819 ギルドマスターは香ばしくギンナンを炒ります
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「起動……避雷針」
オオイチョウの仮想現実での属性は最凶の 【幻獣】 だけど、そもそも植物で火に弱く水に強いという特性を持つ。
まぁ氷は受け付けないというか、反射してくるけどね。
しかもPKしてくる。
解せぬ
バグなのか仕様なのか、相変わらずそのへんはグレイゾーンのまま。
まぁ運営が修正入れないってことは仕様と考えるべきかもしれない。
というわけでうっかり氷水系の攻撃魔法を撃ったらヤバい相手です。
でもね、ちょっと考えたの。
植物だから火で燃えて水で回復。
それなら大樹の天敵はこれじゃない?
そう思って一撃必殺の大技 【避雷針】 をお見舞いしてみたんだけど……うん、ダメージは出た。
たぶん視覚効果から推測して滅茶苦茶出たと思う。
遥か上空から放たれた雷の一矢に撃たれたオオイチョウは、閃光を放ちながら生木を裂くような悲鳴を上げた。
もともと 【避雷針】 の視覚効果はちょっと大袈裟なんだけど、でもそれだけダメージを出せる大技。
オオイチョウにもこれだけの視覚効果が出たと言うことは、ひょっとしたら期待値以上のダメージを与えられたかもしれない。
でもここで問題が発生しました。
放電現象
【避雷針】 自体は単体攻撃だけど、攻撃対象を中心に、ランダムに放電する。
でも 【ミドースジ】 はPKエリアじゃないから大丈夫と思ったのが甘かったのよね。
まさかの反射扱いでPKしてきました……というかPKしてしまいました。
誰も落ちなかったけど
だってほら、そこはね。
そんな簡単に落ちるような非力はわたしとカニやんくらいだから。
いえ、本当は寸前に気がついたクロウが珍しく指示を出して学生組を下げてくれたおかげです。
いつもはなにも言わないくせに、本当に珍しい。
明日は雨?
雨の日の出勤って嫌なのよね。
かといって休んでいたら有休なんてすぐに亡くなっちゃうし。
とりあえず一応お仕事のデキる上司様に感謝します。
わたしは所持している常時発動スキル 【愚者の籠】 が魔法攻撃を吸収してくれるのでダメージは皆無。
カニやんはといえば、ほら、カニやん大好き脳筋コンビがいるから。
案の定というか、身を挺してカニやんを守って自分がヤバそうになってます。
さすが……
「さすがちゃうやん!」
「あんたの 【避雷針】 はヤバいねんて!」
「ヒール」
「ヒール」
え~
さすがにこれはバグじゃない?
本来は反射扱いじゃないでしょ?
【避雷針】 自体が放電するわけで、オオイチョウの反射じゃないのにどうしてPKなのよっ?
電撃系魔法攻撃を反射するなら、さっき見えたダメージ視覚効果のほうがバグってことになる。
……てかオオイチョウって、電撃系反射だっけ?
『攻略wikiだと反射にはなってないよ』
インカムの向こうから、ギルドルームの隣にいるハルさんがギルドチャットで答えてくれる。
こっちが脳筋コンビの回復で慌ただしいのに気づいて代わりに調べてくれたのかもしれない。
うん、そうよね
わたしもそう記憶している。
ということは、やっぱりバグ?
とりあえずクロウや恭平さんと一緒にオオイチョウに攻撃を続ける脳筋コンビの回復を急がなきゃ。
もちろん自分のHP残量も要注意。
但しわたしはこの時点でMPも結構なピンチです。
理由はもちろん 【避雷針】 です。
無茶苦茶MPを消費するからね。
その 【避雷針】 を撃った直後だからね、大絶賛のMP残量がどん底です。
一応ね、MPを自然回復する常時発動スキル 【夢見る杖】 は所持している。
でもどん底から回復させるとなるとなかなか時間がかかる。
安全地帯である 【ナゴヤドーム】 内にいれば回復速度も上がるけれど、ここは一般エリアで、わたしのアバターは現在進行形で活動中というか戦闘中。
おかげで 【夢見る杖】 も通常運転。
なかなか思うようには回復しない。
同じくHPを自然回復させる常時発動スキル 【守護の祈り】 も所持している。
こちらも安全地帯である 【ナゴヤドーム】 内ほどの回復速度はなく、ギンナンの悪臭によるHP減少のほうが全然早くて間に合っていない状態。
攻撃ダメージを受けていないわたしですらそんな状態だから、その……えっと、まぁね、わたしだって想定外だったのよ。
まさか 【避雷針】 の追加効果がPKをするなんて思わないじゃない?
少なくともわたしは思っていなかったからうっかり 【避雷針】 を撃ってしまったわけで、これは久々に運営に意見書送付案件です。
絶対バグよ!!
