初クエスト!
月の終わりなので、更新。
7/1に二話更新もしますよ。
ギルド到着。
「「ここが……ギルドか……」」
「喫茶店?」
「いやコンビニじゃない?」
「「…………」」
ギルドの前には二組の男女。彼らはつい先日、どころかつい先程この世界に来た者たちだ。……大和、蓮司、白百合、揚羽である。
彼らの目の前には木製の巨大な看板があり、そこには大きく『ギルド集会所…』と書いてあった。
中を覗くとそこには、まず横に長いテーブルが初めに目に付いた。そこではギルドの役員らしき者達と武器を持った者達が何かを話していた。
その後方には円形のテーブルがいくつも並び、そこで談笑する者達がいた。誰もが武器や鎧を身に付けている。中には全身鎧の者もいた。
壁際にはいくつもの棚があり、そこには様々な商品が所狭しと並んでいた。食べ物、(日本でいう)文房具に近い物、アクセサリー、雑誌……それはまるでコンビニの様だった。
白百合と揚羽の、「喫茶店」「コンビニ」、その答えはあながち間違っているとも言いづらい。大和と蓮司は確かにそうだと思ってしまった自分と戦っていた。……彼らの中では、ギルド集会所と言うのはもっと「かっこいい」存在だったらしい。
「「ぐっ……はっ、はやく中に入ろうぜ……」」
「えぇ……美味しい飲み物が飲みたいしね。喉乾いちゃった」
「あっ、アクセサリー売ってるみたいね。見ましょう?」
「賛成!」
女子二人には敵いそうになかった。そう男子は思うのだった。男子の本音をまとめるなら……
『飲み物もアクセサリーも後にして!お願いだから少年心を華麗にスルーしないで!』
……といったところか。
ガチャリ……ドアの取っ手を掴み、ドアを奥に押し込む。ドアはギギギと音を立てながら開いた。
ドアと壁の隙間が広がるにつれ、内側の景色が開ける。同時にいろいろな匂いも鼻につく。食べ物の匂い、それがほとんどだったが。
蓮司がドキドキしながらドアを開けるとそこには……
「「「いらっしゃいませ!ご主人さま!」」」
「「「「……はい?」」」」
メイドがいた。
あっれぇー?入る所間違えたかな? ……と思いながら外にある看板をもう一度見る。そこには確かに『ギルド集会所…』とあった。
………………が、四人は固まった。「死」に耐性すらある大和ですら、固まった。
最初に動けたのは、蓮司。その後蓮司につられる様に大和も動き出す。
「あれ?ギルド集会所って文字の横に謎の『…』が?! な、なんて書いてあるんだ……ッ?!」
「ん?んん?……『ギルド集会所 (メイドいます)』……」
それからたっぷり、そりゃもうたっっっぷりと十秒間固まったあと……
「「「「メイドいますって何だぁぁぁぁぁぁああああッッ?!?!」」」」
全力で叫んでいた。もし日本で叫んだのなら間違いなく白い目で見られるだろうが、ここでは寧ろ違う意味での視線を感じた。
ギルド集会所の中にいる人等は、『久しぶりに見たな』『来たか…』『新人キターー』『ウホッ、いい男』『ウホッ、いい体つき』『ウホッ!ウホッ!』
と言っている。どうやら興味津々の様だ……男に。
いや?!最後の完全にゴリラだろ?!大和は叫ぶ。
それと『ウホッ、いい男』って、誰だ?!言ったやつ?!だがその本人を大和と蓮司は探す事ができなかった。
色々、大変そうだ。と、思った。
「ど、どうかしましたか?」
「あぁ、新規冒険者登録に来たんですが……初めてなものですこしばかり驚いてしまって」
「あっ、そうでしたか!初めて来る方は決まって似た反応をしますね。はい、分かりました!登録はこちらです、どうぞ〜」
男子二人が固まっている時、白百合が真顔でメイドと話していた。真顔で。すぐに用件を伝えると、メイドは長いテーブル……例えるならカウンターの席のような所まで案内した。
真顔で話をした白百合。だが、次の一言で真顔ではなくなった。
「メイド服が似合いそうですね!着てみます?」
「ひ、ひゃいっ?!」
白百合は顔を真っ赤にして肩をビクリと跳ねさせた。それを見ている三人、いや、五人の考えは、見事に一致した。
『よし!メイド服着せてやる!』
……と。
大和、蓮司、揚羽に続いて、いつの間にか大和の隣にいたブラフマーとシヴァが白百合に着てみて着てみてという様な視線を送る。
「着てみたら?」
「きっと似合うよ!」
「すっごく可愛いと思うよ!」
「着てみてよー!白百合ちゃーん!」
「着てる所見てみたいなぁ……」
と言い続けた。もはや暗示にも近い。そして彼ら五人は集会所の人達さえ味方につけた。
『可愛いーんじゃない?』『着てみなよー』『一回着てみればいい』『恥ずかしいのは最初だけだよー』『チャレンジする事は大切!』『頑張れ!着てみて!』『銀髪イェイ』…etc…
「わ、分かった…わ…」
白百合は耳まで真っ赤にした状態で俯きながら、言った。
