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ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


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818 ギルドマスターはギンナンを炒ります

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

「なんすか、それっ?」


 迂闊にオオイチョウに近づくと、渦巻く葉に巻かれて動けなくなる。

 ただでさえオオイチョウ周辺は悪臭の濃度が高いのに、渦の中はさらに濃縮された悪臭の宝庫。


 純度100%


 そのくらいの悪臭らしい。

 実際に計れるわけじゃないけど、そのくらい臭いらしい。

 わたしの説明にジャック君は驚いて、渦に捕まりそうになった美沙さんも 「まだ臭い!」 とか言ってます。

 あれよね?


 自分が臭い


「そう、それ!

 マジそれ!」


 うんうん、わかるわ。

 とーってもよくわかるわ。

 だってわたしもついさっき、ルゥにギンナンで汚れた肉球を拭く雑巾にされたもの。

 飼い主を雑巾代わりにするなんて、本当に極悪非道なワンコよね。

 おかげで落ちかけました。

 だから罰として放してあげません。


 幻獣大戦は絶対にごめんです


「きゅ~」


 ルゥは不満そうだけど、そもそもオオイチョウの出現は想定外。

 これ以上の不測の事態はごめんです。

 それこそ下手をすればHPポーションが足りなくなってしまう。


『後方支援は任せて』


 こちらの状況はギルドチャットで、設定をoffにしていない限りギルドメンバー全員に聞こえている。

 ギルドルームで待機している……というか、最初はいつもどおり作業をしていたと思われるハルさんが、聞こえてくるこちらの会話から状況を推測、協力体制に入る。


 わたしはギルドルームと繋がっているハルさんの作業部屋にはほとんど入ったことはない。

 仲のいい恭平さんはよく入っているみたいだけど、頼まれた素材の受け渡しはポストに送付しておけばいいだけだし、一緒にいるルゥが悪戯しても申し訳ないしね。

 まぁルゥはいつも勝手にこっそり入り込もうとしてるけどね。


 ルゥは好奇心旺盛で興味津々。

 だから余計にわたしはハルさんの作業部屋には近づかないようにしていて内部の様子はわからない。

 生産スキルも持っていないから手伝いも出来ないしね。

 それは恭平さんも同じだけど……二人でなにしてるのかしら?

 元々仲のいい二人だけど……うん、今は考えるのはやめておくわ。

 だって目の前の現実だもの。


 オオイチョウが大暴れ


 攻撃目標(タゲ)が美沙さんに移ってベリンダが自由になったのかといえばそうではなくて、いえ、自由になったといえばなったわけだけど、言い方を変えると落とされたっていうね。

 丁度そのタイミングで、わたしやカニやんに釣られた美沙さんがオオイチョウに攻撃を仕掛けてしまったために空いた攻撃目標(タゲ)にすっぽり収まった。

 タイミングをいえばわたしやカニやんでもよかったはずだけど、狙いやすいプレイヤーを選ぶようにAIがプログラミングされているのかもしれない。

 これはNPCそれぞれで違うと思うけど、オオイチョウはそうなっているのかも。


 基本的に攻撃目標(タゲ)を外すにはオオイチョウの行動エリア、つまりA(エリア)D(ダンジョン)【ミドースジ】 の外に出ること。

 例外的なのは琵琶湖湖畔に現われるノブナガね。

 あの人はエリアの境界は越えられないため、琵琶湖がある 【関西エリア】 からは出られないけれど、【関西エリア】 内ならずーっと追いかけてくる。

 なんていうの?

 こう……ノブナガの執念深さみたいな?

