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49 ギルドマスターは孤高です

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます。


末尾に付けました資料整理の 「おまけ」 もご一緒にお楽しみ下さいませ。

 金髪の美少年を見た瞬間にわたしは絶望的になったんだけど、クロエも思ったほど余裕じゃなかったみたい。

 狭い頂の、足場の悪い岩場にはクロエの他に、何人かのプレイヤーが集まっていた。


「あー……クロエ……」

「グレイさぁ~ん!」


 前にも言ったけれど、この金髪の美少年は笑顔でズドンと撃ってくるのよ。

 笑顔でわたしに声を掛けつつ、一番近いプレイヤー三人を超近距離射撃ラピッドマスターで瞬時に撃ち落とす。

 ラピッドマスターは三連射だけれど、他のスキルに切り替えればさらなる連射が可能。

 銃口の向きが変わるのを見た瞬間、わたしは詠唱をしつつすぐさま近くの木の陰に身を隠す。

 案の定、直後に、わたしが立っていた岩に銃弾が撃ち込まれる。


 ちょっとクロエ!


 ほんと、容赦も加減もないんだから。

 でもわたしだって詠唱はすでに終えている。


「業火」


 わたしは発動する範囲魔法業火の焔を、木の陰からちらりと見る。

 撃ち漏らしを片付けようと思ってのことだったんだけど、この時になってクロエの威嚇の真意に気づく。

 クロエとわたしの他には二人、装備から推測しておそらく魔法使いと剣士(アタッカー)が一人ずつ生き残っていたんだけど、魔法使いはクロエに撃ち抜かれ、剣士(アタッカー)はわたしの焔獄で溶かされる。

 でも……そう、クロエは残ったのよ。

 つまりあの威嚇射撃でわたしを下がらせ、ギリギリ自分を業火の範囲から外したの。

 いつもそばでわたしの業火を見ているクロエだったから出来ることね、凄いわ。

 あの数のプレイヤーに狙われちゃ、さすがのクロエも落とされるのは時間の問題。

 そこに強力な範囲魔法を持つわたしの登場で……つまりわたしを利用したってことね、自分の窮地を脱するために。

 さすがというか、なんというか……頭よすぎるでしょ、クロエってば。

 でもね、どうして威嚇射撃なんかでわたしを下がらせたのかと思えば……自分が下がればいいだけのことだもんね。

 でもそれをしなかったクロエには片足がなかった。

 つまり部位欠損。

 わたしが到着する前に、すでに剣士(アタッカー)の一人に斬り落とされていたみたい。

 たぶん超近距離射撃ラピッドマスターで、先に撃ち落とされた三人のプレイヤーの誰かに。

 片足で、踏ん張りのきかないバランスの悪さでも外さない命中率って、ほんとなんなのよ?

 よりによって、どうしてこんな性格の悪いクロエがそんな神業を持ってるのよ?

 もちろんわたしだって、業火の範囲から漏れる生存者がある可能性は想定内。

 だからすぐに確認して剣士(アタッカー)を一人、焔獄で溶かしたんだけど……このままクロエも落とすべき?

