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仲間が一人増えました。

昨日は色々と大変だった。いや、実際には嫌な事が何度も連続して起こったわけではないが。正しくは、最悪な事が一度起こった。そしてそれに釣られたかの様に二次災害が起こったのだ。そう、一つ事だけで一日浪費したのだ。なんとも嘆かわしい。


街を出て馬車で移動中、突然川に突き落とされ、森を駆けて、森を抜けて、テント立てて、夜に美しい星空みたあとにベヒーモスの腹の上で寝た。朝起きたら、ベヒーモスが妹になった。


……予想外の展開が続いてる。


♢♦︎♢


ベヒーモスだと思っていたら、妹でした。本当に、文字通り、言葉通り。

うーんと、これはどうすればいいのかな? 大和はどうすればいいのか思考するにはするが、そう簡単に思い浮かぶものでもなかったらしい。


その為、選択形式にしてみた。


1 「はっはっはっ、よく来てくれた!一緒に旅をしようではないか!」

2 「君はベヒーモスとして生まれた。なら、ベヒーモスとして生きるべきだ」

3 「素材にする為に解体していいかい?」

4 「俺の物になれ」


我ながら酷い選択肢だと思った。少なくとも二つは選択肢から消えた。


一つは3番。流石に解体は出来ないや。

もう一つは、4番。無理。かっこつけられない。


結局、と言うか二択になった。


……椿は旅について来るだけの能力は兼ね備えてる。

なら、本人に聞くのが一番。


「なぁ、椿、「あ、着いて行くよ?」あ、そう?」


まだ要件言ってないのですが。まさかの即答どころか、要件すら言っていないのに答える椿だった。

テレパシーでも持っているのではないかと思ってしまった。だが、ベヒーモスなのだからあってもおかしくはない。多分。


「って、ついて来る気なのか?」

「うん? そだけど?」


本気なのか。けど、もし怪我したら、嫌なことがあったら、そう思ってしまうのも事実だった。だが、


(……別にいっか)


ここで平然と受入れられる所が大和のすごい所であり、残念な所でもある。

まぁ、受け入れない場合もあるが。その簡単な例は、『その人がいる事で雰囲気が悪くなる』時などだ。


大和は仲間思い。

……最も信じるべき者に裏切られたが故に、彼は仲間思い。


で、大和は椿をチームに入れる為にはまずする事。

それは、


「なぁ、蓮司、白百合、揚羽。コイツ、チームに入れていいか?」


仲間に意見を聞くこと。これだけは必要だろう。流石に個人の意見で決めたくはない。


で、帰ってきた答えはというと、


「いいんじゃね?可愛いし。ねぇ、俺とッゴブフォッ?!」

「目が気持ち悪い」


という、蓮司の意見。

ちなみに最後のは白百合の鳩尾パンチをくらったから。痛そうだったなぁ。


白百合はこちらの世界に来てから魔法を使える様になった。その魔法の中には、発勁の様な一撃を放つ魔法も存在する。

そして、白百合はそれをもう使える。それがどういう事を指すのかは、あえて言わない。


「あなた、まずは不可侵条約を結びましょうか。大和と」


という白百合の意見。


「あはっ!可愛い!よしっ!こんどは蓮司と…にやり…」


という、揚羽の意見。


まぁ、一応全員駄目だとは言ってないな。だが、何故俺と椿が不可侵条約結ばなきゃいけないのだろう。

同時に、なんだか白百合の声が低くてメチャ怖い。

なんか後ろに般若っぽいもの見えるし。

なんか体から真っ赤なオーラが出て……


あ、怒ってるわ。



あと、揚羽。お前何企んでるの?

このチームを内側から破壊したいの?

昨日の味方は今日の魔王なわけ?