集会所にいる者等は、『勝った!』と同じ事を思っていた。心の中ではガッツポーズである。大和以外は。
大和はただ、白百合に仕返し(朝の事)をしようと思っていただけだったから。
数分後、メイド姿の白百合の登場で集会所が大いに盛り上がった。スカートを握り締め、恥じらう白百合の姿はなんとも美しく、ギルドがいつになく騒がしくなった。大和も一瞬、ドキッ……とした。
それから勢いに乗ったギルドの者達は揚羽、ブラフマー、シヴァにすらもメイド服を着せたのだった。揚羽、ブラフマー、シヴァの三人は白百合と違って、ノリノリだった。
どこかから「ズギュゥゥゥン↑」と聞こえたがスルーした。それが何だったのか、知りたくもなかった。
それから三十分後、やっと彼らは新規冒険者登録の事を思い出すのだった。
◇◆◇
三十分後。
なぜか白百合が予想外にメイド服を気に入ったという事で、一着程もらった。何なら働こうかとさえ言われていた。白百合は一瞬悩んだが、すぐに答えは出なかった様で保留にしていた。
それから、彼ら四人は、『新規冒険者登録』をするのだった。
カウンターにいたのは、優しそうな爺さんだった。と言ってもそこまで年老いている訳ではない。喫茶店のマスター……と言うのがぴったりである。
「随分お楽しみになられたようで。では、登録いたしましょうか。お客様」
「じゃあ、まず何したらいいんだ?」
大和が聞いた。まぁ、これは当然の事だろう。何をすればいいのか分からなければ、何もできはしないのだから。
「では、今から簡単に説明しましょう。ここの石版の丸い所に親指を当てて下さい。以上です。簡単でしょう?」
とても簡単だった。
石版の大きさは、だいたい地球で言う、単行本サイズぐらいだ。というより、ほぼ単行本と同じ形の石と考えて貰えれば分かりやすいと思う。厚さは大体、3cmぐらい。その石版の中心より若干下に丸い窪みがある。それ以外に装飾などは何もないただの石だった。
「簡単だな。じゃ、最初にやらせてもらう」
大和が親指を窪みに置く。
すると、急に石版に光の線が無数に現れる。光の線は蜘蛛の巣の様な模様を石版に描いた。そして唐突に光が消えたと思うと、《登録完了》という文字が空中に浮かんだ。大和以外は驚いていた。
《登録完了》の文字が浮かんでからすぐ、何もない所から光が集まり、カードの形となっていった。
空中で形成されたカードは徐々に実体化し、遂には完全な一つの物質となった。するとそのカードはまるで重力を思い出したかの様に大和の手の中に落ちる。
「それが、冒険者である証。〈ギルドカード〉でございます」
「ほほう」
カードには、こう書いてある。
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・名 ヤマト [大和]
・GR 1
・GNo. 52181498
・所持マナト 98000
称号 《転生・召喚者》《神との契約者》
・熟練度 1 [槍・1][剣・1]
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
(フムフム、まぁ、大体分かるな。正直、パラメータが無いのにはびっくりした)
そう、この世界にパラメータは存在しない。
その代わり、熟練度がある。熟練度が上がる事は、レベルアップとほぼ同じ事だが。
パラメータが無い。つまり、『体力』『攻撃力』『防御力』『すばやさ』などが数値化されていない。
それはつまり、レベルアップしたからと言って『体力』が上がったりはしないという事だ。
ただその代わりとでも言う様に熟練度が上がると武器の扱いがより上手くなる。熟練度が一上がると、その武器の扱いが格段に上達する。熟練度が一か二か、と言うだけでも、そこには大きな差があった。
(楽しそうだ、くくく…)
大和は少しだけ、楽しそうに笑った。白百合だけはそれを見逃さなかった。
「では、次の方ー」
今の方法で残りの三人もすぐに登録した。ブラフマーとシヴァはしなかった。と言うより、元からあった。それは神だから、だろうか。
「〈ギルドカード〉というのは、神々が作ったと言われております」
「そうか納得した」
◇◆◇
登録が完了した。
ならばする事は一つ。
クエストである。それ以外に何があると言うのだろうか。
《クエスト一覧》を彼ら四人は見ていた。壁には様々な紙が乱雑に貼られている。
GR1で受けられるクエストはと言うと、
・ゴブリン討伐 『ゴブリン十体討伐』2000M
・スライム討伐 『スライム十五体討伐』2000M
・高)スライム&ゴブリン討伐『スライム&ゴブリンを十五体ずつ討伐』5000M
・薬草採取 『薬草を計二十本集める』1000M
などなど。まぁ、確かにGR1にぴったりなクエストだった。
「「これしかないだろ!」」
