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戦闘開始

移動は自分の足でだった。ダルい。

どうも。移動中でテンションの上がらない大和です。


トロール討伐のクエストの目的地まではどうやら徒歩での移動らしい。理由は音をあまり立てたくないとの事。

出来ればトロールとの戦闘は奇襲を仕掛けたいらしく、馬での移動では先に勘付かれてしまう。なら徒歩だ。……あほぅ。

そもそも目的地までの距離が結構遠い所為でもう疲れ始めた。


移動する時は、前の方に騎士団。後ろにそれ以外の者達が並んで移動している。それ以外、つまり志願者と言うわけだ。

志願者の中に大和の様な初心者丸出しの者などいる筈なかった。誰もが見るからに熟練者だ。強者揃いだけど誰も笑ってはいなかった。それぐらい危険なクエストなんだろう。

……まぁ、ベヒーモスが近くにいるというならそれは当然だろう。


ブラフマーとシヴァは始めは歩いていたが、やはりというか、疲れて大和のこころに入っていった。


ちなみに神は契約者の体、と言うより心の中に入れるらしい。例えるなら馬車か。馬車が大和でその中に乗るのがブラフマーとシヴァ。

まぁ契約者の記憶は見る事は出来ないが。いや、見られたらきっと……らめー(棒読み)って叫んじゃうかも。無表情で。


しかも、心の中から外の状況も分かるという。ずるい、ずるいぞ!

まぁ、歩いている途中、神の助言に助けられたし、許す。


とか思いながら歩いていたら、ブラフマーが心の中から喋りかけてきた。


『うーん、ここから100mくらい前方の…右の方にモンスターがいるよ。多分、ゴブリンかな。全部で五体。シヴァのピナーカで撃っちゃって!大和!』

「ブラフマー、俺、ピナーカとか使った事ねぇんだけど?」

『だいじょーぶ!破壊神こと、このシヴァ様がついているからね!』

「おけ。じゃ、狙撃するか。初めてだから……」

『『早くしようね?』』


回避技能スルースキルパネェェェッ)


「お、おう」


ここまで平然と言われると、なんかスゲェ心イテェ。

ズキズキ。


と、言うことで、初めてピナーカを使う事となった。突然弓とかを出現させたら周りの人に驚かれるから(経験済み)今回は背中に隠しながら出現させる。

あまり装飾の無い、シンプルな弓だ。全部、木で出来てる。けど恐らくその強度は鉄を軽く上回るだろう。なぜそう思うのか、と聞かれても勘だとしか言えない。なんせ、弓を持つと自然とそう言う風に思えてしまうのだから。


弓の打ち方なんて知らないし、デタラメ。というか、最早、矢自体がない。わぁお!アスタニッシト!


ふぅ…駄目だ駄目だ。集中しなきゃ。


あぁ、ゲフッゲフッ……集中…集中……フゥ…


弓を引いて、弦を離してみて、との事だったのでその通りにしたら、弓を引いた所で、炎の矢が現れた。

メラメラ燃えているが、熱くはなかった。

そしてパッと、弦を離すと、赤い線を空中に残しながら木々の中に消えた。周りからは、『なんで森に炎を投げ込んだんだ!』と言われたが、森は燃える事など無かった。代わりに、『ギャァァァッ!!」と、ゴブリンの悲鳴が森に響いた。


皆、唖然とした。ここからは見えもしない所のモンスターを撃ち抜いたのだから。まぁ、これはシヴァの技量なのだが。

そんな事が、この後三回もあった。

最後なんて、歓声が上がった。

へっへっへっ、俺すげぇだろ!全部神のおかげだが。

こんな事がありながら、歩いていった。


「ありがとな、シヴァ」

『どーいたしましてっ』


え〜では、ここで一旦CMです。


◇◆◇


それから少し経った頃、それは突然起こった。トロールの、襲撃にあった。それは本当に唐突で、ほとんどの人が対処できずにいた。騎士団の者でさえ、だ。トロールに奇襲されるとなど思ってもいなかったのだろう。


……が、ブラフマーはその襲撃を直前に知った。そして、それを知った瞬間大和に言った。


『トロールが来る!すぐにピナーカを用意、狙撃して!』

「えっ、あっ、り、了解ッ!」


そして、すぐにピナーカを取り出す。もう四回も使ったので、大体使えるようになっていた。


自然な動きで弓を引き、放つ。今回は前方に向けてだったので、炎の放物線が木々に拒まれる事なく現れる。空中に赤い線が浮かび上がる。その直後だった。前方で爆発が起こったのは。

それはピナーカではなく、重量のあるものを地面に叩きつけた様な爆発。

だが、その爆発は一度きりだった。代わりにドシンと、何かが倒れる音がした。

それは……トロールだった。


トロールが棍棒を振り下ろした直後、ピナーカの矢が貫いた、のだろう。


(あれ?意外とイケるか?)


