816 ギルドマスターはオオイチョウとサンバを踊ります
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alert オオイチョウ / 種族・幻獣
わっさわっさと金色の葉を撒き散らしながらベリンダを追ってくるオオイチョウは、根を足代わりにして移動している。
蛸みたいに何本もの根をウニョウニョさせながらね。
しかも速さが命の短剣使いが振り切れないほどの速さでベリンダを追ってきて、あっという間にわたしやカニやんだけでなく、トール君や美沙さんまで攻撃対象エリアに捉える。
ちょっと、やめてよね!
なにしろ相手は 【幻獣】 だからね。
ちょっとやそっとじゃ落ちてくれない。
ただでさえ醜悪……ではなくて、漂う悪臭のためにHP残量に予断を許さない状況で、よりによって 【幻獣】 との戦闘だもの。
ステータスが化け物級というか、文字通り化け物よ。
もちろん戦って勝てない相手ではない。
今ならクロウや脳筋コンビといった超重量級の火力がいるしね。
でも 【幻獣】 が相手だと犠牲はつきもの。
いつだって犠牲になるのは弱者って相場が決まってるからね。
それじゃ困るから!
トール君たち学生組もそうだけど、今回はの~りんが主催のギンナン拾いだからね。
絶対に拾ってもらわないと困ります。
「みんな、10個拾った?」
もちろんギンナンのことよ。
この流れでギンナン以外に拾うものはないわけで、そもそもAD【ミドースジ】 にはギンナン拾いに来たんだから、最低でも目的は達成しておきたい。
それがギンナンを10個拾うこと。
もちろんわたしはクリア済みです。
クロウもね
「大丈夫です!」
「拾いました!」
トール君とジャック君は声に出して答えてくれたけれど、美沙さんは両手を使って大きな丸を作ってくれる。
学生組がOKってことはの~りんもOKでいい?
「あ、うん、大丈夫」
焦るあまりずいぶん雑な扱いをしてしまったけれど、そこはあまり気にしないでいてくれるのがの~りんのいいところです。
「気にしてないわけじゃないけど、気にしていられる状況じゃないからね」
うん、ごめんね。
そんでもっていつも大人の対応でありがとう。
「とりあえず俺はトール君たちを 【ミドースジ】 の外に誘導するよ。
回復要員しに戻ってくるから、それまでみんな生きててもらってもいい?」
さすがの~りん、自分の立ち位置はよくわかってます。
「誰に向かって言うてんねん」
「はよ戻ってこんとすることなくなるで」
遠回しなの~りんの激励ににかっと笑ってみせるインテリな脳筋二人。
の~りんが戻ってくるまでに落としてみせるつもりなのか、ずいぶんな自信……といいたいところだけれど、不可能じゃないのがこの二人よね。
でも落ちることに抵抗がないというか、結構平然と落ちるから油断が出来ません。
急に火力が落ちるから困るのよ!
「戻り損はごめんだよ」
たぶんの~りんは、わたしの困るほうの予測を言っているんだと思う。
「ヒール」
「ヒール」
あ、これはわたしとカニやんが、トール君たちのほうを回復するために掛けたものです。
もちろん自分たちの回復も忘れていないけれど、そっちはポーション使用です。
まさかオオイチョウの登場でインベントリに溢れたHPポーションを減らすことが出来る状況になるとは思っていなかったけれど、万事塞翁が馬!
ついでに勝って銀のギンナンを手に入れます!
銀杏だけに
「え~それなにっ?」
ヤバい、美沙さんが余計な興味を示した。
もちろんトール君は状況と空気を読んで、の~りんの誘導で 【ミドースジ】 のエリア外に退避しようとしていたんだけど、美沙さんが足を止めると置いていくことも出来ない。
そこはひとが好いというか、面倒見がいいというか。
ジャック君はどうしたらいいか戸惑っています。
「オオイチョウを倒した報酬だよ。
でもドロップはランダムだから、交戦しても必ずもらえるものじゃないし、悪いけど美沙ちゃんのレベルじゃ落とされると思う」
話してしまったほうが早いと判断した恭平さんの、簡潔かつわかりやすい説明。
ちなみに落とされると経験値などの報酬も入らない。
わたしはいらないけど
それどころか死亡制裁で経験値を溶かすのがオチです。
だから問答無用で退避を選択したというか、選択したのはわたしたちだったわけだけど、本人たちが納得しないと退避出来ない。
だってほら、自分の足で走ってもらうわけだし?
