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第二十五話 寮母

ゲームの力は偉大なり。

元気は出ましたが、見ての通り更新頻度がガタッと落ちてしまいました……

でも、このくらいの方がストレスフリーで書ける気がするので、これからこの調子でゆったり続けてこうと思います!

 夕食の後、母親は突然思いついたようにルークにこう投げかけた。


「そうだ! ルーク君、今日泊まっていけば?」


 ルークは了承しようとしたが、寮母に外出届はおろか、言伝さえしていない事を思い出した。

 ルークの理性と感情が、グチャグチャとマーブル模様を作っていた。


(…………一日、くらいなら……)


 考えた末、ルークが出した結論は……理性に沿ったものだった。


「……ありがとうございます、でも寮ぐらしなので……帰らないと」


 ルークは苦虫を無理やり飲み込み、困り笑いでありがたい申し出を断った。

 母親は「ああ! そうよね」と手を叩き微笑むと浮かない顔をしてしばらく考え込んでしまった。

 数分経っただろうか。母親は「ノアも防衛隊員だから寮に入らなきゃなのよね……」と寂しさを滲ませて言った。


「母さん、僕はしばらく家から通うよ。……ほら、僕も新しい生活にすぐには慣れないだろうし」


 ノアは母親が心配だった。いや、心配もある、だがそれ以上に。ノア自身が、唯一会話のできる家族である母親に、依存しているのだ。

 父親は行方不明になり、妹は目を覚まさない。そんな中、残った母親から身を離してしまうのが怖かった。


「……心配してくれてありがとう、でも相変わらずノアは嘘が下手ね。きっと、もう友達も出来たんでしょ?」


 母は強しという言葉がある。例に漏れずノアの母親にも芯があった。


「……母さんなら大丈夫よ、貴方は貴方の選んだ道をしっかり進みなさい。過去に縛られちゃ駄目よ?過去を救えるのは、未来だけなんだから、ね?」


 ノアは、その言葉に胸の奥が少しだけギュッと押し潰されるような感覚になった。

 『母さんは、応援してくれている』それを言ったのはノアだ。それに実際、母親はノアの選んだ道を心から応援している。

 むしろ進むのを嫌がっているのはノアの方だった。お金のために防衛隊に入ったものの『大切なものを失いたくない』『自分のせいでまた周りの人が嫌な目に遭うかも』そんな思いが、ノアの中にずっと渦巻いていた。


 母親は、きっとノアは、このままこの家に居たら前に進めないだろうと思っていた。

 進めたとしても、この家には思い出が多すぎる。きっと何度も過去を振り返ってしまうだろう。

 母親は、ノアには未来に進んでほしかった。


「ノア、明日から寮に入りなさい。防衛隊員として、しっかりしなきゃ駄目よ」


 母親は、厳しくも優しい笑顔でノアにそう告げた。


「…………うん。分かった!」


 ノアは母親の言葉にそう答えた。不安が消えたわけでも、依存が無くなったわけでもない。ただ、母親の想いに応えたかったのだ。


 そんなノアの肩にルークは手を添えてくれた。きっと、この場にルークが居なかったら、ノアは不安で押し潰されそうになっていただろう。

 掌から伝わる体温が不安を少しだけ和らげてくれた。


「……ルーク……ありがとう」

 

 ルークはノアの口元が少し緩んだのを見るとそっと肩から手を離した。

 ルークは一呼吸置くと「じゃあ、そろそろ帰るよ」とノアに告げた。









「お邪魔しました! ご飯美味しかったです」


 ルークはノアの母親に礼を言い、ノアに手を振って家を後にした。


 帰り道、抑えていた感情が溢れ出し、胸が張り裂けそうになったのは言うまでもない。

 だが、流石といったところか、ルークはその感情を完璧に隠してみせた……

 いや、よく見れば、顔は綻び、足取りは軽やかだ。だが、少なくとも本人は、隠せてると思ってるだろう。

 ルークとしては、いつも通りの無表情で歩いているつもりなのだ。だが、その所作の端々から浮かれていることがなんとなく分かる。


 ルークは、寮母に「今日は、機嫌が良いね」と言われ、初めて隠せていないことに気づいた。


「あれ? ルーク君今日は、随分と機嫌が良いね。何か良いことでもあったのかな?」


 丸メガネを掛けた、年齢不詳の女性。彼女がここアスケラ寮の寮母、ルミ・ベリルである。

 彼女は、ニヤニヤしながらルークを指差し、こう言ってきた。


「当ててあげようか? 彼女でも出来たんだろ! いやぁ~青春だねぇ。ついに君にも恋人が」


「いえ、違います」


 ルークは、すぐ否定した。が、食い気味に否定したため、ルミには恥ずかしがって居るのだと分かってしまったのだ。


「ええ〜? 隠しても無駄だよ? ボクには分かってしまうからね」


 寮母の顔から、食い物にしてやろうという気持ちが滲み出ている。ルークは、そんなチシャ猫のような寮母に、変な噂を立てられるくらいなら掻い摘んで教えてやろうと、先程の事を話した。


「ただ、昔の友人に会っただけですよ。彼の家で夕飯をごちそうになったんです」


「……な〜んだ、友達の家か…………ご飯、美味しかった? ボクは今日、海老フライ食べたんだ。なかなかに美味かったよ」


 無事、話を逸らすことができ、ルークは胸を撫で下ろした。

 その後、ルークは「疲れたので、部屋に戻ります。いつもお疲れさまです」と言い、ご飯の話もせずさっさと自身の部屋へ向かってしまった。


 後ろから「ええ!? 何食べたか教えてくれないの!?」とびっくりした声が聞こえてきた。

 ルークは「焼き魚でした! 凄く美味しかったです!」と声を張り上げて返した。


(……声デカ)


 ルミは「そんなに魚好きなんだ……」と、生徒の新たな一面を知れた気がして嬉しくなった。

寮は、アスケラ寮、ハウト寮、カリナェ寮、キュグニ寮の四棟です。

それぞれの寮に寮母が一人ずつ、そっくりな四人姉妹です。

そっくり過ぎるのと、結構な人数が寮で生活してるのに、顔に疲れの色も見せず仕事を捌き切っているので「もしかして人じゃないのでは?」という学園七不思議の一つにされています。

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