近づく死の気配
青く茂る野原にところどころに生えている木々、全体を見渡してもどこまでも続く広い草原・・・に俺は倒れていた。何が起きているのか理解できない。ここは日本なのか?それにしては空気が違うっていうか雰囲気が違うっていうか・・・だめだ、全く頭が回らない。とりあえず移動してみよう、そう思い倒れた体を起こすとゴトッと何やら重いものが落ちたような音がした。物音がした方向を見ると俺が倒れていたすぐ真横で藍色の布袋が落ちていた。周りを見渡しても持ち主らしき人影もないので布袋を手に取り中身を確認してみる。中に入っていたのは金色のコインが10枚、見たこともないデザインだ。金色のコインは500円玉くらいの大きさで中央にエンブレムらしき紋章が入っているがこれが何を意味するのかまったく分からない。
「俺こんなコイン持ってたっけ?コインのほかに何か・・・これは指輪?」
他に何か入っていないか中を漁ってみると指輪らしきものが2つ入っていた。2つとも腕はシルバーでセンターには丸みを帯びた石のようなものがはめ込んである。形状は共通しているがその石が2つとも異なっている。一方は紫色の石で中になにやら文字のようなものが。
「どーせ読めないんだろ・・・いや読めるぞ」
初めて見る言語の文字なのに不思議と頭の中で何を意味するのか入り込んできた。
「も・・・の・・・け・・・ろ・・・す。モノケロス?」
モノケロス?どこかで聞いたことあるような気がするが思い出せそうにない。一方が読めるということはもう1つも分かるのか?そう感じた俺は、もう一方の白い石がはめ込まれた指輪も確認することに。
「やっぱり読めるぞ。これはキグナス?」
やはりこちらも聞いた事がない。とりあえず2つの指輪に刻まれた言葉の解読はできた。何故コインと一緒に入っているのかは不明だがきっと価値のあるものに違いない。俺は何となくこの指輪を右の人差し指と中指にはめてみた。
「こんな感じか?きっと高く売れるとかそんな感じだろう。サイズがぴったりで驚いたけど。」
まるで俺専用に作られたような2つの指輪をしばらく眺め、俺は近くに人がいないか探すことにした。
「いないなー・・・」
俺が行動しはじめ20分ぐらいが経過したが、人どころか動物一匹見当たらない。もしかしてここは無人島なのか?ならば食料どうしよう・・・。海とか見つけて魚でも捕まえないとなのかな。
「まぁ俺魚アレルギーだけどな」
困ったな。魚が食えないのなら木の実しかないのか?正直空腹でも虫だけは食べたくない。今のところ空腹ではないが今後のことも考えなければ。それに今起きている不思議なことも。ここはどこで、何故ここにいるのか、俺の手にあるコインや指輪はなんなのか、俺は・・・俺は・・・。
今俺は重大な事に気が付いた。
「俺、名前なんだっけ?」
家族のことや学校のこと、過去に会った人のことは覚えているのだが、どうにも俺自身の名前だけが見事に抜け落ちている。こんなピンポイントな記憶喪失ってあるものなのか?確かこん・・・だめだ、これ以上思い出せない。まぁ人がいないなら自己紹介することもないしいいか。いずれ思い出すだろう。そんなことを考えている内に草原を越えて森林へと入っていた。森林と言っても一本道なので遭難することもなさそうだ。
「それにしても静かだな。人や動物がいないのはさっきからだが、鳥の鳴き声も聞こえない。一体どんな生態なんだろう」
最悪鳥でも捕まえて食べようかと思ったけどそれも無理そうだ。段々と木の実や虫を食べるビジョンが観えてきて憂鬱になる。どうにかならないものか________ん?今何か気配らしきものが感じた気がする。もしかして近くに何かいる?
ふと後ろを振り向くと見たことのない化け物が、まるで獲物を見るような鋭い目で俺の方へ近づいてきていた。
続く




