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八百屋な少年は冒険者見習いになった6

「最後だけあのクズナンパ野郎の所為で腹が立ったけどよぉ!」


「俺たちジークちゃんのお蔭でBランクに昇格したぜ!」


「わー おめでとうございます! 実は俺も見習いじゃなくなってFランク冒険者になりました!」


「「なんだってぇええええええええええええ!? それじゃぁもう付き添いは?」」


「今までありがとうございました! これからは師匠とパーティーを組むことになったんです!」


「こ これはおめでとうと言わざる負えないぜぇ」


「礼はいらねぇよぉジークちゃん・・・それよりこれから一杯」


「ダメだよアンタ等。まだジーク未成年よ」


「はぁー 最強のお守がついちまったなぁ まさかアリアナが復帰してまでなぁ」


「兄弟。今日は家族水入らず二人で飲み明かそうぜぇ。ジークちゃん見習い終了祝いとアリアナ復帰祝いはまた今度だ」


「本当にお世話になりました! 成人したらまたお酒の席に誘って下さい!」


「「あぁ! やっぱりジークちゃんは最高だぜ」」



ソドメとゴモレはキングアナコンダを売って手に入れた報酬をその日のうちに飲み明かすぞ!と仲のいい冒険者たちを引き連れてギルドを出ていった。


静かになったギルドに残ってジークはノルマを追えていないこと思い出した。


「げっ」


「どうかしたのかい?」


「ノルマこなしてなかった! ガルムとキングアナコンダで2つになったけど、まだ三つのこってるんです」


「三つ? もしかして依頼のことなの?」


「はい。じーちゃんが一日5つがノルマだって・・・」


「どんな爺さんよ、それ」


可愛いものに目が無いアリアナからすると信じられなかったのだ。

もしもアリアナに子がいたらバカ親になるタイプだ。


「兎に角あと三つ終わらせてきちゃいます! 草むしりとか荷物の移動とかだったら早いので! 師匠は先にえーっとマズール鍛冶屋で待っててください!」


「あ? ちょっと待ちな―—


アリアナが止めようとした時には、既にジークは依頼用紙をコルクボードから引きちぎってギルドを飛び出した後だった。


ってもういないのかい。どれだけ脚早いのよ。・・・しかもマズールってクソ爺のところじゃないの。どういう関係なのかしら」


アリアナはマズールと知人である。アリアナの解体道具のうちの数点はマズール鍛冶屋のモノなのだ。

マズールの頑固なところも知っているし、弟子となったジークとの関係が気になった。


「全く。まずはあのセッカチなところ直さないとダメね。師匠を待たせるなんてのもダメだって教えないと。・・・でもなんだかやる気が出てきたわ」




ジークは速攻で草むしりの依頼を2つ終わらせて、残り一つの荷運びの依頼を残していた。

その時には既に夕日が空を橙色に染めていた。


「やっぱり討伐よりも草むしりは楽だな。次からは自由に選べるしこういうのを選ぼう」


見習い冒険者を卒業すれば、依頼は自由に選べるようになる。

今までは職員が全て選んでいたのでジークはあまり雑用系の依頼をしていなかったのだ。


これも全て女の子に見えるその容姿の所為だとはジークは思っていない。


「でも討伐系も意外と儲かるんだよね。悩むなー」


そんなことを考えながら荷運びの依頼を発注した依頼人の元へと到着した。

場所はシルバリオンの門付近にある舗装屋だ。

どうも依頼内容は石材を街の外の倉庫から、店の倉庫へ運ぶものだった。怪力のジークには余裕の依頼内容だ。


「こんにちはー」


舗装屋に入るとゴツイ鬼族のおっちゃんが対応してくれた。


「ん? どうした嬢ちゃん」


「依頼を受けにきたんですけど、コレです」


ジークは引きちぎってきた依頼書を手渡す。


「・・・・・・・嬢ちゃんがか?」


「はい! こう見えて力持ちなんですよ!」


もう冒険者見習いになってからというものジークは女の子に間違われることが多発していた。

一々訂正するのも面倒になって最近では流している。


「ドワーフ族か? なら頼むぜ。そこの門からでて右手にでっかい倉庫がある。鍵はこれだ。そっから此処に煉瓦を運んでくれ。全部で900ブロックあるが・・・ホントに出来るか?」


「大丈夫です! 任せてください!」


「終わったらマズール鍛冶屋って知ってるか?」


「え?はい」


「そこの前の道を舗装してると思うから依頼書もってそっちに来てくれ。まったくあの鍛冶屋の店主め、酔っぱらって踏み抜きやがってよ。信じられるか? 酔っぱらって煉瓦を粉砕するんだぜ? 何度目だってんだよ!」


その犯人はジークだ。寝坊して焦って店から飛び出して何度も道を粉砕したのは、まぎれもなくジークだ。

ジークは消え入りそうな声で謝罪した。不名誉を被ってくれているマズールと、舗装屋のおっちゃんに。


「・・・ごめんなさい」


「ん? どうかしたか?」


「いえ なんでも」


「ああそうだ施錠はしっかりしてくれよ」


「了解です!」


この依頼は自分が受けなくちゃいけない。必死にやろうと心に刻んだジークだった。

気合を入れ直してジークはやる気一杯で倉庫へと向かった。







元気よく門を飛び出していった姿を最後に――


ジークは行方不明となった。

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