本当に何を思い浮かべているのか分からない大和だった。


けど、これで決まったな。


「よし、んじゃ椿、行こっか」

「あ?! まって、不可侵条約結ばなきゃ…」

「あ、そういうのはスルーしてもいいんだぜ?」


そう言えばそうだったな、と大和はふと昔を思い出す。椿は約束を守る子だったな、と。

椿は当然というか、友達と遊びに行くことがしばしばあった。その時は必ず時間に間に合う様に家を出ていた。……それが約束よりも三十分近く早いが。


「いや、あの……私と、大和くんと、白百合さんの三人で結びたいの……」

「ありがとう、椿。確かにそれは良い事だ。けど俺はそれを望まないんだよ。うん」

「そっか……それならしょうがないね!」

「えぇー……残念……」


椿の諦めの言葉に、悲しそうな顔で俯く白百合。大和は、心の中でごめんと白百合に謝りながら……

……全力で木に自分の頭を打ち付ける。一秒間に五回ぐらいの速度で打ち付ける。


が。


自業自得だが、大和が頭を打ちすぎて倒れた。すぐに椿が心配して近寄ってきた。白百合は……えっと、なんと言うか、「あれ?先越されちゃった?」みたいな感じである。

ベヒーモスの脚力は人よりも強いとよくわかった。


って、まだ最低限の事を椿に言ってなかった。

あぶね。忘れる所だったわ。

大和が勢いよく立ち上がる。クラクラする頭は置いておいて。いや、耐えながらだけど。


「椿。言い忘れてた事がある。これは、絶対守れ。分かったか? あーゆー、おーけー?」

「くしゅん」


くしゃみって……それはないでしょ……椿さん……


「うん……まぁ、うん。……じゃあ、まず一つ。街にいる時は必ず人の姿でいる事。もしベヒーモスになったら殺されかねないからな。だからと言って街以外では好き勝手にベヒーモスになってはいけない。もし、人に見られたら大変だから。

だが、これだけは言っておく。『本当に必要になった時』は、お前の判断でベヒーモスになってもいい」


当然だろう。もし街中にベヒーモスが急に現れたら、街の人は混乱する。もしかすると、街の騎士団などに殺されるかもしれない。

さらに、俺たちにまで迷惑がかかる可能性もある。下手すると街に出入りする事が出来なくなる可能性もある。


デメリットはある。だが、メリットもある。

椿は、ベヒーモスだ。なら、これからはベヒーモスと戦わなくて済むかもしれない。ベヒーモスなら、ベヒーモスと話せるだろうから。

それに、戦力になる事は間違いない。以前だって、四人がかりでやっと倒したぐらいだ。


正直、大和にとってはデメリットよりメリットの方が大きかった。

ベヒーモスが味方になれば、俺たちが殺される可能性が低くなる。もし街に出入り出来なくなっても、死ななければなんともなるだろうと、大和は考えていた。最悪、他の世界に行くっていう逃げ方もある。


そして最後に、大和は椿にある約束をする。

これはとても大事で、絶対に守らなければならない事。どんなものよりも、大事な事。


「それと、一つ、約束しよう。『もし、俺たちが死にそうになったのなら、椿、お前が助けろ。代わりにお前が死にそうな時は、俺たちが絶対に守る、という事だ。白百合、蓮司、揚羽、ブラフマー、シヴァ。異論はあるか?」

「「「「「ないッ!」」」」」


五人は言った。息の合った答えだった。


「…って、感じだ。これが守れるのなら…」

「守る。絶対に守るわ」

「じゃあ、これからよろしくな。椿」

「うんッ!よろしくッ!」


こうして、仲間が一人、増えた。椿が大和に抱き付いてくる。


空は、雲一つ無い、快晴である。


あと、白百合さん? なんで泣きそうなの? なんで?! ナンデ?!

と思ってたら、白百合も飛び込んできた。ちょっぴり怒ったような顔で。


◇◆◇


大和の顔にまるで猫にひっかかれたような痕があるが、それには触れないでおこう。


まず、椿にする事は、装備を揃える事。

だが、これは問題無い。白百合か揚羽の以前使った装備がある。

武器は…相当買った。

剣だけでも、刀や、両刃の剣、ジャマダハル、ダガー、マン ゴーシュ、クリス、エストック、グラディウス、クレイモア、ショーテル、ファルシオン、フランベルジェ、レイピア、カットラス、などを買った。これでも一万と少しで足りた。初心者用は安いらしい。だがその割には強度は高めだ。

他には、槍、弓、棍、多節棍、クロスボウ、槌、変形するギミック付きの武器、チャクラム、トンファー、鞭、鎌、釵などなど。これ全て合わせてなんと十五万。この量でだ。数は軽く百を超える。


……

これは、買いすぎた。

なんで、必要なさそうなものまで買ったのだろうか。未だに不明である。一種の衝動買いだろうな。

まぁ、今になって役立ったが。


で、椿が気に入った武器はと言うと、


「うーん、槍とか、棍とか…あっ! 大鎌がいい! 死神みたいでカッコいい! 決めたッ!」

「「「「「「……」」」」」」


大鎌だった。あのよく死神が持ってるアレ。


神二人を含む六人全員が固まった。それほど意外だったのだ。

だって、中三の女子が大鎌を持って喜んでいるのだ。これは普通ではない。異常だと言ってもいい。アブノーマルでもいいな。

あ、そもそも武器を持ってる事の方が普通じゃなかった、と彼らが気付くのはもう少し後の事。その時、いつの間にか異世界色に染まっているのだと気付くのも。


よし、落ち着こう。

十分間息を吸って、十分間息を吐くんだ!


スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ゴフゥッ?!

ハァァァァァァァァァァァ……グボフゥッ?!