男子二人は、・[高)スライム&ゴブリン討伐]を選んだ。女子二人は、[薬草採取]を選んだ。
まぁ、必然の結果だろう。男子は……こんな世界に憧れていた、と言う理由によって選んだのだろう。
……で、すぐさま出発。急いでいる訳ではなく、男子二人の少年心が待ちきれなかったからである。
ここからは、別行動。
◇◆◇
薬草採取チーム
「「な、なんて、事……!!」」
結果だけ言ってしまうと、凄い沢山生えていた。
……あれ?これパシられてね? 何て思いながらも薬草をバッグの中に入れていく。
ぷちっ、ぽいっ、ぷちっ、ぽいっ。
ノルマである二十本はすぐに集まった。
ちなみにこのバッグは、ゲームでいう、『アイテムボックス』の様なもので、好きなものを好きな分だけ入れられるという、神がかったバッグである。ゼウスから四人に与えられた。だが、ある程度この世界に慣れたらただのバッグとなるらしい。
結局、クエストにかかった時間は、十分程度だ。どうやら薬草は一本につき100マナトで売れるらしいので、ノルマ以外に、百本程かっさらってきた。五十本個は売る予定だ。残りは傷薬などにしてもらう予定である。
終わった。初めてのクエストは、一瞬だった。
◇◆◇
スライム&ゴブリン討伐チーム
大和と蓮司は、無双していた。
蓮司は、始めに少し躊躇ったが、「生きていくためには」と心に語りかけ、倒していける様になった。
大和は……言うまでもないだろう。
蓮司はもともとは、サッカー部だ。だが、実家で剣の稽古を少しやった事があるらしく、剣の基本的な事は分かってはいた。まぁ、実戦となると、ぐちゃぐちゃではあるが。だが、それでもゴブリンやスライムにとっては驚異だったのだが。鍛えられた筋肉で振るわれる剣はゴブリンを切り裂いた。
だが、大和はさらに凄かった。帰宅部なのに、凄かった。まぁ、神と契約しているだけはあるのだろう。まるで、今までずっと槍を使い続けていた様にほぼ完璧に使いこなせていた。石突きで相手を怯ませだ所で、[足払い]そして[疾風突き]。相手の攻撃は、槍を地面に突き付けて、防御した。相手が後ろに下がった所で、[疾風突き]からの[裂創返し]。囲まれたら、[薙ぎ払い]や[裏薙ぎ]で一掃。
敵が一直線に並んだ瞬間、一度後方に下がりタメをつくってからの、必殺(嘘)[貫通撃]!
まさに、圧倒的。
気付いたら、討伐数が凄い事に。
スライム討伐数 五十六
ゴブリン討伐数 三十五
ゴブリンの死体は売れるそうだ。一体約千マナトらしい。そしてノルマを除いた二十体分売れる。つまり、二万マナトだ。
儲けた、儲けた。
気付いたら一時間経っていた。
汗も凄い事になっていた。
◇◆◇
ギルドに戻る。
男子二人の成果を見て、ギルドの人達は唖然としていた。普通このクエストを初心者がやると、下手すると、死ぬ可能性すらあるクエストらしい。特にゴブリンに囲まれた時の恐怖で動けなくなる人もいるらしいのだが、二人にはそれが全くなかった。
なのに、彼らはノルマを大きく超えた数を倒していた。逸材だと、言われた。正直、そこまで凄いことの様には思えなかったのだが。
男子二人はつい、言ってしまった。
「「俺tueeeee?!?!」」
「え?それって自分で言っていいの?」
「いい、のかな。うん」
白百合の疑問にサラッと答える蓮司だった。
初クエストは大成功だった。ちなみに、男子二人はもうGR2になっていた。予想外に早かった。
ちなみに、GR2というのはもう一人の戦士として見られるようだ。ゴブリンを相手に怖気付く事なく戦える事が昇格する為に必要な事らしい。
それから彼らは宿に戻り、体を休める。
そして、
彼らは今後どうするか考えた。
そして、どうするか決まった。
「「「旅にでも出よう!」」」
「いいわね!それ!」
多くの世界を回ろうと、決めた。
実はゼウスから魔法を与えられていたのだが、ちゃっかり大和が『転移魔法』を持っていたりするので、他の世界にも結構簡単に行けたりする。
他にも、『変化魔法』がある。
なら、世界四つをまずは見て回ろうということになった。そのあとに、共生世界にもいけたら、行きたいらしい。
恐らく数年はかかるだろう。
だが、それでも止める気はない。
世界を見て、学ぶ。
そうしたい、から。
◇◆◇
それに今は、戦争が起こっているらしい。
世界と、世界で。星と星で。
関わり合わないのが一番なのだが、やはり、一度は見てみたいと、思ってしまう。
だが、その興味によって、戦争を実際に体験するとはその時の彼らは考えていなかった。
濃密な「死」を目の当たりにして、後悔する未来は、
絶対に、避けられない運命なのだ。それは、必然なのだ。
その時、すぐに立ち直れるか。それこそが運命の分かれ道。
まだ、「立ち直れない」という運命になるとは、決まっていない。
そう、まだ、決まっていない。




