。
「お前ってわかりやすいのな。顔に出てるぜ。」
ジークは呆れ笑いをする。俺ってそんなに表情に出るタイプだったっけ?
「そのリングは使用するのに適性が必要なんだ。しかも誰もが備わっているわけではない。ごく稀に適正者が誕生しその人にしか扱えない。当然適性は最大1つだけだ。2つも扱えるなんて聞いたことがない。それともう一つ俺が不可解である理由がある。」
ジークは大きく深呼吸をして一言。
「コンストリングは全88種の内、78種は20年前に消滅したはずなんだ。」
続く




