召喚陣
扉の中に入るとそこはかなり広い空間が広がっていた。
昼間のように明るい空間に巨大な柱がいくつも円を描くように立っている。
私たちが全員が中に入ったところで、扉はぴたりと閉まった。
思わず後ろを振り向くが、どういう仕組みなのか、扉のあった場所には魔法陣が一つ描かれているだけで、扉は壁と一体化していた。
ケホッ ケホッ
吸い込んだ空気のエーテルの密度が高く思わず咳きこむ。胸がどきどきするくらい体内の魔力が暴れるように巡る。
「アルキオーネ?」
兄が私の背をさすった。
頭がくらくらする──まるで乗り物に酔ったかのように気持ち悪くなってきた。
「ダビー」
リオンさまが鋭い声を上げ、兄が反射的に剣を抜き、飛来した何かを切り払う。
「お客さんかよ」
兄が呟く。
吐き気をこらえながら辺りを見ると、私たちはいつの間にか囲まれていた。
相手は三十人くらい。
宮殿で私を攫ったやつらだ。真っ黒のローブを着ている。
「ふふふ。あなたなら自らここに来てくれると思っていましたよ」
柱の陰から現れたのは、ローバー・ダリン司祭だ。
彼の手には豆粒ほどの青く輝く石があった。
私が龍にみせてもらったシーマ司祭から取り出したものより随分と小さい。使用して小さくなったのか、それとも別のものなのか。
「彼女は渡さない。ダリン司祭。君の罪状は既に明らかだ。おとなしく縛につけ」
「それはそれは」
ダリン司祭は口の端を僅かに上げた。
「殿下は確かにお強い。だがこの空間で魔術を使われるのはおやめになられた方がいいでしょう」
くすりと、ダリン司祭は笑った。
「何?」
「お感じになられませんか? ここは龍の間。他の場所よりもはるかにエーテル濃度が濃いのです。ちょっとした魔術でも暴発します。人間の器はもろい。ここで魔術を使えば、おそらく体は耐えられませんよ。現にアルキオーネ嬢は何もしていないこの状況で既に魔力酔いをしている」
ダリン司祭は得意そうだ。
悔しいけれど、頭痛までしてきた私は立っているのでやっとだ。
「私が魔術にだけ長けているといいたいわけだ」
リオンさまは口の端をわずかに上げる。
「いいえ。殿下や殿下の護衛騎士、それからアルマク侯爵家令息がいかに強いとはいえ、多勢に無勢といいたいだけですよ」
くすくすとダリン司祭は笑う。
「魔力を封じられたアルキオーネ嬢は言ってしまえば、お荷物でしかないでしょう?」
それはその通りだ。
「リオンさま、アルキオーネを頼みます」
兄はロイスナートさんとともに前に出て、突進してきた黒いフードの者たちを切り結んでいく。知らなかったけれど、二人とも圧倒的に強い。
「すまない、アルキオーネ嬢」
リオンさまは私を肩に担ぎ上げ、片手で剣を抜く。
気持ち悪いうえに、荷物のように抱き上げられたので体調的には最悪なのだけれど、ここで文句とか言っている場合ではない。
というか、私を担いだ状態で、敵をなぎ倒していくリオンさまって、すごい。よく剣の腕はレジナルド殿下にはかなわないって、リオンさま自身がおっしゃっていたけれど、この状態で戦えるって既に鬼神レベルな気がする。
「さて、お客さんの数も減ってきたようだけれど、どうする気だよ、ダリン司祭?」
いつの間にか囲んでいる人数が三分の一より少なくなっていた。
「ふふふ。そろそろですかね」
ダリン司祭は慌てた様子はない。
その時、カチリという音がどこからかした。すると、柱という柱が光を放ちはじめ、足元から巨大な力の波が昇ってくる。
「いやあぁっ!」
リオンさまに抱えられたままの状態で、私は全身が沸騰するような感覚につつまれ、思わず叫ぶ。
「──何を?」
「あなた方は何も知らない。巫女は何も供える必要はなく、この部屋に存在すればいい。私はただ時がみつるのを待っていただけですよ」
ダリン司祭は哄笑する。
次の瞬間。雷鳴が響き、辺りに龍の気が満ちた。
最初に書いていた話が気に入らなくて、今日の19時半から書きなおしました。




