48 ギルドマスターは一難去ってまた一難です
pv&ブクマ&評価、ありがとうございます。
今回も末尾に資料整理の 「おまけ」 がございます。
是非そちらもお楽しみ下さい。
information ココちゃん が撃破されました
ココちゃんは一人も落とせず生存点があるだけだから、必然的にポイントは一桁。
生存点だけで二桁を取ろう思ったら、えっと……10p取ろうと思ったら五〇分?
ほぼ一時間粘らなきゃならないんだけど……ココちゃんは辛うじて最下位を避けられるかどうかって感じの際どいところね。
出た暫定順位も、ほぼ0点の最下位が数人いるけれど、これは……はぁ~……思わず溜息が出ちゃう。
『ココちゃん、落ちたな』
やっぱり溜息混じりのカニやん。
彼なりに心配はしてたんだと思う。
声に冷やかし感は全然なくて、わかっていたこととはいえ、やっぱりちょっと残念そうな感じ。
でもクロエはほんと、あっさりしてる。
『ま、予想通りかな?
まだ暫定順位だけど、このままほぼ最下位じゃない?』
多分そう思う。
他のプレイヤーを落とせなくても、ココちゃんより五分以上あとに落ちれば生存点で一点以上上回ることになるから、当然順位も上になる。
そしてこの五分のあいだ、死亡インフォメーションは上がらなかった。
う~ん、これは決定的ね。
諦めたわたしの前に、銃を構えたプレイヤーが現われる。
向こうも予想外だったらしく、出くわした瞬間、お互いにびくりと背を逸らせてしまった。
「グ、ラヴィティ!」
この銃士がラピッドマスターを取得しているかどうかはわからないけれど、杖で殴るくらいじゃどうにもならないと思う。
でも距離がお互いに近すぎて、特に魔法使いは詠唱が間に合わない。
喉を詰まらせながらも魔法陣の展開時間を必要としないスキルで一瞬の足止めをして、直後に焔獄で仕留める。
ホッと息を吐いたのも束の間、近くの茂みをかき分けたわたしはギクリとする。
数人のプレイヤーに取り囲まれたトール君を見つけちゃったのよね。
だから離して欲しかったのに……
バラバラにするならもっと遠くに離してよ、運営!
なんでこんな近くにトール君がいるのよ?
これじゃ下手したらクロウも近くにいるかもしれないじゃない。
まだそんなにポイントとってないから落とされたくないんだけど……うん、今はクロウじゃなくてこの状況よね。
クロウは……出会ってから考えましょう。
考えたところで対策なんてないんだけれど、とりあえず目の前の状況よね。
プレイヤーはトール君を含めて五人。
別にトール君一人を他の全員で狙うって感じじゃなくて、たぶん、最初に偶然出会った二人か三人が小競り合っているところに、残りの二人か三人が寄ってきちゃったって感じ?
ただ装備の感じとか……クロウが使っていないお古の鎧をトール君に貸してあげた理由が、この時になってわたしにもわかったんだけど、それでもやっぱり装備とか、空気っていうか、雰囲気っていうか……慣れていない感じ?
そういう雰囲気みたいなものがトール君にはあって、他のプレイヤーにもわかったんだと思う。
それで狙われるような感じになっていたところにわたしが茂みから出てきたわけなんだけど、瞬時に全員がこっちを見るって……ちょっと怖いシンクロ!
「……グレイさん?」
「ハ~イ、トール君」
「灰色の魔女?!」
「こいつら 【素敵なお茶会】 の?!」
やっぱり何人かはすぐにわたしたちのことがわかったみたい。
参加条件がレベル20以上だから、初心者ってことはないから当然といえば当然か。
でもね、なにを思ったのかトール君が、大斧を振り上げてわたしに向かってきたの。
なにを思ったのか……ううん、なんとなくなにを考えたのかはわかった。
怒るわよ!
瞬時にトール君の行動理由を察したわたしは……さすがに大斧が相手じゃ分が悪い。
そう思ったから素早く身を地面すれすれまで屈めて大斧をかわすと、思いっきり杖を振ってトール君の足を払う。
元々わたしに当てるつもりなんてないコースよね、その振り上げ方は。
「スパーク!」
バランスを崩して斧に振り回されそうになるトール君を狙い、背後から斬りかかる見知らぬ剣士をすかさずノックバックさせる。
そうやってほぼ全員を一カ所に固めた状態で発動するのはもちろん……
「起動……業火」
でもね、番狂わせっていうのはいるのよね。
業火の焔が消えたあとに一人だけ、落ちていないプレイヤーが残っていた。
装備からじゃ見当はつかないんだけれど、業火の一撃で落ちないってことはやっぱりレベル三〇台くらいかな。
ひょっとしたら四〇を越えてるレアプレイヤーかもしれない。
それでもかなりの量のHPドレインがあったから、もう保たないと思う。
「これが灰色の魔女か、さすが」
その名前、あんまり好きじゃないのよね。
だから褒められても嬉しさ半減。
状況が状況だから、半減の半減くらいかしら?
「せっかく耐えてもらったけど、とどめを刺させてもらうわ」
「もう保たないもんな。
あ、俺はJB。
よかったら覚えててよ」
「縁があればドームで会いましょ。
起動……焔獄」
これで他のプレイヤーは片付いたんだけど、問題はトール君。
「怒るわよ!」
『グレイさん?』
『なになに?』
「ちょっと黙ってて、こっちの話」
『こっちって、トール君?
