菜の花サンドイッチの教訓(2)
翌日、朔太郎は新作の企画をの練っていた。やはり、昨日長田と話していた事が引っかかっていた。
仕事部屋の資料をひっくり返しながら、あーでもない、こうでも無いと悩んでいたら、あっという間時間がたってしまった。傍目には原稿も書いてないし、資料を読んで遊んでいるようの見えるかもしれないが、新しい企画を作る時が一番頭を使う。朔太郎の脳はフル回転していた。
過去には食品偽装を暴くルポを書いた事があった。そんな経験を元に、天才的な舌を持つ男のサスペンス風ミステリが思いついた。今まで書いた事にないジャンルだったが、企画を練りながら、手応えも感じている。長田の言いように、いつも同通りの事をしているより、明らかに脳が活性化されていた。
人が旅行に出かけたり、ライブに行ったりするのも日常のルーティンから離れ、脳を活性化する目的もあるのかもしれない。セレブがバンジージャンプをしているニュースを見た事があったが、あれも脳の活性化と言われたら、腑に落ちる。
朔太郎も初老だ。認知症も身近な問題だ。尊敬していた先輩作家が、認知症になり、介護施設に入ったという事も知っている。やはり、日頃からこうして新しい事のチャレンジするのも悪くは無いだろう。
「さくちゃーん!」
そんな事を考えていると、美玖の呼ぶ声が聞こえた。朔太郎は急いで下に降りた。
「何これ?」
一階の洗面所で美玖は、朔太郎のズボンと昨日飯島に貰ったクッキーを手にしていた。そういえばあのクッキーはズボンのポケットに入れっぱしにし、洗面所の汚れ物のカゴに入れておいた事を思い出す。
クッキーは意外な事に割れてもなく、可愛らしいネコの形状のままで、美玖は首を傾げていた。
「何これ? 買ったの?」
「そう見えるだろ。違うんだよ、昨日飯島から貰ったんだ」
「え、あの飯島さんが?」
可愛いクッキーと飯島は確かにギャップがある。美玖はかなり驚いていた。
「何でも最近手作りスイーツにハマっているらしいよ。意外だな」
「へえ、意外。せっかくだから、コーヒー淹れて食べましょうよ。あと、私が昨日作ったパウンドケーキもあるし。今回は生焼けでなく、ちゃんと成功したからね」
「本当か?」
美玖はパウンドケーキを必ず成功させると、やる気を見せていた。昨日は打ち合わせや飯島と会ったので、焼きたてを食べるチャンスはなかったが、これは是非食べたい。
「じゃあ、三時のおやつね! 楽しいお茶の時間にしましょう。お茶ではなく、コーヒーだけどね!」
という事で三時のお茶の時間となった。ずっと企画を練り、煮詰まっていた事は否定できない。この時間は、確かにグッドタイミングだ。
ちなみに三時のおやつは、理にかなっているという説もある。この時間は一番脂肪がつきにくい時間ともされ、間食するのに適しているという。
北欧にはフィーカというお茶を楽しむ時間もある。この時間により、コミュニケーションのがとれ、心も身体もリフレッシュされるとか。
朔太郎はもう初老のおじさんだが、こんな三時のおやつも悪くないだろう。
「いいね! お茶の時間が楽しみだ」
「ええ。さっそく用意しましょう」