びっくりした。トロールを一撃で殺せるとは思ったいなかったから。歓声が上がる。それも先程とは比べ物にならないぐらいの。

そしてそれを境に全員の動きが変わった。騎士団は負けていられるかと言った様な表情で駆け出し、息の合った三人の連続攻撃で一体を即殺する。

それを見た参加者も、これならイケるぞと言いながらトロールに突進する。

トロールは突然の突進に驚いたのか若干たじろいだ。だがすぐに棍棒を振り回し、一人でも殺そうとするが虚しく空振るだけだった。


そんな中、昨日のマッチョマンが話しかけてきた。


「そこの四人!前に出ないかい?それも最前線に!」

「「「「出ます!」」」」


即答だった。大和は言われなくてもでるつもりだった。蓮司、白百合、揚羽は大和に追いつきたい一心で、前に出ようとした。

だが、なぜ? なぜ四人を誘ったのだ?そう大和は考えたが、答えはすぐに出た。予想だが。


大和は昨日のギルド集会所での特訓を早めに切り上げた(マッチョマンの所為で)のだが、彼ら三人は、大和が帰ってからも少し、残って練習していた。恐らくはその時にマッチョマンに話しかけたのだろう。もしかすると、マッチョマンと特訓したのかもしれない。

そうでもしなくては話しかけない…………筈だ。たぶん。恐らく。


マッチョマンにはジャックという名前があるのだが、大和はその名前を知らない。知ろうともしていないが。



すぐ前に出た。そこでは、人と怪物トロールが血を流しあいながら戦っていた。トロールの数は、今戦っている個体が五体。今、戦っておらずに、観戦しているような個体が……軽く二十五体ほどいた。

トロール一体につき、騎士団の人間が三人で対処していた。もしくは参加者が三〜五人でだ。

やはりと言うか押されていた。数で、負けていた。だがその目は負けていない。どれだけ不利でもその動きは衰えなかった。


「やばそうだな……」


大和はそう言って、迷わずに《ブラフマーストラ》を召喚する。

ブラフマーストラは、神々しいほどの光を放っていた。そこにいる者達全ての目を引いた。騎士団も、トロールも。戦場の時が、一瞬止まる。


ブラフマーストラ。当たった相手を 必ず 討ち滅ぼすという武器だ。ただ、使用制限があり、一日に五回までしか使用出来ない。


「逃げろぉぉッ!」

「「「「「「「「嘘ぉぉぉん?!」」」」」」」」


大和の警告に驚く騎士団と参加者。

その直後、ブラフマーストラを迷わずにトロールに向かって全力で投げた。放つほぼ直前に警告はした。問題ない。

トロールが見事に一直線に並んだ所に向かって、ブラフマーストラは疾走する。

騎士団の面々や前に出ていた参加者が全力の横っ飛びで避ける。


ブラフマーストラを投擲した瞬間、暴風が巻き起こった。同時に神々しいほどの光が暴風に流されながら周囲に散った。

ブラフマーストラ自体は光に包まれており、それが通った道には、光の線が出来た。そしてそれは暴風によって霧散していく。


神々しい槍ブラフマーストラは、ソニックブームを発生させながら、トロールに向かって一直線に疾走し続ける。

そして、それが一体目、即ち最も大和の近くにいたトロールに触れた瞬間、触れられた所から半径五メートル程の円の部分が、比喩ではなく、消し飛んだ。一瞬で、絶命した。

それが、連続で五回続いた。


その後、トロールが怯んだ隙に大和はトロールの群れに蜻蛉斬りを片手に肉薄する。

トロールはまだ大和の存在に気付かない。つまり、隙だらけ。その顔は驚愕に包まれ、ある一点ばかりを見ていた。それは、足だけが残るトロールだったものの所だ。

大和は蜻蛉斬りにシヴァの炎を纏わせる。纏わせ、纏わせ、纏わせ、纏わせ、纏わせ、纏わせ、纏わせた。炎は、劫火へと昇華する。劫火。それは、世界を滅ぼす程の炎。シヴァの炎の中でも上位の炎。

