第152話 【攻略対象 隠しキャラ?】僕を待たせすぎた悪いひと
(今のわたしの言葉って! こっ……告白みたいよね!? しかも2人まとめてって、とんだ男好きみたいになっちゃってるわぁぁぁ)
口走った言葉は今さら無かったことにはできない。とにかく誤解を解かねばと「リュザス様探しのためによ!!」と付け加えるが、恥ずかしさのあまり震える声は至近距離にしか聞き取れない弱々しいものにしかならない。
けれど、飾りとしてレーナの頭に付いている彼にはしっかりと聞き取れたようだった。
―― 嬉しい。それでこそ、僕が選んだレーナだ ――
虹色の蝶の髪飾りが、ぽわりと熱を発する。
―― 僕たちの邪魔をする者は、何者であっても許さない ――
黒い青年によく似てはいるが、異なる声が喜色を湛えて告げる。と同時に、何処からか急に現れた無数の虹色の蝶が、黒い青年に勢いよく群がった。
―― くっ ――
「ぅあっ!?」
青年だけでない叫びに目を向ければ、王子までもが虹色の蝶達に包まれている。
元の人間を判別できないほど蝶まみれとなった王子は、その場にガクリと膝を突いて崩れ落ちた。
―― 何故この力が味方するんだ!? 僕を蔑ろにしてきたのに!! ――
その場に立ち続ける青年は、蝶の塊となりながらも憎々しげな叫びをあげる。
密度を増し、一層激しく羽ばたく蝶達の虹色の鱗粉が巻き上げられる中、僅かに出来た隙間という隙間から、全ての光を飲み込む漆黒の光線が一筋、二筋と漏れ出る。やがて全体から虹色を飲み込む真っ黒な潮流が巻き起こり、人々が目を見張る間に蝶は消失した。
そして、その場には
艶然と微笑む、黒い宝珠を手にした青年が現れていた。
―― ねぇ? いつまでも君がマゴマゴしていたから、待ち兼ねた僕はこの通り、大きな力を手にいれたよ ――
黒い青年は、顎を上げた尊大な態度で、手にした黒い球体を眼前にかざす。
「まさか……宝珠?」
『なんだか不味い感じに力が濁って瘴気まみれになってるわね。動物があんなのに触れたらすぐに魔獣になっちゃうわ』
レーナの呟きを拾って、プチドラが答える。
「嫌なこと言わないでよ」
その答えに、ふと思い当たることがあった。
「あ、じゃあ宝珠の化身が触れたら――」
『あんたが最初に見た、魔族になったライラ。そんなもんじゃ済まないかもね』
レーナの想像通りの言葉が返ってきた。だとしたら……と、レーナは更に考えを巡らせる。
(何の宝珠のなれの果てなのかは分からないけど。この黒い彼は、その化身で間違いないわね)
思い当たったレーナに、青年が満足げな笑みを向ける。
―― けれど、僕も少し力を使いすぎたみたいだ。だから、今はこれで済ませてあげるよ ――
また今度。余裕たっぷりにそう呟きを残した青年は、現れた時と同じく忽然と、空気に姿を溶かして消え失せた。
プペ村から王都へ、持ち去られているかも知れない大気の宝珠。
クラウディオ王子から漂う、大気の宝珠の気配。
瘴気溜まりの頻発から推測される、本来王城にあるべき陽の宝珠の異常。消失なのか、力を失ったのかは分からない。
だからこそ今、王城の宝珠を、確認すべきだとレーナは思いを新たにする。
(推しのリュザス様そっくりのキャラなんて、気になりすぎるもの! もしかして、わたしの知らない隠しルートの攻略対象かも知れないしね!!)
ゲーマーの血を滾らせただけ、なのかもしれないが。




