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第17話 【攻略対象 辺境伯令息】あざとさは加護!?


 この幼き攻略対象のあざとさは、ヒロインの聖女と恋に落ちて彼女と手を取り合い、この地に降りかかる試練を乗り越えるために、必要なスキルだと言える。


 と言うのも、エドヴィンのルートでは、聖女が彼を選んで助けなければ樹海の力が衰え、森の恵みを断たれ、国境を護る木々が失われたおかげで隣国が攻め込んでくる。そしてシュルベルツ領滅亡に繋がってしまうのだ。


「だとしたら、あざとさは生存を賭けた進化!? 生存本能!? ううん、生まれた時から持ってる、国を救う特別な能力は、神様からの『加護』って言われるのよね! なら、あなたの『あざとさ』って加護なんじゃないの!?」


「「はぁ!?」」


 思わず口に出さずにはいられなかったレーナ渾身の推理に、エドヴィンと執事が揃って素っ頓狂な声を上げる。


「だって、そうとしか思えないわ! きっと、まだ見ぬ聖女と恋に落ちるための加護なのよ」


 そうか、聖女向きだったから自分には気持ち悪くしか見えないのか――と、レーナは納得する理由が見つかって、すっきりした気分だ。


「そんな変な加護あるわけないだろ!? なんだよ、もぉー」


 言われたエドヴィンは、あまりに馬鹿げたレーナの掲げる説に、揶揄われているとしか思えなくて唇を尖らせる。その表情は人間味があり、年相応の少年そのものだ。


 だが、彼の反応が普通なのだ。現に、正面で話を聞いていた執事も困惑した笑顔を浮かべている。この世界の常識で言えば神から授かる加護と言えば『勇者』『剣聖』『聖女』『大魔法使い』など、華々しい職業に繋がるものが通例だ。そんな中『あざとさ』などと、職名でもなく誉め言葉でもない形態を加護と捉える方がどうかしている。


(ぜったいに間違っていないと思うんだけどなぁ。じゃなきゃ、わたしと年の変わらない子が、百戦錬磨のホストかヒモみたいな態度を普通に取れるのはおかしいもの)


 眉間に深い皺を刻み込んで、とても失礼なことを考えながらレーナがエドヴィンを見遣れば、彼はまだ腹を立てているのか口角を下げて不貞腐れていた。


「いつもそんな表情(かお)をしていられたら良いのにね。あなたも大変ね」


「レーナは不細工に歪めた顔が好きなんだな。お前こそ、このさき大変だな……」


 同情したつもりが、心底気の毒そうに返されて、レーナは愕然とする。ゲーム設定の被害に遭った、可哀そうな少年として見ようとしていたが、ただのゲームキャラならば、こんな憎たらしいことは言わないだろう。


「あんたの顔がわたしのタイプじゃないってだけで、不細工好きとか変なこと言わないでよ!」


 なので、レーナは遠慮なく文句を言わせてもらった。エドヴィンの方も「私の顔が嫌いなら、綺麗好きじゃないだろ!」などと言い返してきたけれど。







 怪我の光明と言うべきか、さっきの言い合いでレーナとエドヴィンは、なんとなく打ち解けていた。お互いのことを名前で呼ぶことにして、庶民の暮らしと貴族の暮らしの違いについて談議したり、プペ村のことを聞きたがる彼に、近所に住む人たちのことを話したりした。


 概ね機嫌よく興味を持ってレーナの話を聞いていたエドヴィンだったけれど、何故か一番のニュースであるはずの『勇者アルルク』の話題だけは聞くことを嫌がった。


「何もないプペ村じゃあ、アルルクが一番の話題の人なのに。ヒーローが好きそうなのに、変なエド」


「ほかの仲睦まじい奴の話をするレーナこそ、デリカシーが無いぞ!」


 言い捨てて、プイと横を向いてしまう。けどすぐに「ヒーローって何だ?」と眉をひそめて聞いて来たので「危険が迫った時、助けに来てくれる皆の憧れの存在だよ」と伝えた。けれどそれが羽角(はずみ) 玲緒奈(れおな)の世界の話だったことを思い出して「わたしとエドの秘密だからね」と付け加えれば、途端にエドヴィンの機嫌は上昇したのだった。

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