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剣鬼の桜  作者: 彼方 雄
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世界に魔法文明が栄えて幾百年。人々の寿命は格段に延び、生活も豊かになった。

その一方で各地で紛争が起き、一騎当千の魔導士の魔法による被害者の数も激増していた。


〜某日、某戦場〜


一人の男がたたずんでいた。

その男の周りには数多の戦闘機や戦車の残骸とともに幾千、幾万の死体の山が積みあがっている。

男の年齢はは六十代ほどだろうか。黒地の軍服に何故か桜吹雪の羽織を肩から掛けている。

その右手には一振りの日本刀。さらに周囲の地面にも四本の刀を突きさ刺している。

この余りにも場違いな格好の男の名は天道桜花。

世界中の軍人に〝剣鬼”と恐れられた大日本皇国の最後の切り札だった。




桜花はぼんやりと周りを眺め、呟いた。

「そろそろ他の奴らの撤退は完了した頃かねぇ。」

皇国はこの第四次大陸大戦において敵対する連合軍相手に敗北を重ね、ついに国土に侵攻を許していた。

一部の戦闘では勝利するものの、連合軍の圧倒的な物量には抗えなかった。

さらに今から五百年ほど前に発見された魔法という存在によって兵器のレベルも格段に跳ね上がった。

そうしてじりじり追い詰められて今が最終戦といった所か。これが終われば皇国は降伏するだろう。

桜花達は水面下で行われている降伏条件交渉の時間稼ぎという訳だ。


そもそもこの大戦のきっかけはご近である中鮮新国が調子に乗って世界に宣戦布告をしたことが

発端だった。それに対し世界各国が激怒し世界連合が発足し、中鮮新国との戦争が始まった。

そのなかで皇国は連合に参加せず、静観することになった。

そして、これがいけなかった。連合の次の矛先が静観していた皇国に向いた訳だ。

資金援助でもすればよかったのだろうが、我関せずを押し通してしまった。

そうして今に至る訳だ。



「ザーーー、隊長!地域住民の避難完了いたしました。隊長も早く撤退してください!」

桜花の持っていた通信機から部下の声が届いた。

「おう。了解した」

桜花は言って撤退しようと動き始めた。

その時、あたりに異常な魔力とプレッシャーが満ち溢れた。


「チィッ、これはまずいかもしれんな。・・・ザザー、こちら天道だ。少し用事ができた。

お前らは住民連れて先に首都に転移しろ。俺は後で戻る。」

「・・・ザザザー、待ってください隊長!これは明らかにまずいです、いくら隊長でもっ...」

「馬鹿野郎、俺たちの仕事は住民を避難させることだ。それに心配するな、俺も時間稼いだらすぐに退く。

それじゃあな」

桜花は部下の返事を聞くことなく通信機を切る。さらに避難場所に設置していた転移陣を遠隔起動させ、

住民と部下たちを首都へと送った。

正直なところ、桜花には部下の相手をしている余裕は無い。

なぜならこの異常な魔力の元凶が姿を見せたからだ。

「空間破壊兵器ラグナロク」

それがこの元凶の名前であった。とある軍事国家が研究しているとの噂はあったが実在しているとは

考えられていなかった超兵器、それがこれだ。


「いつの間に完成させてやがった…。流石にこれは無理だな。」

いかに桜花といえども、この兵器相手に生き残る自信は無かった。

となればやることは一つ。どの程度威力を減衰させられるかだ。

桜花は切り札をきることを決断する。

「天道桜花最期の大舞台だ。括目しやがれ」

周りにあった四本の刀が宙に浮かぶ。さらに手に持つ刀を手放すと五本の刀が光のラインで結ばれ、

五芒星を形作った。

「天道流奥義、破天(はてん)」


桜花がそう呟くと五芒星から極光が迸りラグナロクへと向かっていく。

お互いに高速で近づく破天とラグナロク。その二つがぶつかった瞬間…。

世界は白に染まった。




この日皇国は全面降伏し、連合の指揮下に入ることとなる。

しかしながら必死の捜索の甲斐なく、天道桜花の姿は見つからず戦死扱いとなった。

部下達や救われた住人は大いに嘆き、この都市の守護神として祀り、崇めた。



実は桜花が異世界で新たな生活を満喫していることを彼らは知る由もなかった。



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