第91話 【攻略対象 水の精霊王と水龍】ワクワク謎解きの「カギ」は、歪な花
歪な花。
そうプチドラに評された、角ばった花弁がひとつながりに表された小さなレリーフ。
その形に玲於奈は見覚えがあった。
「これ、もしかして、ギア!?」
思わず声を上げたレーナは、両目を大きく見開いた。もしそうなら、豪華な扉の植物装飾の脇に、ひっそりと、けれど見れば分かるように刻まれたこの意匠には、意味があるとしか考えられない。そう判断したレーナは、もう一方のギアマークにもさっと目を走らせる。
ギアの中央は凹みではなく、ずっと奥まで繋がった深い孔になっている。子供の小指の先よりももっと細く深い孔だ。もう一方も、同様の意匠だった。
(何て言うか、ここだけメカニック? 説明的なのよ。商品に付けられた注意書きみたいよね)
ひっそりと記されつつも、キッパリと主張するギアマークから、そんな印象を受ける。
「丁度、扉の外側に、対照的に作られているんだな。扉を固定するもの……にしては華奢な孔だし、なんだこれは?」
エドヴィンが、プチドラを肩に乗せながらレーナの隣にぴたりと陣取って、ギアマークを覗き込む。大人が大きく腕を広げても届かない位置につくられたギアマークだ。
「意味深よね。飾りのレリーフだったらこんなに深い孔は必要ないし。普通じゃあ両方いっぺんに触れる事は出来ないわね」
「元番の魔族が持っていた異常に長い爪なら可能ってことか」
「うん。まだ推測だけど」
エドヴィンとレーナが額を寄せて頷き合う。まだ仮説でしかないが、レーナは間違いは無いだろうと確信している。
「プチドラちゃんも言ったよね? 細工の得意なドワーフ族に、この監禁部屋の仕掛けを考えさせたんじゃないかって。大雑把なファルークが作れない、細かな仕掛けがあるのよ」
『あら、じゃあ凄いのはあたしね! 仕掛けがあることと、その場所を当てたんだから』
「そうだな。さすが長い歴史を見て来られたご先祖様の慧眼だ」
エドヴィンが調子付いたプチドラをすかさず褒めるが、途端に小さなレディは頬をぷぅっと膨らませて『そんなんだから赤髪に勝てないのよ』などと文句を言われている。乙女扱いされたいプチドラとエドヴィンの擦れ違いに苦笑を浮かべつつ、レーナは話を進める。――若干、赤髪に勝てない発言を気に留めつつ。
「とにかく話を戻すけど。だから、その『細かな仕掛け』がこの小さな孔なんだとしたら、大雑把なファルークが気付かずに、わたしたちをここへ入れたのにも納得出来るのよ!」
それに、とレーナは考える。使用者と製作者が別なら、閉じ込め事故防止に開ける方法があったり、開くための取説的なものが記されていてもおかしくない。前世で見た商品と同じく、全体の造形を損なわない場所に。このギアマークと、孔は正しくそれを彷彿させるのだ。




