第37話【海の魔王】(後編)
前回の続き……
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「ヤバイヤバイヤバイ! ! 」
「エル姉さん早く! 」
「クソっ! このままじゃ一気に全滅だぞ! 」
嵐の中、 しばらく一同はエルの援護の為に攻め込んでくる骸骨達を倒し続けていたがキリがなく、 徐々に追い詰められていた。
エルはまだ時間が掛かる様子。
するとそれを見かねたシュラスは剣を収め、 片手を出す。
次の瞬間、 骸骨達の動きが何かに縛られたようにぴたりと止まった。
「な、 何だ! ? 」
「……あまりこういう手は使いたくないが仕方あるまい……骸骨達の動きは封じておくから早くしろ」
「よし、 隙が出来た! 一気に畳みかけるぞ! 」
そしてシュラスが骸骨達の動きを止めている間、 海賊達は骸骨達を次々と倒していった。
その様子を見ていたヴィデルアは
『……やはりシュラスには敵わぬな……』
シュラスの強さを知っているのか、 半ば諦めている様子。
そうしている内にエルは火の玉を完成させた。
見た目こそ小さいが、 その火の玉からは凄まじい力を感じる。
出来た……もう殆ど魔力が残ってない……でも打ち上げるにはもっと力が無いと……そうだ!
「フェミルちゃん! そのサーベルの水でこの火の玉を空高くまで打ち上げられる! ? 」
「んお? いいぜ! やってやらぁ! 」
するとフェミルはサーベルを思いきり上に振り上げる。
それと同時に水の柱が火の玉を凄まじい勢いで空へ打ち上げた。
そして火の玉が黒い雲の中へと消えた瞬間
「皆伏せて! 」
エルがそう叫ぶと同時に指を鳴らした。
次の瞬間……
『ッ! ! ! ! 』
上空から凄まじい閃光と同時に耳鳴りがするほどの爆発音が鳴り響いた。
一同は上を見るとそこに見えたのは巨大な赤い炎の塊だった。
そこを中心に黒い雲が一瞬にして消え去り、 嵐が止まった。
嵐が止まると骸骨達は力が抜けるように崩れ去り、 灰となって消えていった。
『まさか……これ程の力とは……この嵐を止めたのはあの勇者以来か……』
エルの力を見たヴィデルアは驚く。
ヴィデルアが空に気を取られていると水で出来た縄のようなものがヴィデルアの体に纏わり付く。
『これは……あの子娘のか……』
水の源をたどるとそこにはサーベルを持ったフェミルがいた。
『だがこんなもの……どうという事は……ッ! ? 』
ヴィデルアが拘束を解こうとした瞬間、 水の縄は凍り付き、 ヴィデルアの体を完全に固定してしまった。
船の方を見るとエルがフェミルのサーベルに触れ、 水を凍らせていたのだ。
(この氷……我輩の力でも砕けぬ! )
ヴィデルアは力を込めて氷を砕こうとするも、 氷はびくともしなかった。
「姉貴! 今だ! 」
「はいよ! 」
隙が生まれた瞬間を見計らい、 ルーミは氷を伝ってヴィデルアの方へ向かっていく。
『馬鹿め……その短剣では我が首を取れぬぞ! 』
ルーミの短剣では攻撃が通らないと思った次の瞬間
『ヒュンッ……! 』
ルーミがヴィデルアの背後へ通過すると同時にヴィデルアの首が飛んだ。
(な……何が……あの子娘の短剣……我輩の体は斬れぬはず……)
何が起こったのか分からず混乱するヴィデルア。
ふとルーミの短剣を見ると
『ッ! 』
ルーミの短剣には光るオーラのようなものが纏っており、 そこから凄まじい力を感じた。
実はルーミが氷を渡る前、 シュラスがルーミの短剣に強力な魔法を付与していたのだ。
ルーミは空中に生成された氷に着地する。
「やっぱりシュラスさんの魔法は凄いなぁ……魔王の首を紙みたいに切れちゃった……」
『やは……り……死の運命には……敵わぬ……か……』
首だけになったヴィデルアは最後にそう言い残すと海の中へ消え、 体は灰のように消え去ってしまった。
「か……勝ったのか? 」
「やったみてぇだな……」
『うおぉぉぉぉ! ! 』
勝利を確信した海賊達は大喜びした。
「よっと……いやぁ一時はどうなる事かと思ったよぉ」
「やったねルーミちゃん! 」
「まっ、 バカ姉貴にしちゃよくやったな」
エル達も勝利に喜ぶ。
するとエルはふとある疑問が思い浮かぶ。
「そういえばシュラスさん、 復讐の魔王って一体……さっき父のように沈めとか言ってた気がするのですが……」
そう、 エルはヴィデルアの発言に疑問を持った。
するとシュラスは話す。
「ヴィデルアは大昔に海に沈んだ国の王子だった者だ……彼は父である王に母親を殺され、 それを目撃した王は口封じで奴を処刑しようとしたんだ……だがその時、 悪魔が奴の心に付け込み、 力を与えた……母を殺され、 自分を殺そうとした父へ復讐するための力を……そして奴はその力で国を沈め……王に一生解けぬ呪いを掛け、 恐ろしい竜の姿へと変えた……それが復讐の魔王、 ヴィデルアの始まりだ……」