脳筋コンビやクロウなら、美沙さん一人ぐらい肩に担いで、それこそ問答無用でエリアの外に連れ出すことも出来るけれど、もう交戦始めちゃってるからね。
完全に攻撃対象になっているから、下手に移動するとオオイチョウが付いて来ちゃって被害が広がるっていう無差別犠牲よ。
まぁそんなわけで頼れません。
だから自力で歩いて欲しいというか、走って欲しいというか。
「あ、じゃあ交戦しないから見てていいっ?」
「え? 見るだけ?」
それは楽しいの? ……という質問は愚問でした。
「逃げ回りながらでも、回復役とかすることあるんでしょ?
じゃ、それで!」
美沙さんがそんなことを言いだしたもんだから、トール君やジャック君までが残るって言いだした。
まぁそうなるわよね。
「次、自分たちだけの時に遭遇した時の対処法とか。
その、参考に出来たら」
真面目か!
さすがトール君というか、言い出すことはどこまでも真面目です。
すでに恭平さんも参戦してしまって説得役がいないというのもあるけれど、確かに一度くらい見ておくのもいいかもしれない。
ただトール君たち三人は、回復役というより、自分たちのHP残量のほうを気にして欲しい。
わたしたちとはHPの最大値も全然違うし、オオイチョウが登場したおかげでHPの減り方がパワーアップしているというかスピードアップしているというか。
「うわ、マジ~?」
「え? え?」
「マジだ!」
そうなんです。
当然ながら悪臭も濃厚になっております。
滅茶苦茶ルゥの機嫌が悪くなっております。
「ぎゅ~」
ワンコの嗅覚は人間以上だもんね。
本当にごめんね。
さっさと落とすからもう少しだけ我慢して頂戴。
それとも格納する?
「ぎゅ!」
嫌なのね
わかったわ。
でもおとなしくしていてね。
ここで下手にルゥが参戦すると 【幻獣対戦】 ならぬ 【幻獣大戦】 勃発で、甚大な被害が出ることが目に見えているから。
それはもうありありと……。
間違いなし!
ちなみにこの時点でもうアキヒトさんとJBは落ちています。
オオイチョウが登場してまだどれほども経ってないのに、本当にあっけなく落ちるんだから。
なにしに来たの?
『なにって、ギンナン拾いっすよ』
遠く 【ナゴヤドーム】 の地下墓地から、インカムを通してJBの声が聞こえてくる。
そうよね、まさか戦闘をすることになるなんて思いもしなかったわ。
誰よ、悪魔の儀式をしたのは?
おかげでデスマーチが聞こえてきたじゃない。
でも実際に聞こえてきたのはサンバのリズムを刻む笛の音。
えーっとこれはあの人よね?
ちゅるんさん
「ちょっと滑ってるあいだに逃げられたー!」
そんなことを叫びながらオオイチョウを追ってきました。
まぁね、このゲーム最速を誇る短剣使いが振り切れないくらい足が速いからね、オオイチョウは。
うっかりイチョウの葉に足を取られて滑ったりなんてしていたら、そりゃ見失いますとも。
逃げられもしますとも。
当然です
しかもイチョウの葉って滑りやすいし、うっかりサンバなんて踊っていたらそりゃすってんころりんでしょうね。
さらに言わせてもらえば、ちゅるんさって凄いヒールのサンダルで踊ってるのよね。
前回のイベントで、あの揺れる小舟の上でもそのヒールを履いて踊っていたのはさすがだったわ。
ついでに訊きたいんだけど、悪魔の儀式をしたのってちゅるんさん?
「イエース!」
わたしの質問にノリノリで答えたちゅるんさんは、またサンバホイッスルを吹いて軽快に踊り出しました。
その手に余った火炎瓶を持ってね。
これぞ儀式の必須アイテム
どおりできな臭かったわけよ。
何本のイチョウに火を掛けたか知らないけど、なんて余計なことをしてくれるのよ!
足引っ掛けて転ばせるわよ?
もちろんオオイチョウの足元でね。
踏まれてしまえ!!
やっと登場しましたスペシャルゲスト!
やはり御堂筋パレードといえばサンバです。
派手派手に踊るわよぉ~♪
みんなでね・・・




