序章
風にショートカットの髪を靡かせ、家から徒歩で二時間程かかる場所にある中学校に向かう一人の少女がいた。名前は橿原紬。今日から二年生になるというのに、未だに友だちの一人もいない子だ。
決して紬が人見知りというわけではなく、小学生までは東京で暮らしていたが、卒業式の前日に事故で両親を亡くしてから父方の祖母の吉江に引き取られ、今は見渡す限り山、川、猿といった田舎で暮らすことを余儀なくされてここでの暮らしに馴染めずにいるのが原因だ。
しかも、馴染めていないのは暮らしだけではなく田舎に住む全ての人間ときた。吉江は世間体を気にして紬のことを引き取ったはいいが、家を継がなかった息子をよく思っておらず、その子供の紬にも嫌悪感を抱いていた。クラスメイトからは元東京都民ということに加え、栗色の髪と瞳が悪目立ちしてしまい完全に浮いていた。
この状況を少しでも好転させるべく、紬は家の古びた倉庫からある秘密道具を拝借してきた。年代物と思われる木彫りの兎を模して造られた面だ。これを見せびらかせば注目の的間違いなし! と自棄になった思考のまま昨晩用意し、装着したまま小走りしているのが今の状況だ。
そのときだ。普段はまばらに街灯があるだけの薄暗い山道で紬は謎の鳥居を見つけた。それは何個も連なって遠くまで続いている。紬の興味はクラスメイトの反応から完全に鳥居に移り、どこに続いているのか知る為の冒険を始めていた。




