第239話 【攻略対象 平凡村娘】独占欲強めの最高神は、モブ村娘からの一途な愛をお望みです!
最終話です。
世界を守る最高神が男女一対で現わされるようになったのは、遥か千年の後だった。
慈悲深い笑みで人々の幸せを願い、胸の前で両手を組んで祈りを捧げる黒髪の女神と、その背後で両腕を開き、いかなる障害をも許さぬ厳しい面持ちで睥睨する虹色髪の男神の姿――それこそが、ダンテフォールの最高神の姿となった。
更には、彼らと特徴を同じくする男女の旅人が、様々な時代、世界各所で目撃されるようになった。
今も残るベルファレア王国――そこから遥か遠く、幾つもの国を超えた先の山奥で、小さな村から出立したばかりの男女が何事かを揉めている。
「リュザス! 何で、あんな小さな男の子を威嚇すんのよっ! 怪我を治してあげたお礼にって、野原の花を摘んで渡してくれただけでしょ!?」
「はぁ!? レーナだって迂闊だよ! 子供なんていっても、あれはレーナを想う男の顔をしてた。良い? あれは10年と経たずにレーナを奪おうとする男になるんだ!」
「なんの心配よ!」
「だってぇ!」
すっかり女性の尻に曳かれたこの男女を、件の最高神と同一視するものは居ない。
エドヴィンと過ごした人としての数十年、リュザスは静かに姿を隠し、アルルクはそれまでと同じく穏やかに笑って二人を見守った。
アルルクとファルークは、時に反発し合いながらも永い刻を共に過ごした。焦れた火龍が無理強いをすることもあったが、勇者の加護を持つアルルクが全力をもってこれを阻止し、仕舞いには均衡する実力を手に入れて、互いの意見を尊重し合う関係になれたようだった。共に誰かと長い月日を過ごすには、対等であることが肝要だと思わせられる一柱と一人だった。
そしてレーナの夫として、シュルベルツ領を治めたエドヴィンがこの世を去り、再びレーナの前に姿を表したのがリュザスだ。
「待ってた。レーナはいつだって全力で、だからこそ不器用だって分かってるから」
ただの人間より長命だったエドヴィンとアルルクだが、大気の宝珠をその身に宿したレーナを遺し相次いで旅立った後のことだった。
「二人の魂にも会ったよ、レーナをよろしくって。けど、きっと生まれ変わって、またレーナを迎えに行くって。それまで預けるだけだってさ。最高神相手に、ホント思い通りにならない、生意気で、面白いやつらだよね」
「うん」
「僕は二人が生まれ変わっても、ちゃんと認められるように、いっぱいレーナに愛を伝えて、頑張んなきゃね」
「ふふっ、充分頑張ってるよ」
エンディング後のダンテフォールは、ようやく世界を見守る身近な存在を思い出した人間たちが真摯に祈り始めたことで、宝珠の力が戻り、天地は安寧を取り戻した。
当初は各国に神託を与え、救い、己の存在を示していたリュザスだったが、10年を過ぎたころからは、地上への加護はそのままに、人々へは姿を見せなくなっていた。
リュザスは、レーナだけを助け、愛を乞うのではなく、彼女が大切に思う人の世ごと慈しみ続けることを選び、見守っていたのだ。
「ねぇ。リュザス、あなたが愛情いっぱいに育んだこの世界を、たくさん見て回りたいんだけど、一緒に来てくれる?」
「もちろん。レーナの我儘はいつだって歓迎だって言ったでしょ?」
言ってから、最高神はふいに悪戯を思い付いたようにニヤリと笑って、レーナの鼻先に人差し指を突き付ける。
「そうそう、ひとつだけ訂正しておくね。僕の愛情はレーナにだけ向いてるんだよ。この世界を僕が育んでいるとすれば、それはレーナがこの世界を愛してくれているからそうなってるだけさ」
そして二柱は旅立った。
「出発するわよーーー! 早く追い来ないと、おいてっちゃうから」
「やだ、これ以上待ちたくないっ! 僕も行くからぁ!」
今日も世界のどこかでは、仲睦まじい二人の声が響く。
第4章 最高神 編 《最終章》
独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです! ― 完 ―
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