表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/84

Phase 3-03:紐で泳ぐな

※この作品は生成AIを使用して作成されたものです

会議室は、まだザルグの言葉の余韻でざわついていた。


「テザー……?」


「紐、って言ったか?」


「冗談だろ……?」


誰もが“比喩”だと思いたがっている。

私は知っている。

ザルグは比喩で話さない。


局長が咳払いをして、場を立て直そうとした。


「……仮に、だ」


「仮にその“テザー”とやらが存在するとしても」


彼は理性的な声を装って言った。


「宇宙エレベーターの話なら、何度も検討されている。

素材強度、振動、コスト、リスク……どれも未解決だ」


周囲がうなずく。

この辺りは“安全な反論”だ。


「宇宙エレベーターじゃない」


ザルグは即答した。


「え?」


「だから違うと言っている」


ザルグはホワイトボードに、縦線を一本引いた。


「お前らは“吊る”発想から離れられていない」


彼は線の横に、大きく×を書いた。


「重力に逆らって、下から上へ。

支える、耐える、引っ張る」


そして、線を横に倒した。


「それがダメなんだ」


私は嫌な予感がして、口を挟んだ。


「えっと……ザルグさん、“泳ぐ”って言ってましたよね」


「そうだ」


ザルグはうなずいた。


「泳ぐ」


彼はホワイトボードに、新しい図を描き始めた。


地球。

その周囲を取り巻く、ゆるやかな曲線。


「地球は巨大な磁石だ」


「地磁気が、空間に張り巡らされている」


彼は磁力線を描きながら言う。


「その中に、長い導電性の紐を垂らす」


誰かが思わず言った。


「……垂らす?」


「そうだ」


ザルグは平然としている。


「衛星から、数キロから数十キロの電線をな」


会議室がざわついた。


「ちょっと待て!」


重工メーカーの役員が立ち上がった。


「宇宙でそんなものを振り回したら――」


「振り回さない」


ザルグは首を振る。


「横切るんだ」


彼はペンで、磁力線を横切る矢印を書いた。


「フレミングの左手の法則」


「電流、磁場、力」


ザルグは三本の指を立てる。


「導電性テザーに電流を流す」


「すると、磁場との相互作用で――」


ペン先を強く押しつけた。


「ローレンツ力が発生する」


会議室が静かになった。


理屈は、分かる。

悔しいほど正しい。


「つまり」


ザルグは淡々と続ける。


「地球の磁場を固定子ステーターとして使う」


「テザー付き衛星が回転子ローターだ」


「巨大なモーターを、惑星サイズで使う」


誰かが小さく息を呑んだ。


「燃料は?」


局長が聞いた。


「要らん」


「……は?」


「要らんと言った」


ザルグはきっぱり言った。


「電気があればいい」


私は思わず呟いた。


「……電気なら、ありますね」


「月と砂丘からな」


ザルグは当然のように返す。


「推進にも使えるし、逆に発電もできる」


「エネルギーは循環する」


「重力に逆らう必要がない」


役員が額を押さえた。


「……理論は分かる」


「だが、それは制御できるのか?」


「そんな長い紐が、他の衛星や――」


「デブリだろ」


ザルグが遮った。


「金属デブリは磁場で弾く」


「プラスチックは?」


「計算で避ける」


即答だった。


「……計算で?」


「俺のセンサーなら可能だ」


私は思わずツッコんだ。


「それ、一般化できないですよね?」


「だから俺がやる」


ザルグは胸を張った。


会議室がざわめく。


「成功率は?」


誰かが聞いた。


「99%」


「ロケットは?」


「90%台」


「……」


「比べるまでもない」


局長は、もう疲れた顔をしていた。


「……では」


「試験的に、だ」


「一機だけでも――」


「もうある」


ザルグが言った。


会議室が止まった。


「……え?」


「昨日の夜に打ち上げた」


ザルグは何でもないことのように言う。


「今、軌道上で展開中だ」


私は心の中で叫んだ。


(聞いてない!!)


(というか、止めてない!!)


局長の声が裏返る。


「き、昨日!? 承認は!?」


「物理法則は承認を待たない」


ザルグは真顔だった。


「結果はもう出る」


彼は静かに言った。


「お前らは、見届ける側だ」


私は、会議室の天井を見上げた。


(……ああ、これ)


(次、絶対ニュースになる……)


窓の外には、青い地球が広がっている。


その周囲で今まさに、

一本の“紐”が、泳ぎ始めていることを。


誰も、まだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