 本当にあのチョビ髭や執念深い。


 第六天魔王ノブナガ / 種族・幻獣


 最近は会ってないけど、わたしたちが会いにいっていないだけで成仏したわけじゃない。

 今も不定期に琵琶湖周辺に出現しては、偶然通りかかったプレイヤーを何人も 【中部・東海エリア】 にある 【ナゴヤドーム】 の地下墓地送りにしている。

 特に魔法に反応するからわたしたち魔型は要注意です。


 現在交戦中のオオイチョウはあのノブナガと同じ 【幻獣】 で、人の形はしていないから目が合うなんていうことはない。

 その分恐怖心はないけれどとにかく臭い。

 わたしたち魔法使いは手が空くから鼻を押さえることが出来るけれど、剣士(アタッカー)は剣を持っているからなかなか難しい。

 そもそもここは仮想現実(ゲームの世界)だから鼻を押さえれば臭わなくなるけれど、秋時間の 【ミドースジ】 にいる限りHPの減少は避けられない。


 臭わなくてもね


「ふんっ!」

「どりゃ!」


 ちょーっと下品な気合いを入れながら、オオイチョウが大きく振る枝に剣を突き立てる脳筋コンビ。

 太さによって切れる枝と切れない枝があるけれど、切っても切っても生えてくるのはこの手のNPCではありがちよね。

 そんでもってオオイチョウも例外に漏れない。

 剣士(アタッカー)は攻防の中で切れる枝と切れない枝を目視で判断。

 切れる枝ならともかく、切れない枝だとヒットアンドウェイ。

 離脱タイミングを外すとウニョウニョと動く枝に捕まえられ、あっという間に無数の葉の渦に巻かれる。

 これが蓑虫状態……正確には蓑虫ほど密集はしないけれど、近い感じ? までなると、あっという間に落ちる。

 そして葉の渦が解けたあとには、落ちたプレイヤーは 【ナゴヤドーム】 の地下墓地に送られていないっていうね。


 ○体なき殺人


 ちょっとミステリーっぽい感じ。

 そんな感じですでにJBとアキヒトさんは 【ナゴヤドーム】 に死に戻りました。

 ベリンダもね。


『なんなの、あの速さ!』


 オオイチョウを振り切れなかったベリンダの無念の叫びが聞こえます。

 短剣使い(ベリンダ)の移動速度なら、秋時間が終わるまでに戻ってこられるかもよ。


『オオイチョウが出現したら、落ちるまで秋時間終わらないっすよ』

『というわけで戻るからよろー』


 どうやら先に落ちたアキヒトさんとJBはすでに地下墓地を出て 【ナゴヤドーム】 を出発し、現在進行形で 【関西エリア】 に向かっているらしい。

 まぁ地下墓地ですることもなくずっと横たわっていても仕方がないわよね。

 でも、だったらベリンダが落ちた時にはとっくに二人はいなかったってこと?

 じゃあベリンダも来るわよね?


 リベンジよ!


『もち!

 まずはその二人を抜く!』


 オッケーです。

 JBとアキヒトさんが負けず嫌いを発揮し、『抜かせないっす』 とか 『逃げ切ってやる』 とか無駄なことを色々言っているのをインカムの向こうに聞きながら、意識は目の前で繰り広げられているオオイチョウ戦に向ける。


「起動……………………ホットポット」

「美沙ちゃん、あかんあかん」

「燃えてるあいだは俺らも手ぇ出されへんから」


 せめて仕掛けるタイミングを合わせないと脳筋コンビまでダメージを受けてしまう。

 そうなるとほとんど見ているしか出来ないわけで、そのもどかしさはわたしにもわかる。

 でもね、最初に言ったわよね?


「回復要員として残ったんやから、回復に集中してんか?

 ヒール」

「エリアヒール」


 そうそう、それ!


