表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

第11話 初めての戦い



アアアアアアア!!!


遠くから身の毛のよだつような叫び声がする。

ブワッと体中の鳥肌がたった。


逃げたくなる気持ちをぐっとこらえて、手を強く握りしめる。


ドン ドン ドン


それから足を踏みならすような音。



今日はいよいよ魔族との戦いの日。


結界石を放棄し、行軍スピードをあげたので、十分に準備する余裕があった。負けられない。いや、これは勝ち戦だ!


オオオオオオオ!!!


巨人が叫んでいるかのような大声がする。


ドンドンドンドン


何か太鼓を打ち鳴らしているのか。


どっくん どっくん どっくん


心臓の音がうるさい。


「来たぞー!!!」


魔族が遠くにその姿を見せた。

黒っぽい何かだ。


人間のような姿形のものもあれば、犬のように四つ足で貼っているもの、液体のようなもの、木のようなもの、巨大なゴーレムのようなもの、てんでバラバラ。ただ、数が多い。


それらが、ものすごい速さで走ってくる。

明らかにこちらを殺そうと、殺意をみなぎらせて、迫ってくる。


「マスダ様!石ころ頼む!」

「ははははい!」


ジェスさんの声に勢いよく返事をする。


石ころ。石ころ。石ころ。


ウワアアアアア!!!!

ギャアアアアア!!!!


石ころ。石こ・・・


ギャアアアアア

ギエエエエエ


だめだ、集中できない。

早い!早い!早い!うるさい!


「マスダ様、狙ったものだけを見るのです」


ジェスさんがさっと俺の両耳を塞いだ。

途端に魔族の叫び声が遠のいて静かになる。


すると、狙いを定めていた石が見えてくる。


(そうだ、石だ。石ころだ)


ぽぽ ぽぽぽぽ ぽぽぽぽ!!!


なんの変哲も無い石が突然増える。


狙いを定めていた位置から左右に広がるように、小石が広がっていく。それに足を取られて。前のめりに走っていた魔族たちが面白いようにこける。


「打てー!!!」


ロズさんの声が響く。


ヒュンヒュン ヒュンヒュン


ウワアアアアアア!!!!


ジェスさんが俺の頭をひと撫でして離れた。

・・・よく思い返すと、右肩のあたりに柔らかいものが当たっていた気がするのだが。


(ま、まさかね・・・!?)


戦場で興奮している場合じゃない!


パンパンと両頬を手で叩く。


(よし!次は矢を増やそう!)


いつもより少し上を見て、ビュンビュン飛んでいく矢を目の全体に捉える。

そしてそれがブワッと左右に増えるイメージ。


魔族の叫び声が気になって仕方ないので、自分の指で耳をふさぐ。

下は見ない。とにかく矢だ。矢を見るんだ。


ヒュンヒュン ヒュンヒュン


とにかく集中。集中。集中。

飛んでいく矢だけを見るんだ。


集中、集中、集中・・・





***





気づけば、ゴウさんに強く肩を揺すぶられていた。


「マスダ様!後方に下がりますよ!!!」

「へっ?」

「敵が迫ってきました!後方に!下がります!!」

「わ、わかった!」


周りはすごい喧騒だ。

魔族の声なのか人間の声なのか分からない。


ゴウさんが、魔族の断末魔に負けじと大声で叫んでいる。


この時の俺は、初めての戦場でネジが外れていたと思う。


だからゴウさんが何を言っているかも分かっていなかった。でも、ゴウさんが俺の右腕を引っ張って歩いていくものだから、とにかく着いていかなくちゃと思って小走りで走った。


しばらく行って、一番後方まで下がったらしい。


「マスダ様」

「うん、早く次の、」

「まずは座って、水を飲んでください」

「そんなことしてる場合じゃないよ!」


ゴウさんが、「とにかく座ってください」と立ち上がろうとする俺の両肩を抑えて座らせる。


「うう・・・分かったよ!」


俺は無性にイライラして、ゴウさんの手を振り払った。


(なんで水なんか飲まなきゃなんねえんだよ!)


ごく、ごく、ごく。


そして、めちゃくちゃ飲んだ。

めちゃくちゃ喉が渇いていた。


「ぷはーっ・・・」


ひとしきり水を飲むと、ふうと息を吐いた。


「マスダ様。汗びっしょりで、顔色も悪いです。これも食べてください」

「へ・・・?・・・あむ」


からころ


俺の前にしゃがんだカコさんの手が差し出すまま、白い丸い粒を口に入れた。それは甘いようなしょっぱいような微妙な味の飴だった。


自分を見下ろすと、確かに汗をかいている。

それも服の色が変わるくらい。首筋に手をやると、手が濡れて不快なくらいだ。


「俺・・・なんで汗かいてんの?」

「マスダ様は、ものすごく集中されてました。少しも動いていませんでしたし、体が緊張していたんでしょう。それがとけてどっときたのではないでしょうか」


カコさんが持っていた手ぬぐいで首筋と顔の汗を拭いてくれる。その手つきが優しくて、無性に泣きそうになった。


「・・・ごめん、」


それから情けない気持ちになって。

いい年こいた大人が、自分の状態もわからずに突っ走っていたのが恥ずかしい。


「いいんですよ。あなたは仕事をやり遂げました。立派です」


カコさんは優しく笑ってくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