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Phase 3-04:仕様です

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

それは、警告音から始まった。


ピッ――


ピッ――


ムゲン・システムズ臨時管制室。

壁一面のモニターに、軌道データと数式と意味不明なベクトルが踊っている。


私はコーヒーを置き、画面を睨んだ。


「……ザルグさん」


「なんだ」


「その“推進力グラフ”、右肩上がりすぎません?」


ザルグは端末から目を離さず答えた。


「正常だ」


「正常の定義を確認したいんですが」


「理論値どおりだ」


嫌な予感しかしない。


モニター中央、

〈EDT-01 / Lorentz Thrust〉

という表示の下で、数値が加速していく。


「電流、安定」


「テザー張力、許容範囲」


「磁場勾配、想定内」


ザルグの声は淡々としている。


「見ろ。地磁気と踊っている」


「……“踊る”って表現、やめてもらえます?」


私は唾を飲み込んだ。


宇宙空間。

巨大な地球の周囲で、一本の細い導線が、

見えない力に引かれて滑るように進んでいる。


ロケットの噴煙はない。

爆発もない。

あるのは、静かな加速だけ。


「……本当に、燃料ゼロですね」


私が呟く。


「当然だ」


ザルグは誇らしげだった。


「重力に逆らっていない」


「磁場と“協調”している」


「これが、正しい推進だ」


その瞬間だった。


私のポケットで、スマホが震えた。


ブブッ――


「……嫌なタイミングだな」


画面を見る。


〈不在着信:総務〉

〈不在着信:国交省〉

〈不在着信:内閣危機管理〉


「……ザルグさん」


「今度はなんだ」


「地上が、騒がしいです」


私は通話ボタンを押した。


「こちらムゲン・システムズ、ミナトです」


『ミナトさん!? 大変です!!』


総務の声が裏返っている。


『社員のスマホが、全員おかしいんです!!』


「……どう、おかしいんです?」


『地図アプリが、全滅です!

 現在地が、北海道だったり!

 シベリアだったり!!』


私は、ゆっくり自分のスマホを見た。


現在地:シベリア連邦管区


「……ああ」


嫌な納得が、喉まで上がってきた。


「ザルグさん」


「地磁気、どのくらい揺らしてます?」


ザルグはモニターを一瞥した。


「局所的に、数%だ」


「……数%?」


「誤差だ」


「人類の測位システムにとっては致命傷なんですが!?」


その時、別の回線が割り込んできた。


『こちら交通管制!

 都内でタクシーが海に向かっています!!』


『UberEatsが、隣県に配達してます!!』


『ドローンが、山に突っ込みました!!』


私は頭を抱えた。


「ザルグさん!!

 GPSが死んでます!!」


「死んでいない」


ザルグは冷静だ。


「狂っているだけだ」


「それを死んでるって言うんですよ!!」


ザルグは不思議そうな顔をした。


「なぜそんなに慌てる?」


「位置情報なんて、

 空と地形を見れば分かるだろう」


「人間はコウモリじゃありません!!」


私は叫んだ。


「現代社会は、GPS前提で動いてるんです!!」


ザルグは少し考えた。


「……なるほど」


一瞬、理解してくれたかと思った。


「つまり、そちらの設計が脆弱だったということだな」


「違います!!」


私は机を叩いた。


「あなたが、地磁気をいじったんです!!」


ザルグは肩をすくめた。


「仕様だ」


「……今、何て?」


「仕様だ」


ザルグは堂々と言った。


「地磁気を使えば、地磁気が揺れる」


「揺れれば、磁気を基準にしている装置は誤差を出す」


「論理的だろ?」


「論理的すぎて、現場が死にます!!」


その時、モニターの一角が赤く点滅した。


〈ALERT:IONOSPHERE DISTURBANCE〉


「……次は何です?」


私が震える声で聞く。


ザルグは画面を見て、満足そうに頷いた。


「いい兆候だ」


「磁力線に沿って、プラズマが降り始めている」


「……それって」


「オーロラだ」


私は、嫌な未来を確信した。


(……あ、これ)


(絶対、SNSでバズるやつだ……)


その夜。


北の空が、赤く燃えた。


人々は空を見上げ、

「キレイ」「幻想的」「奇跡だ」と騒いだ。


GPSが狂っていることも知らずに。


ムゲン・システムズの管制室で、

私は静かに椅子にもたれた。


「……ザルグさん」


「なんだ」


「これ、後で全部、私が説明するんですよね」


「当然だ」


ザルグは画面から目を離さない。


「俺は物理を説明した」


「社会の翻訳は、お前の仕事だ」


私は深く、深く息を吐いた。


(……“仕様です”)


(この言葉が、

 こんなに重いとは思わなかった……)


モニターの中で、

テザーは静かに、完璧に、泳ぎ続けていた。

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