 わたしが言おうとしたことを、一瞬早くカニやんに言われてしまいました。

 おかげで出番を失ったので、カニやんに倣って燃えるオオイチョウの炎で火傷を負った脳筋コンビの回復を手伝います。


 もちろん美沙さんはただの回復要員ではなく、現在進行形で攻撃対象だ(タゲられてる)から逃げながらだけどね。

 その逃げるのも、剣士(アタッカー)の攻撃タイミングに合わせてもらえると非常に助かります。


「え? それ激むず!」


 ですよね~


 まぁゲーム感覚で頑張ってみてよ。

 わたしたちも現在進行形でゲームをしているわけだけど。

 ついでに攻撃型魔法使い(ソーサラー)が攻撃を仕掛ける時は、詠唱タイミングを揃えて一斉攻撃にしたほうがいいかも。

 その隙に剣士(アタッカー)は自力回復を。

 わたしはともかく、カニやんや学生トリオのHPポーションの在庫が保たないかもしれない。

 ハルさんの後方支援はもちろん期待しているけれど、届くのはインベントリではなくてポストだからね。


 間違えないで


「タイミングはグレイさん、よろ」


 了解しました。

 カニやんのご指名は、たぶんわたしが詠唱時間が一番短いから。

 美沙さんの 【ホットポット】 の再起動準備(クールタイム)が終わり次第、カウントします。


「……3、2、1」

「起動……………………ホットポット」

「起動…………百花繚乱」

「起動……焔獄」


 ほぼ同時に射かけられる炎の攻撃にオオイチョウの足が止まる。

 一瞬早く回避行動をとった剣士(アタッカー)たちは、燃えさかるオオイチョウから目を離すことなくHPポーションを使って自力回復を急ぐ。


 しかもクロウ、脳筋コンビ、恭平さんの四人は頭が良いからね。

 HPゲージで残量を確認してポーションが何本必要かすぐに割り出すと、ウィンドウを開いてインベントリ内のHPポーションを選択。

 ダイレクトに本数を選んで使用をポチッとな。

 通常の回復視覚効果(エフェクト)はなし。

 ほんの一瞬だけ回復の視覚効果(エフェクト)が見えるだけの、自身の回復時にのみ使えるダイレクトコマンドです。


 選択本数が多すぎてもHPゲージを振り切ることはない。

 かといって上限値を超えても使用本数を制限されないため、ポーションを無駄に消費するだけ。

 だからこのダイレクトコマンドを使用するなら、自身のHPゲージの最大値を把握しておくことが重要となる。


 でもこの四人は優秀だからね。

 脳筋コンビだって普段はふざけてばかりだけど、現実世界(リアル)では国家資格を持ったお医者さま。

 むっちゃ優秀な頭脳の持ち主です。

 恭平さんは普段からそのへんにぬかりはないし、上司様のすることに部下は口出し出来ません。


「ハル、悪いけど20本くらいまとめて送れる?」

『OK。

 まだ在庫に余裕があるから他の人も言ってね』


 ちょっと神妙な顔の恭平さんからの依頼……と言ってもここにいないハルさんに恭平さんの顔は見えていないけれど、声からヤバさは伝わったはず。

 でも応えるハルさんの声はいつもと変わらない。

 余裕があるというより、あえて冷静に務めてる感じ?


 交戦中にダイレクトコマンドを使えるタイミングはそう巡って来ない。

 だから剣士(アタッカー)たちはHP残量と相談をしながらちょこちょこ回復をする必要があるわけだけど、まさか恭平さんがそれを怠った?

 いや、違うか。

 オオイチョウが出現するまで、恭平さんは学生組のフォローに回っていた。

 たぶんその段階で自身のHP回復を後回しにしていたのかもしれない。

 いずれにしてもハルさんがいてくれてよかったわ。


 対 【幻獣】 戦は、ある程度相手の動きに慣れれば、あとは被ダメと与ダメの我慢大会。

 根負けしたほうが負けというか、攻撃リズムが整うまでは犠牲が出やすいけれど、そこから先はガチの我慢大会。

 それこそ根気よくNPCのHPを削りながら受けたダメージを回復する。

 だから回復を忘れなければプレイヤーが落ちることはないけれど、回復のためのアイテムが尽きれば運も尽きる。


 最悪の状況になればオオイチョウを放置してエリアの外に逃げればいい。

 だって悪魔の儀式をしたのはちゅるんさんで、それを依頼したのはカジさん。

 誰がどう見たってケツは 【特許庁】 が拭くべきでしょ?

 どうして 【素敵なお茶会(わたしたち)】 が拭かなきゃならないのよ?

 オオイチョウを放置して退散したところで非難される謂われはありません!

 しかもすでに三人も犠牲を出してるのよ。

 主催者としてこれ以上の犠牲は出せません。


 そもそもちゅるんさんは、なにを考えて対 【幻獣】 戦を一人でしようと考えたわけ?

 うん、まぁ 【富士・火口】 で対 【スザク】 戦を一人でしているわたしが言うべきじゃないかもしれないけど、あそこはI(インスタンス)D(ダンジョン)で誰にも迷惑掛けません。


 不死のスザク / 種族・幻獣


「え~ギルマスに声掛けたら東京砂漠で地下迷宮に落ちちゃったんだってぇ~」


 ……ノーキーさんはなにをしてるのかしら?

 ちゅるんさんもね、脳筋コンビやクロウたちと一緒に攻撃はしているけれど、わたしの質問にも答えてくれたけど、足は軽快にサンバのステップなのよね。

 でもノーキーさんが東京砂漠で地下迷宮に落ちたなら、真田さんと不破さんは回収に駆り出されている可能性が高い。


 出てこなくてもいいけど


 しかもこれがちゅるんさんの答えっていうのもどうなの?

 とりあえず、一つ思いついたことがあるから挑戦してもいい?

 植物に火が有効なら、たぶんこれも天敵だと思うの。


「起動……避雷針」

一撃必殺の電撃系スキル 【避雷針】 登場!

これでオオイチョウ戦も終了かっ?!


クールタイムの都合上、1回しか撃てませんが・・・

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