びのと覧、支度金を要求する
「びの君、びの君」
覧に起こされ、目を開ける。
「おはよう、覧。もう、朝?」
「もう、寝ぼけてないでよ」
「そうだ、僕は異世界に来て、王子様に……」
殴られたんだった。
「もう、びの君、今日一日で何回、ボクを心配させるの?」
「ごめんよ」
ふがいない。
「おう、やっと起きたか。起きなかったら、殴ってでも起こすところだった」
危ない、危ない。また、殴られるところだったー。
起きれて良かったー。頑張った自分。
「びの君は、そこで横になってて。次期王様と話をつけてくるから」
それだけ言うと、覧は、王様の方へ向き直る。
「びの君も起きましたし、話の続きをお願いいたします、次期王様」
「えっと、どこまで、話したっけか?」
「このジオフの世界は平和だったが、ある日、4体の魔王がどこかから現れ、世界中が魔物だらけになってしまった。魔王の中の1体を倒すため、国が総力をあげて挙兵したが全滅してしまい、人々が貧窮したところまでです」
「そう、そして、今なんだよ!! お前らが、勇者としてここに来た。まあ、ステータスをみると本当に勇者かどうかは疑わしいがな」
ふんと鼻を鳴らす王子様。
「びの君とボクは勇者です。びの君の写真とボクの激レアなステータスを次期王様もご覧になりましたよね?」
「ま、まあな」
「王様は、伝説をお疑いになるんですか? ボク達の力は必要ない。自分たちの力だけで頑張りますということですか? それなら、もう、島国の片田舎に帰りますが」
ここぞとばかりに畳みかける覧。
あ、おそらく覧は、今、悪い顔してるな。
「あ、いやいや、疑ってない。勇者たちを追い返したことが世間に知れ渡ったら、母に……いや、民に怒られてしまう」
うわっ、この王子様、母って言いかけた。
「信じてくれるんですね?」
「ああ、もちろん」
「びの君もボクも、四強を倒すために頑張りたいんですけど、島国の片田舎から、この都会の王都に来るまでに、お金を使い切ってしまって……」
「俺も男だ。金貨300枚用意した」
「王子様がお前たちのために用意してくださった300ゴールドだ」
大臣が袋を片手に、ふんと鼻を鳴らす。
「え? ボク達のために用意したお金が、たったの300ゴールド?」
「300ゴールドでは不満なのか?」
訊き返したのは大臣だった。
「いや、いいんですよ、300ゴールドで。王様は人々を救う勇者を2回も殴った上に、支度金に300ゴールドしか与えなかったという噂が流れても良いなら、それでいいですよ」
うん、絶対今、覧は悪い顔してる。
「ここは、口止め料を含めて500ゴールドで手をうちませんか? 覧様」
下手に出てくる大臣。
「500ゴールドでいいなら、いいですよ。王様は、人々を救う伝説の勇者の資質を疑い、勇者を不快にさせた上、支度金に500ゴールドしか与えなかったという噂が流れていいなら、それで」
「口止め料含め1000ゴールドで、なんとか手をうっていただけないでしょうか?」
大臣はいつの間にか敬語になっていた。
「しかたありません、交渉成立です」
大臣と握手をがっしりと交わす覧。
いや、覧、本来、支度金て交渉するものじゃないからね。




