第28話 遠見櫓の列
行先の情報を得ることが出来た僕達は一度ギルド支部に戻ってヤオとマネージャーを待って合流。
掲示板と受付で別件で東に向かう依頼を探したが一件もなかった。
「東行きは僕達だけみたいだね。依頼同時進行も、他の冒険者と合同でモンスター突破もできない。この九人で挑戦することになるね」
「ふん、勇者候補生アランなら問題はない」
マネージャーは楽観視している。
「ナ……お前の師匠の本に載ってた奴だと良いんだがなー」
「御師様のアナライズブック。何とか思い当れるか頑張ってみるよ。でも初手はトリルさんのアナライズだね」
デスティンの言葉を受け、トリルとも相談しておく。
「さて、寝るぞ。お前たちはこれで寮を探せ」
そう言ってマネージャーはアランにはした金を渡して自分だけ去っていく。
アランはそのお金で受付に冒険者寮を相談して一番安い所を指定される。
「依頼人はどうする?」
ヴァイスの質問に依頼者大人四人で相談。
「安い雑魚寝大部屋の宿を探します」
「クーランさん、出来ればで良いんですがお願いが……」
「分かったよトリルさん、大部屋が二つある宿を探そう。今夜だけだけどね」
トリルとリッキーさんに頷いて空地に戻り、両家と共に安屋台で質素だけど料理と言える夕食を皆に食べさせる。
空地の両家とリッキーさん宅で二部屋借り僕の財布で支払い。
「さぁ、皆静かに寝させてね。冒険者は寝るのも大事なことなの」
トリルが子供達を寝かしつけ、大人たちも寝る。
デスティンが外で警戒に立つ。
翌朝起きた僕達は、トリルとプリムラに魔導書を開いて見せあいを始める。
「何?」
「プリムラ、ここの数字が5になってるよ。第1階位が5回使えるようになったね」
「魔法増えた」
「第1階位9回、第2階位6回、第3階位3回。良かった」
プリムラとトリルは喜んでいる。
「第1階位9回、第2階位8回、第3階位4回、第4階位1回か。覚える資料が無いから第4階位は使えない。当面を凌ぐためなら第3階位がもう少し伸びて欲しかったね」
「え、クーランすごい」
少し考えた後二人に向き直る。
「成長は向き不向きも出てくるけど魔力や体力も伸びる。普段の生活で伸ばせる所もあるけど、冒険者の成長は顕著だよ」
一応、兼業魔法職工者の僕はその仕事でも魔力と器用さが少しずつ伸びている。
「強くなった。がんばっちゃう」
プリムラが意気込みを見せる。
朝にパン屋で皆で安いパンを買って食べる。
「モンスターを倒してください。ここで土地を耕すにはそれしかないんです」
まだ何も気づいていない両家と別れ、ギルド支部でアラン達と合流。
一度東のモンスターについてギルド内で聞き込みをしたが誰も東に興味を持っていない。
依頼が無いので冒険者は分らなくもない。
しかしギルド職員ですら黙っている。
「やっぱりおかしい。先の冒険者は優良で失敗報告はあったと思うのだけど『情報を出さない』」
斥候には聞こえるであろう小声に挑戦してみる。
マネージャーには聞かせたくなかった。
面倒臭さを悟られれば、行く前にお金だけ取って諦める選択をとりそうだったからね。
斥候達から戦士達へ小声で僕の言葉が伝わる。
アランが頷き「出発だ」と子供達に笑った。
―――
町からの出発後しばらくたった後エミールが何かに気付いた。
「街道から離れているが遠見櫓が建ってるな」
「『街への襲撃』に備えて正規兵が建てた物だろうね。先の依頼者がモンスターから襲撃に会わなかった理由かもしれないけど……気を付けた方が良い」
「まかせろ」
街は見るだけは見ているらしい。
暫く進みエミールが付け加えた。
「またあったな。この離れ方は狼煙連絡か」
「何をもって街に連絡を入れるかだね」
僕以外に見えないデスティンが前に出る。
「こっちは任せて問題ないだろ。モンスターまで見てくる。俺を襲う奴は居ねーしな」
僕が頷くとデスティンは歩いているとは思えない速さで街道を進んでいった。
