第92話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】ドキドキ共同作業
「レーナが言うんなら間違いないな! やってみようぜ!」
勢い良く、レーナとエドヴィンの間に赤い頭が割り込んで来た。「おい!」とエドヴィンが声を荒げるが、その肩の上ではプチドラが『ほーらね』と笑う。
「で、どーしたら良いんだっ」
キラキラと瞳を輝かせるアルルクは、レーナの命令を今か今かと待ち構える中型犬さながらだ。
「うん、ギアの模様。ギアは噛み合って動くもので、離れた位置に2つのギアの模様があるのよ。そこにライラの長い爪への進化が絡んでくるはずだから――」
「なるほど! それを離れた位置の孔に、同時に差し込む必要があったってことか!」
今度はエドヴィンが、アルルクを押し出す勢いで肩をぐっと寄せて来る。だが、押し出されて尻餅をついたのはレーナだ。
「もぉ! 2人とも落ち着きなさいよっ!! こっからが重要なんだから。2つのギアを動かすために孔の中を押すか、回すかしなきゃいけないの。両手の爪をあんなに長く進化させたんだから、同時に作動させなきゃいけなかったのよ」
レーナはどこか深刻な面持ちだ。解決策が見付かったというのに。
「けど、その長いモノが無いわ」
それが、喜びきれない理由だった。
けれど、他の面々はキョトンとしつつレーナを見ている。
「え? 細長ーーーいものが無いのよ?」
分かってる? と、再度問い掛けると、アルルクとエドヴィンは、互いに鋭く視線を交わしあってから、レーナに向かってにこりと笑んでみせる。
「オレが いっぱい材料用意したから 削れば良いんじゃね? 削れば何か つくれんじゃねーの?」
アルルクがひょいと持ち上げたのは、彼が破壊した家具の残骸だ。腰に佩いたままの剣をペシペシと叩いてみせる。
「ご先祖様と私の力も合わせれば、防御魔法で硬質に変化させた植物を操って、長いものなら作れるぞ?」
エドヴィンの言葉に、長く踊る根で攻撃を仕掛けて来た精霊姫の姿を思い出したレーナだ。
『森でやるより、威力は落ちるけどね。攻撃じゃなくって、その穴の中を押すようなものなら全然ヨユーよ』
ふふんと得意げに宣言したプチドラの言う通り、彼女はあっさりと髪の一部を細長く蔓状に変化させた。その髪にエドヴィンが手を翳すと、細い物体は強度を増したのか、硬質な輝きを放ち始める。
アルルクも、手近な金属を削って歪だが長い棒を作り出していた。孔に入れるには太すぎるし、強度にも不安があったレーナは、「ちょっと貸して」と受け取ると、素知らぬ顔でコッソリと、堅く細くなるように修繕をかける。
それぞれの自慢の得物を手にしたエドヴィンとアルルクが、扉の左右に分かれて立つ。
「わたしが合図するから、同時に押し込んでくれる?」
声を掛けると、なぜか2人は互いに睨み合っている。だが、レーナが「せーの!」と掛け声をあげれば、2人は意外に息の合うところを見せて、タイミングよくそれぞれの孔へ棒が差し込まれた。
かち
一同が、固唾を呑んで見守る中、微かな音が静まり返った室内にそっと落ちる。
その音と同じく、巨大な物が動いたとは思えないほどの静かさで、両扉が外へ向かって大きく開いた。