無理っすね。無理無理。

そもそもこんな吸血鬼用の修行しても意味ないよな。

あぁ、ずれてるずれてる。

話ずれてる。


えっと、なんか、椿が大鎌気に入っちゃったよ。

てか、ポールウェポンが気に入ったらしいな。

つまり、俺と同じタイプか?

と思ったら…


「あぁ、魔法杖もいいかも…うーん…二つを合わせることって、可能かなぁ?」

「「「「「「?!」」」」」」


もはや、絶句である。

なぜなら、椿が言っている事とは、


「出来れば、魔法と大鎌の攻撃の両立がしたい!」


それが常人の発想でない事は、彼らが一番分かっていた。なぜなら、彼らも同じことを考えたからだ。

そして、試した。

だが、上手くいかないのだ。武器に集中すると、魔法に集中出来ない。魔法に集中すると、武器に集中出来ない。

この二つは全く別のもの。その二つに同時に集中する事は、不可能なのだ。

ただ、付け足すとすれば、『人には』だが。

もしかしたら、と思った。


その時、一匹のゴブリンが来た。

え? なに? 俺を使ってくれ?

ありがとうッ!じゃあ、練習用にらせてもらうか!


「えいっ」


椿は大鎌をゴブリンに向けて振る。

そして、ゴブリンに当たる瞬間、大鎌が、爆発した。


いや、ゴブリンが、爆発した。


それはまさしく、炎魔法だった。それも上位魔法、爆炎魔法である。上位魔法とは、より集中を必要とするはずなのに、武器と同時に使った。

武器がゴブリンに当たる、インパクトの瞬間、魔法を発動させた。


魔法を、発動させた?

魔法を、発動させた?!


「あ!出来た!」

「「「「「「えぇぇぇぇ?!」」」」」」


(人じゃないと出来るんかい……負けた、完膚なきまでに)


椿は、さらっととんでもない事した。

化け物 登場。

あらー。



頑張って、真似しよう。そう、思った、大和であった。


◇◆◇


椿は、人にできない事をした。

それを実際に大和は、見た。

だから、練習してた。


椿に出会ってからは、七時間後。

大和が目が覚めてからは、四時間後の事。


現在 午前十時。 雲一つ無い青空が広がっているが…暑くてしょうがない。どうやら異世界は夏らしい。

異世界にも四季はあるのだ。


実は五千年前までは、五季だったらしいが。

春→夏→○→秋→冬という感じだったらしい。○の所に何か違う季節が入っていたらしい。


丁度、午前九時頃にテントをたたんで、また歩き出したのだが、なぜかゴブリンがやたらと出てきていた。


つまり、揚羽無双または白百合無双が始まっていた。

今回は、椿無双もあったが。


三人が無双している時、大和は、


ベヒーモスと戦っていた。


椿が使った『魔法と武術の混合戦闘術』(名付け 大和)を練習していた。

以前、武器に魔法を付与した事はある。が、それは神の協力があっての事だったのだ。つまり、一人では出来ない。

ベヒーモスはどうやら、椿の知り合いらしい。

あ、お疲れ様です、ベヒーモスさん。


だから、殺される心配は無い。

と言うか、後ろにいる観客四人はなんなわけ?

観客四人とは、蓮司、ブラフマー、シヴァ、ゴブリンである。ブラフマーとシヴァにはなんか、「頑張れ大和!」って言われてる気がする。と言うか、目がそんな感じなんだよな。

あと、なぜかゴブリンが一体混じっている。しかも蓮司の頭の上にいる。

何なんだろうね?蓮司が産んだの?


「おい大和、いま相当酷い事考えたよな?な?」

「あ、うん」

「隠す気ゼロだとッ?!」


蓮司に構うといい事ないような気がした。

ゴブリンの事も考えたら負けだわ。これは。


って、事で、練習再開。


ベヒーモスさんには、実戦形式でって言ってあるから、結構怖い。だって殺気をさっきから飛ばしているんだもん!ダジャレとかそういうのじゃないよ!


ベヒーモスさん…いや、ベヒーモスでいいや。

ベヒーモスは、全力で触手で攻撃してくる。一本一本をうまく避けて、ベヒーモスの腹の下、つまり、死角に入り込む。

ここからが、問題。

攻撃する事を考えながら、魔法を発動させる。実際に見たとしてもやっぱりやろうとすると尋常じゃないくらいムズイ。魔法に集中出来ないのだ。

そしてまた、攻撃が鎧に弾かれる。

これで、七十六回目の失敗。


今は、槍の先っちょにちょびっと炎、と言うより火を灯すのが限界。


はぁ、練習練習!

七十七回目の練習を大和は始めた。


そんな大和を、覗き見る、まさかの八つの影があった。

その内の、一人が言った。


「あぁ……凄い…彼なら…」






「あの……ベヒーモスの亜種を……倒せるかも……」


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