昼食を終えて警戒しながら進むもやはりモンスターは現れない。
進むこと暫くマーティンがアランの傍に姿を現す。
「街道を外れるように櫓行きの轍を見つけたぞ」
マーティンの指定する場所まで進み、ヤオを警戒に残しエミールとマーティンの二人での調査が行われる。
街道を大きく外れることなく戻ってくる二人。
「西の街から櫓に進んで、帰りは東に進む、そんな感じだ。順に東へ補給を行っているな」
聞かれても問題ない内容を話すエミール。
「先に行けば車と会うかもしれない。モンスターを越えるつもりがあるかは分からんが」
マネージャーに聞こえないように冒険者一人一人に補足を入れるマーティン。
そのまま進み野営の準備。
ここでデスティンが帰って来た。
「モンスターは何つーかな?出鱈目だったな。熊に無理くり蟷螂の翅と鎌腕を足したような?飛んでた」
「……本で読んだ覚えはないね」
「なんだブラザー?」
脈絡もなく僕が発言したものだから訝しむエミール。
「問題はここからだ。車が近くに止めてあって兵士が餌をやってたな。ここまで車を引いただろー馬を潰してそれに何かの薬を混ぜて食わせてた」
兵士がモンスターを養っている。
はたしてそんな事が出来るのかは分からないが、事実ならこれは確かにギルドも黙る。
東行きの依頼が支部に一件もなかったのは意図的に受諾しなかった可能性もある。
兵士とモンスターを同時に見られないためにね。
「兵士は馬を失った車を人力で引いて遠見櫓に行ったな。間違いなくモンスターの見える位置だ」
僕はしばらく考え込む。
ブラスが来て今日の僕の見張り班が揃ったところでエミールがもう一度僕に声をかける。
「ブラザー?おい」
「街道から物見櫓の距離を離すのは本来おかしい。補給が面倒になるよね」
「確かにそうだな」
エミールが僕の呟きに頷く。
「モンスターがいた街道の近くが壊されるなら分かる。けどこれまでの櫓全てが街道と離されていた。物見櫓はモンスターが現れた後で建てられた物で間違いがない。櫓を立てた兵士達はモンスターの行動範囲を知っていたのかもしれないね」
エミールがデスティンからの声が聞こえないなりに察する。
「モンスターを街は容認してるのか」
ブラスが心得たように焚火の皆に向き直る。
「アホ役人がここに来ないようにアランを呼んでくる」
ブラスが皆に合流、ヤオがわざとに買ったばかりの酒をマネージャーに勧めて注意を引き、ブラスとアランがこちらに来る。
四人で相談しアランが笑った。
「モンスターにそんな事情があるなんて『誰が知ってる』んだ?黙ってたら分からない事だろ?このまま進んで倒す」
「ありがとう。アラン」
僕は三人に礼をして、焚火に戻る。
エミールが冒険者達にだけこの話を伝える。
マネージャーが毛布にもぐりこんだ後でマーティンがベーコンを取り出す。
「ここ一番ならやっぱ肉だろ」
九つに切られた一口ベーコンを冒険者達で食べる。
翌日も何事もなく昼過ぎ。
マーティンが戻ってくる。
「割とでかいな」
全員で進みその姿が見えてくる。
「翅がついてるのが気になるね。あの付属物が全部使える物なら飛ぶかもしれない。あの重さが飛ぶなんてよほど力があるよ」
デスティンの報告を少しぼかして皆に伝える。
「飛んだら皆は屈むんだぞ」
ヴァイスが依頼者達に言い聞かせる。
こちらに気付いたモンスターが飛んで来る。
アナライズブックを開いたトリルが届く範囲に来たモンスターに奇跡を使う。
「名称未設定、カテゴリー合成獣、弱点不明!?」
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
皆様にお願いがあります
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全てに対応出来るかは分かりませんがコメントをお待ちしています




