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第93話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】再び脱出!


 部屋から出ると、いかにその場所がこだわりを持って造られていたのか、即座に理解出来た。


 何処かの王族の部屋かと見紛うほど、豪華な(つがい)の居室。そこから一歩出ると、辺りは途端に溶岩石でゴツゴツしたダンジョンに様変わりする。


 ファルークなりに、(つがい)に心を尽くしてはいるのだ。


「ただ、需要がない溺愛執着は、迷惑行為だってことを察してほしいわ!」


『雑なファルークにそこまで要求するのは無理だと思うわー』


 レーナが、迷宮の通路を駆けながらぼやけば、隣を走るエドヴィンの肩の上でプチドラが、キャラキャラと笑う。


 ゲームでは、おおらかで懐の深いキャラクターの印象だった。だが現実となった今では、人の気持ちに無頓着で自分勝手な価値観を押し付ける、はた迷惑な存在に成り下がっている。


「乙女ゲームのフィルターで、美化されてただけなのね……」


 はぁ、とレーナは溜め息を吐くのだった。






 その後の脱出ルートは、再び玲於奈(れおな)のゲーム知識が発揮され、難なく溶岩洞の出口を潜ることが出来た。


 ―――が。


 ばしゃんっ


 飛び出した先には、今度こそ無いだろうと誰もが信じていた水の塊が存在していた。


「ぅぷ・ぶぶぶぶっぐぶぅ……」


 ごぽごぽと口から泡を吐き出しながら藻掻くレーナの視界に映るのは、揺れる水面を通して歪んで映る、真っ青な空と黒い岩肌の広がる火山の景色。そして、溺れかけるレーナに無感情な視線を向ける水の精霊王ヴォディムだ。


 数刻前の再現とばかりに、ヴォディムとゾイヤが巨大水球と共に溶岩洞出口で待ち構えていたらしい。


 悉く水球に飛び込んでしまったレーナらが、水中から脱出しようと足掻くうちに、彼女らを追って来たであろうファルークが姿を表した。



『なんで逃げちまうんだよぉぉぉ!! 大事にするって言っただろ!? ワレの(つがい)なんだろぉぉ!?』


 人化したファルークが、必死の形相で追い付いたところで、ようやくレーナらは水球の拘束から解放され、地面と空気に触れることが出来た。水の精霊王ヴォディムが何故、火龍ファルークを助ける真似をするのか疑問だが、再び監禁に逆戻りされかねないこの状況では、悠長に考えてはいられない。


「まずっ……言いたいのは! あなたの、やってるのはっ……拉致監禁っていう、立派な犯罪なんだからね!!」


 酸欠にゼイゼイと喘ぎながら、何とか言い切ったレーナだ。火龍だとか、とんでもない力の持ち主だとか云う恐れは、息苦しさの前に何処かへ吹き飛んでいる。空気が足りず、思考能力が低下しているのかもしれないが、レーナとしては言いたいことを言わせてくれた不調に感謝したいほどだった。


『ワレの(つがい)だろぉぉ!?』


「そんなもんになった覚えはねぇ!! 勝手に閉じ込められたら、誰だって逃げるぞ! 当たり前だろ!!」


 レーナよりも先に完全に立ち直ったアルルクが、きっぱりとした声で噛み付く。


『ワレの力を持っておきながら、何身勝手なこと言ってんだよぉぉ!?』


 感情の高ぶったファルークが叫ぶと、彼の胸のあたりが超高温の熱を帯びた溶岩の朱色に染まり、更には全身の節々がチラチラと炎の朱赤を灯して熱を発し始めた。

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