翌日のカレーの秘密(5)
こんなイースターイベントから数日後。藤川から連絡があった。
あの後、カナエの方から連絡があり、チラシの犯人が自分だと白状したらしい。陰謀論サイトを鵜呑みにし、一方的にこういったイベントが悪いものだと叩いていたらしい。
あの気が強く、お高くとまっていたカナエもこのお料理コンテストで色々と思う事があったらしい。献金や募金など目に見える行いだけ綺麗にし、心は全くついていなかったと反省していたという。
それにこのイースターイベントをきっかけに聖書に興味を持った子供も多くいたそうで、無闇矢鱈と陰謀論サイトを鵜呑みにする事は、辞めると宣言するぐらいだった。
もうチラシも作ったりしないという。何か疑問点があれば、その場でちゃんと牧師や美沙に相談するという事に収まった。
こうしてカナエの件は無事に解決した。藤川の心労も少しは軽減されたと信じたいものだ。
ちなみにカナエが鵜呑みにしていた陰謀論サイトも見てみた。綺麗な写真やイラスト、分かりやすい動画も多い。動画はイケメン牧師が説教しているものも多く、騙されてしまうのも無理がない作りだった。
藤川はこの陰謀論サイトの作成者をカルト対策の専門家と共に調べていたらしいが、何とカルトで有名な教団が作っているものだった。カルト教団の名前では集客できないらしく、上手く名前を変えた陰謀論サイトで人々を騙しているという事だった。健康や美容情報などは参考になる情報も多く掲載されていたので、なかなか巧妙だが、こうしたカルトが発信している情報はインターネット上には多いようで、朔太郎も気をつけたいと思った。
カナエの事は好きではなかったが、こうしてインターネット上の情報に惑わされやすい事は分かる。朔太郎だって完璧に見分けられるわけでも無い。今回の事は、気をつけるべき事も分かり、朔太郎も勉強になった。作品のネタにしても悪くないかもしれない。
「さくちゃん、夕飯できたよ!」
美玖の声がし、仕事部屋から一階のダイニングルームへ向かった。今日の夕飯は、卵と豆苗の中華炒めだった。卵の黄色と豆苗の緑が映える一品だった。中華風のごま油の匂いも悪くない。
「確かに料理は見た目じゃないけれど、こんな色合いの料理もいいでしょ?」
「そうだな。見た目も味もどっちも良いのが最高だよな」
「ええ」
二人はこうして見た目も味最高な夕食をとった。毎日繰り返す日常の風景だ。決して派手な時間でもない。
それでも、こうして最悪の妻と食事が出来るのは、贅沢な時間だ。
「美味しいな」
そんな時間を味わいながら、朔太郎は箸を動かし続けていた。




