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第70話 【攻略対象 火龍の変化体】番を探し求める火龍の変化体・ファルーク


「えぇっ!? まさかまたっ……。攻略対象の火龍の変化体ファルーク……!?」


『レーナ、あんたホントに平民(モブ)村娘なの!? 攻略対象が寄って来すぎなんじゃないの!?』


「はぁ!? メイディアに着いて早々、攻略対象だと?」


 火龍を見上げる子供らは口々に騒ぎ立てる。レーナの特殊な事情を知らされていない大人達は、困惑を表情に過らせるも、警戒を緩めない。


「――っぎゃ……ぎゃぉ、みぎゃぁっ!!」


 レーナに頭全体を抱え込まれて身動きどころか、充分に息を吸うことの出来なかったアルルクが、何とか彼女の拘束から頭を開放させて抗議の声を上げる。


『んなぁぁぁっ……にい゛ぃい゛ぃぃぃーーーー!!!』


 頭上の龍が、一際大きな声を上げる。と、同時に彼に握られていた天井からバキリと音がして、大小様々な木っ端がバラバラと馬車内に降り注ぐ。騎士や執事は身を挺して子供たちを木片の雨から庇うが、千々になった全てから守り切れる訳もない。咄嗟にレーナは腕を伸ばして、アルルクだけでなくエドヴィン、プチドラをも自分の影に押し込めようとする。


 手の中の木っ端が全てなくなったところで、火龍の変化体こと『ファルーク』が、猛禽の鉤爪を思わせる5本の指を起用に折り畳んで、アルルクを指差す。


『なんだよぉぅ! ソイツは、ナニモンなんだっ!? どうしてワレの番のっ、ライラの気配をプンプンさせてやがるんだよぉぅっ!??』


 銅鑼声が響き渡る中、またしても周囲が真っ白になるほどの蒸気が一気に「ぼふんっ」と噴出し、濛々とした煙の中から赤いドラゴンの代わりに、眉を吊り上げ、怒りで顔を真っ赤に染めたアルルクが現れる。


「うるせーぞ!! ツガイってなんだよ オレはお前なんか知らねーし、レーナを危ない目にあわせるヤツは オレがだまっちゃいねーぞ!」


『なんだよぉっ! しかもオスかよっ ライラの気配をプンプンさせた上に、火龍族の色までしておいて、ふざけんじゃねーよぉぅっ』


 巨大な存在に怯むことなく立ち向かうアルルクは、確かに勇者然として魅力ある攻略対象の片鱗を見せ始めている。けれど、その彼が勇者になった経緯を思い起こしたレーナは、嫌な予感にふるりと震える。


(アルルクは、プペ村の河原で襲って来た、()()()()魔族と戦って瀕死の大怪我を負ったわ。で、それを修繕(リペア)するのに魔族の腕をまるごと合成したのよね)


 龍であるファルークの(つがい)が、何らかの理由で魔族に変化していたのだとしたら。

 ――あの時の河原の異形が、龍に似ていた理由に説明がつく。


 プペ村の河原で斃した魔物が、ファルークの番であるライラの変化した姿だったとしたら。

 ――アルルクからライラの気配がする理由に説明がつく。


(まずいわ。あの時の魔族がライラの可能性が高すぎるわ!!)


 しかも、さらに想像を膨らませるなら、ファルークのシナリオで彼を攻略しようとするヒロインに散々付きまとい、聖女の力に覚醒したヒロインによって斃されてしまう魔族はライラの変わり果てた姿だったのではないだろうか――?


(それだったら、返り血とかで、今のアルルクほどじゃなくてもライラの気配を纏うくらいになるかもしれない! なんてことぉぉぉっ)


 最もお手軽かと思われたルートは、存外ドロドロとした側面を持っていたのだった。

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