……ヴィデルアさん……家族である父親に母親を殺されて……悪魔にまで心を奪われたんだ……何だか可哀想……
話を聞いたエルはヴィデルアに少し同情する。
「ヴィデルアは元は国も家族も愛する心優しい青年だったのだが……悪魔に心を奪われたのが決め手だったな……もはや彼にとっての救いは死してその魂を還す以外は無い……」
「魔王ってのはそんな奴ばっかなのか? 」
フェミルが聞くとシュラスは小さく頷く。
「とは言え俺達がどう思おうが何か変わる訳でもない……この話は終わりだ」
そう言ってシュラスは船の中へ戻っていった。
海賊達はしばらく勝利を喜び合うと荒らされた船の後片付けに取り掛かった。
フェミルは戦いで疲れ果て、 再び眠る為自室へ戻っていった。
エルとルーミはと言うと……
「……」
「……」
魔王が襲撃する前にしていた話の続きをしようと甲板の端に来ていた。
少しだけ沈黙が続くも、 ルーミは決心した様子で口を開く。
「エルちゃん、 やっぱり私……あの人たちと一緒に冒険したい」
「……」
エルは何も言わない。
「さっき海賊の人達と戦って感じたんだ……今までに無い胸の高鳴りを……凄くハラハラしたけど……凄く楽しかった……勿論、 エルちゃんとの冒険も楽しかったよ! ? 」
するとエルは口を開く。
「……そっか……ルーミちゃんがそうしたいなら……そうするべきだと思うよ……前に私に言ってくれたように……自分の心に従うべきだよ」
寂しい気持ちもあった……しかしそれ以上に、 エルはルーミ達の幸せを願った。
お別れしても、 ルーミちゃんとはずっと友達……いなくなるわけじゃないものね……
エルの言葉を聞いたルーミは笑顔で
「うん! 私、 自分のやりたい事をやるよ! 」
そう言った。
薄暗くてルーミの顔がよく見えなかったが……心なしか彼女の目から涙が零れてるように見えた……
すると丁度朝日が昇った。
その日の光に照らされ、 遠くの方を見ると大陸が見えた。
エル達はアルドーラへ辿り着いたのだ。
「……寂しくなるね……たまにお手紙書いてね」
「分かった! 約束ね! 」
遠くに見える大陸を見た二人はそう言うと、 指きりをした……
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アルドーラの港にて……
エルとシュラスは船を降りる。
ルーミとフェミルは船に残り、 海賊と共に旅をすることになった。
「……ルーミちゃん……元気でね……」
「エルちゃんも……」
しんみりする二人にフェミルは言う。
「心配すんなエル姉さん! このバカの面倒は私が見てやるからよ! 」
「そ……そこは副船長って呼んでよぉ……相変わらず酷い妹だなぁ」
「ふふふ……よろしくね、 フェミル船長」
エルは優しくそう言った。
シュラスは
「……お前達の選択を俺は否定しない……エルと同じように、 お前達も成長した……強く生きろ、 ルーミ……フェミル……」
相変わらずの様子でそう言うとルーミとフェミルの頭を撫でた。
するとルーミは涙を溢す。
「シュラスさん……今まで本当にありがとうございました……私をあの時拾ってくれなかったら……今の私はいませんでした……とても嬉しかったです……! 」
「ホント世話になったな旦那……アンタとの旅も楽しかったぜ! 」
そう言う二人にシュラスは珍しく微笑んだ。
「しっかし本当に貰っちまっていいのか? 」
「こんないい船、 他にねぇぜ? 」
海賊達はシュラスから船を譲ると言われ、 少し戸惑っていた。
しかしシュラスは
「構わん、 どうせ使い捨てのつもりで作った船だ……必要ならくれてやる」
淡々とした様子でそう言った。
「アンタがそこまで言うんなら……まぁ……」
困惑しながらも海賊達はシュラスが作った船を貰い受けた。
そしてルーミとフェミルはエルとシュラスと別れ、 再び大海原の旅へと出港した……
ルーミちゃん……フェミルちゃん……どうか幸せに……
二人っきりになったエルとシュラスはティルディールが待つデイダール砂漠へと向かった……
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その頃……
『……復讐の魔王が死んだか……やはり召喚された肉体では本来の力は出せぬか……まぁいい……時間さえ稼げれば……』
禍々しい扉の前でティルディールは呟く……
『あとは貴様の働き次第だ……』
『強奪の魔王……』
この先……エルを待ち受ける運命とはどんなものか……
それがどうであれ、 それは彼女にとって大きな変化へと導くだろう……
それは……
彼にとっても重要な事とも言えよう……
最終章へ続く……
ここまで読んで下さりありがとうございます。
物語はいよいよ最終章です、 果たしてエルは神の力をモノに出来るのか、 そしてシュラスは何者であり、 何故名も持たぬ剣を手に旅をしているのか……その謎が明かされる事となります。
次章も読んで頂けたら幸いです。