インフォ出なかったけど、落とさなかったの?』
「いいから黙ってて」
煩いギルドのオッサンどもを強引に黙らせたわたしは、呆気にとられちゃってるトール君を睨みつける。
こういう時、もう少し身長が欲しいってつくづく思うのよね。
この身長だと迫力がないっていうか、威厳が足りないっていうか。
改めてトール君を見上げて……トール君も背が高いのね……落ち込みそう……
「わざとわたしに落とされようとしたでしょう!」
「いえ、でも……」
トール君は図星を指されて困った顔をするけれど、それでもなんとか誤魔化そうとして言葉が続かない。
どう言い訳しようと思ったのかは知らないし、そんなもの知りたくもないし、聞く耳もないわよ。
だから考える間もあげない。
「どうせ落とされるんだったらわたしのポイントに?
冗談じゃないわよ!
そんなお情け、必要ないんだけど?」
もしあのまま乱戦を続けるなら、わたしだって容赦なくあの人たちと一緒に落としてあげた。
でもトール君は、たぶん、他のプレイヤーのポイントになるくらいなら……って考えたんだと思う。
だから躊躇なく他のプレイヤーに背中を向けた。
すでにHPはかなり削られてるんだと思う。
さっき業火から生き残ったプレイヤー……JBっていってたっけ?
そこそこ強そうだったもんね。
あのまま乱戦を続ければ、JBに落とされてたかもしれない。
他のプレイヤーもそうだったんだと思う。
でもポイントはHPを削った量じゃなくて、落とすことが条件。
だからってわたしにとどめを刺させるって、どういうつもり?
生憎だけど 【素敵なお茶会】 はそんなくだらない小細工はしないから。
それこそJBがトール君を落としたら、わたしが仇をとってあげるじゃない。
「……そうですね、グレイさんなら」
「気を回しすぎ。
いい? トール君は今から向こうに行って。
わたしははこっちに行くから。
もしギルドのメンバーに会うことがあっても、余計なことは考えないこと」
それこそぶった斬ってあげなさい。
そう言ってわたしはトール君と正反対の方向に別れたんだけど……ま、背中から斬りかかってくるなんてしないわよね。
ほんと、真面目すぎるんだから。
『グレイ』
珍しくクロウの声がする。
まさか、実は近くで見てましたなんてことはないでしょうね?
そんな恐ろしいこと、言わないでよ。
『場所?
そっちの場所はわからない』
そうよね、うん。
今のところわたしにもクロウの場所はわからないもの。
でも……もしもね、わかっても絶対来ないで。
まだそれほどポイント稼いでないし、落とされたくないから。
わたし、10位以内狙ってるから。
『グレイさんって、時々悪魔だよな』
『自分の欲望に忠実なだけでしょ』
またカニやんとクロエが意味のわからないことをいってるんだけど、とりあえずさっきから煩い。
他のメンバーはともかく、とりあえずこの二人だけは先に落としに行きたい気分だわ。
そろそろゲーム開始から一時間が経とうという頃、予想通りインフォメーションの上がるペースが遅くなってきた。
生存プレイヤーが減ってきたんだと思う。
【素敵なお茶会】のメンバーも、脳筋オッサンコンビとトール君が落ちて、そのあと銃士のぽぽ、くるくるが連続で落ちた。
取得ポイントや暫定順位はともかく、脳筋コンビより生存時間の長かったトール君は大快挙よね。
ついでに剣士より長く生存した銃士の二人も。
あとで聞いたら脳筋コンビは、揃いも揃ってうっかり銃士に撃たれたんだって。
もちろん射線は切って戦っていたつもりだったのに、つい夢中になって対剣士戦をやっていたら……二人揃ってなにやってるんだか。
でも生存点は他の三人に比べて低いけれど、倒したプレイヤーの数が多くて暫定順位は結構いいところに付けている。
うん、このまま残れれば10位以内に入れるんじゃない?
『よし、セブンに勝った!』
不意にクロエの声がした。
セブン君に撃ち勝ったってどういう意味?
information ラッキーセブン が撃破されました
……あ、セブン君が落ちた。
これはつまりクロエがセブン君を落としたってことなんだろうけれど……わたしは手元で開いたウィンドウを見て渋い顔をする。
だって、ねぇ……どんな距離で撃ち合ってたのよ、この二人。
『これ、ダメだわ。
途中から位置情報出すとか、やめろよな』
カニやんがなにを言っているのかというと、生存プレイヤーの人数が三十人を切った時、運営から音声インフォメーションが入ったの。
『これより生存プレイヤーの位置情報がマップに表示されます』
人数が減ると必然的に遭遇が減る。
そのままだとゲームが膠着してしまうから、回避する方法として生存する全プレイヤーの位置情報を公開したんだと思う。
でも、おかげで忙しいわ。
そんな中でセブン君と撃ち合うって、優雅よねクロエ……と思ったんだけど、なにげなく上った岩山の頂で遭遇しちゃった。
もちろんクロエとね。
だって位置情報って、プレイヤー名までは出ないんだもん!
登場人物:しば漬け / 男性型・剣士 /
ギルド 【素敵なお茶会】 のメンバー。 通称 柴さん
片手剣を愛用する脳筋オッサンコンビの片割れで、ギルドのお笑い担当。
難しいことを考えるのが苦手な火力ごり押しの攻めだが、非常に高い回避能力と超高性能危機管理センサーを持ち合わせており、グレイの誤爆(故意?)を何度となくかわしてきた。
カニやんとは特に仲がよく、いつも 「ヘボ火力」 と憎まれ口を叩いている。