そのバグのせいでダメージを食らった脳筋コンビの回復が間に合わず、わたしは自分のMP回復を後回しにして二人のHP回復を急ぐ。
【ヒール】 はほぼほぼ使えないし、そもそも同じ魔法使いでもわたしとカニやんの本職は攻撃型魔法使い。
ステータスは火力ゴリゴリのゴリラ……ではなくて火力ごり押しで、プレイスタイルは戦闘参加型。
後方支援とはまるで縁がない。
だからといって前衛の剣士と連携するにはオオイチョウの特性が邪魔。
不向きな後方支援を学生組と一緒にしても、クロウと恭平さん、それにちゅるんさんの三人では、対 【幻獣】 戦を勝つにはちょーっと火力が足りない。
勝てるとは思うけどね。
JBとアキヒトさん……うん、まぁアキヒトさんは戦力外として、JBの到着を待ってもいいけれど、それまでに恭平さんとちゅるんさんが保つかどうか。
【ナゴヤドーム】 に死に戻った三人の中ではベリンダが一番早く到着すると予想されるけれど、ポーション切れでまた誰かが落ちると思う。
となるとやはり脳筋コンビを切り捨てて絨毯爆撃を……と思ったら珍しい声が聞こえてきた。
「エリアヒール!」
相変わらず恐ろしいほどの回復力。
さすが本職の回復系魔法使いだわ。
「さすがサブマス、愛してるぅ~」
「ありがと」
ちゅるんさんの……たぶんこれは褒め称えつつお礼を言っているのよね?
うん、多分そうだと思う。
相変わらずこんな足場の悪い荒野をビックリするくらい高いヒールで闊歩してきたらしい蝶々夫人は、やっぱり相変わらずの変な決めポーズをとってちゅるんさんに投げキッスで応える。
でもちゅるんさんもひどいのよ。
その投げキッスを手で払う仕草をしたの。
「それはいらなぁ~い。
HPカモォ~ン」
「もう、あんたって子は我が儘なんだから。
もう一つ、エリアヒール」
派手にサンバホイッスルを鳴らし、背に負った羽根飾りを激しく揺らしながら踊り出すちゅるんさんのリクエストに応えて蝶々夫人は 【エリアヒール】 を唱える。
わたしやカニやんには真似出来ないほど力強い回復力です。
「俺もあんたも回復職ちゃうしな」
ちょうど脳筋コンビにHPポーションを投げつけようと手にしていたカニやんは、ぼそりと呟くと二人に声を掛ける。
「行けそうか?」
「さすが本職言うとくわ」
「お前、おんのやったらはじめから来いや」
カニやんに応えつつ蝶々夫人に文句を言うとか、なんて凄い口頭技術というか、高等技術というか。
さすがお医者さまは頭の回転が速い。
「あ~らご挨拶ね」
もちろん蝶々夫人も負けません。
「ご挨拶ちゃうわ。
【特許庁】 のメンバーがやらかしとんのやろが」
「ルーカルルール無視で、とんだ迷惑や」
「ローカルルール……ああ、あの掲示板に事前に書き込むってやつ?
そういえばそんなルールもあったような気がするわ」
「それや、それ」
「ちょっとちゅるん、書いてないの?」
「え~? それなに?」
うん、書いてませんね。
っていうか、書いていたら恭平さんが見逃すわけないしね。
知っていたら今夜のギンナン拾いは中止していたはずだもの。
「そんな細かいこと気にしなぁ~い」
ええ、ちゅるんさんはそうでしょうね。
「サブマス来たし、狩るわよぉ~」
ちゅるんさんが張り切って狩ろうとしているのはもちろんオオイチョウです。
本職が来たから後方支援はお任せ出来て安心だからね、張り切ってもらって全然かまいません。
でも一つ訊いてもいい?
蝶々夫人はともかく、不破さんは真田さんと一緒に、【東京砂漠】 の地下迷宮に落ちたノーキーさんの回収に行ったはずでは?
不破さんが蝶々夫人と一緒にいるのは珍しくない……というかよく一緒にいる。
最近は真田さんと一緒にいることが多かったけど、その真田さんと一緒に 【東京砂漠】 の地下迷宮に行っているはず。
さっきちゅるんさんからそう聞いた記憶がある。
その不破さんが蝶々夫人と一緒に 【ミドースジ】 に登場! ……というのはどういうこと?
真田さんとノーキーさんは?
お忘れかと思いますが、真田と蝶々夫人の中の人は同一人物ですが、グレイは気づいていないといいますが、忘れているといいますか。
それでおかしな会話になっておりますが、二人が同一人物であることを知っているメンバー(学生組は知らない)はグレイが忘れていることも知っていて、わざとグレイには黙っていますw
だから不破が蝶々夫人(真田)と一緒にいるのはおかしくないのですが、ノーキーはどうなったのか? ・・・という状態ですww