 さっきトール君を怒っておいてなんだけど、もう、クロエは落ちる。

 たぶんセブン君との撃ち合いで、すでにかなりの被弾があったんだと思う。

 二人は同じレベル48。

 わたしは見たことはないけれど、たぶんステータスにも差違はほとんどないと思う。

 そしてステータスDEX特化装備【鷹の目】を持った銃士(ガンナー)同士、まともに撃ち合えばどちらも無傷で済むはずがない。

 その直後に大量のHPドレインを起こす部位欠損。

 今も欠けたクロエの右足はわずかながらもHPドレイン現象を続けているから、たぶん、もう保たない。

 ここで落ちる前にとどめを刺せばわたしのポイントになる。

 でも、わたしはとどめを刺さなかった。


「……やっぱりね」


 溜息を一つ吐いてから、クロエはまるで独り言のように呟く。


「グレイさんはとどめを刺さないと思ったんだ」

「どうせ優柔不断よ、わたしは」

「そういう意味じゃないけどね」


 銃を下ろしたクロエは戦意を喪失したように銃口を下に向け、背にしていた大きな岩を頼りにゆっくりとその場に座り込む。

 右足を太もも辺りから失っているからかなりバランスが悪く、本当にゆっくりと、背を岩に滑らせるように座り込む。


「でも、これで僕は誰のポイントにもならない」

「そうね、あんたらしいわ」


 ほんと、天邪鬼で矜持(プライド)の高いクロエらしい。

 落とさない代りに見届けてあげるわよ。


「ありがとう、グレイさん。

 僕は先に休憩するけど、最後まで落ちないでね」

「あの三人に会わない限り、頑張るわ」

「二人でしょ、なに言ってるんだか」

「二人って……?」


information クロエ が撃破されました


 ……落ちちゃった。

 話の途中で落ちないでよ、まったく。

 さて……ということは、厄介な銃士(ガンナー)は二人とも落ちた。

 あと厄介なのはあの三人なんだけど……。


『ごめんグレイさん、次は俺が落ちるわ』


 え? どうしたのカニやん?

 なんか、声がすっかり悲壮感に溢れてるんだけど?

 ついでに疲労困憊っぽい。


『これでも頑張ったんだから褒めてくれよな!』

「相手、誰?」

『変態。

 起動……』


 あ~……ノーキーさんね。

 確かにカニやんに分が悪い。

 それでも詠唱を続けてるってことは、ノーキーさんを削ってるの?

 一瞬で落とされてないって、遭遇のシチュエーションがわからないんだけど、でも凄いんじゃない?

 このあともいくつかの詠唱が聞こえてきたんだけど、その詠唱が途中で切れた数秒後にインフォメーションが出た。


information カニやん が撃破されました


「落ちちゃったか……」


 あともう少しでゲーム終了ってところで落ちちゃうなんて、カニやんも運が悪い。

 でも凄いのよ、暫定一位だって。

 直後に数人がバタバタと落ちて……たぶんノーキーさんにぶった斬られまくったんだと思うんだけど、残る生存者が四人になっても順位は変わらず。

 ということは、カニやんの10位以内入賞は確実ってことね。

 範囲攻撃を持たない遠距離攻撃型の銃士(ガンナー)には少し厳しかったらしく、クロエでも暫定三位。

 撃ち勝ったとはいえ、順位ではセブン君には負けちゃったみたい。

 つまりセブン君が暫定二位。

 この三人の10位以内入賞は確定したわけなんだけど、問題は残った四人よね。

 あ、もちろん一人はわたしなんだけど、あと三人は誰かなんて言わなくても誰にだってわかるのよ。

 そう、あの三人。

 何気なくウィンドウで位置情報を見てみれば……なによ、これ?

 物凄い速さで三つの点……つまりわたし以外の三人が動いてるじゃない。

 どう見たって動かない点がわたしって見越して、目指して向かってきてるじゃない!


 ちょっとー!


 ここじゃ足場も悪いし見通しがよすぎる。

 あの連中は足場の悪さなんて全く気にしないんだけど、それこそ多少の障害物もものともせず、諸共にぶった斬っちゃうような連中なんだけど、ここじゃあんまりにも見晴らしがよすぎるのよ。

 わたしに……あの切り立った崖を飛び降りる勇気があれば……ううん、勇気なんてなくてもそうするべきだったのはわかってるの。

 三人がここを、わたしを目指してきているのだから反対側に下りるべきだったんだけど……あの高さはちょーっとわたしには無理だった……ごめん。


 ほんと無理


 だからといってあんな見晴らしのいい岩山のてっぺんじゃ剣の振り回し放題……は勘弁して欲しかったから岩山を急いで下りたんだけど、ちょっと……いや、だいぶんかな?

 うん、つまり遅かった。

 木と木のあいだや葉陰に三人の姿が見えた瞬間、思わず隠れちゃったわ。

 もちろん反射的によ。

 だってあの三人が揃ってる前に出るって、どんだけ怖いと思う?

 見れば三人とも、普段はしていない額当てやフェイスガードまでしてフル装備とか、怖すぎる。

 隠れた木の陰から出るに出られず、窒息しそうなほど重苦しい空気に固まってたら……


「グレイ、無事か?」


 うん、やっぱりバレてるわね。

 クロウにバレてるんだから、当然他の二人にもバレてるんだろうけど……やっぱり出るのは怖い……

登場人物:ミンムー / 男性型・剣士 /


ギルド 【素敵なお茶会】 のメンバー。 通称 ムーさん

片手剣を愛用している脳筋オッサンコンビの片割れで、ギルドのお笑い担当。

相方の柴さんと、グレイを 「女王」 と呼び、事あるごとに首を刎ねられる心配をしている。

そのため 【素敵なお茶会】 はヘマをするとギルドをクビになるという噂が立ってしまった。

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