それを、蜻蛉斬りに纏わせ、トロールに向かって、薙ぎ払う。

トロールの一体が気付いたが、もう遅い。劫火の槍はトロールの腹を掻き切っていた。それも同時に三体のを。普通トロールの皮膚は硬いらしいのだが、まるで、水でも斬っているように感じた。

斬られた所を中心に炎が纏わりつく。

その炎はトロールを包み込み、ついには絶命させる。


三体が腹部から炎を噴き出すとほぼ同時に、大和は他のトロールに肉薄する。

斬撃。

すぐに離脱、その大和を追いかけて来たトロールに向かって、

斬撃。


時間にして五秒程で十体のトロールを絶命させた。


十体目のトロールを絶命させたあたりで、他のトロールが大和に肉薄し、棍棒を縦に振るってきた。

だが、遅い。


避けようとも思ったが、すぐに止めた。

それじゃ、反撃出来ない。

体を少しずらしながら蜻蛉斬りで、棍棒での一撃をいなす。

棍棒が地面にめり込む。直後、棍棒に乗り、その上を走る。一気に肩まで来て、首を跳ね飛ばす。

そして、首を飛ばした後、すぐに後ろに跳躍する。


トンッ


綺麗に騎士団の面々の目の前に着地した。


騎士団の面々は、全員固まっていた。当然だろう。三人でやっとの思いで戦っていたのに、それをたった一人の少年がいとも簡単に倒したのだから。

さらに、一人で十六体も倒した。いや、先程の狙撃のも合わせると、十七体倒したのだ。

異常だった。

普通の 人間 なら出来ない。

じゃあ、普通ではないのか?

彼は、普通ではないのか?


そんな事を騎士団のほぼ全員は考えていた。

大和が聞いたのならきっと、「いえ普通です」とでも答えたであろう。


そんな事を考えていた為に、反応が遅れた。

もし、警戒していたのなら、「ギリギリ」で避けられていた攻撃だった。だが油断していたのなら避けられる筈もなく。

全く対処出来なかった。


騎士団の内の六人程の頭が、一瞬にして……消えた。


それから少しして、ゴトン……と音を立てて、頭が一つだけ落ちてきた。

残りの頭は、宙に浮かんでいた。


否。何かに突き刺さされて、宙に浮かんでいる様に見えた。

それは、触手の様なモノだった。それに、丁度耳のあたりを貫かれていた。


が、それは先程までの光景。

触手の肌は、一見、蛇の様な肌だったものだった。

だが、急にその肌から刃が飛び出し、

頭を微塵切りにした。


不快な音をだしながら、かつて頭だったものが地面に落ちる。


触手は、主の体に戻っていった。

それからすぐ、触手が現れた所からその主が現れる。


触手の主の正体を見て、直感で分かった。

これで間違いないと、感じた。

それは、間違いなく、


ベヒーモスだ。


ライオンを大きくしただけと聞いていたが、それだけでは無かった。

体、足、首…尻尾以外の部分には、ビッシリと鎧に似たものがあった。

背中には、先程の触手が約十本、生えていた。

足の爪には、もはや炎が灯っている。

心なしか、鎧も赤い。

瞳は、百獣の王というのですら似合わない程の威圧感があった。


一目見ただけで、強い、と分かった。

トロールなんてもう逃げ出している。


だが、大和の感じていた感情は、高揚だった。


これが、今の目標。

今、戦わなくてはいけない相手。

今、殺さなくちゃいけない相手。



なら、 殺す。



大和は、またもゾーンに入る。

まわりの進みが遅い。自分の速度が速い。

殺せる……!


先程トロールに肉薄した時とは比べものにならない速度で肉薄する。

そして、足に全力の薙ぎ払いを当てた。確かに、当てた。


だが、当たったのは、触手にだった。触手が一つバラバラになった。が、


ぞくっと、した。自分の全力の移動に、反応した。

つまり、自分と同等!自分と同じ!


あれ?それってつまり……


なんて考えてたら、九本の触手とベヒーモスの右前足が迫っていた。


あれ?俺死んじゃう?

なんて呑気に考えてた。

けど、すぐに、笑った。ニヤリと、口を歪ませた。


それからすぐ、蜻蛉斬りを構えた。

隙は、つくってくれるらしいから。

彼らが。


そう、彼らが。

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