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第四十二話 帰還

 浮上した旧王都、その大通りに当たるだろう広い道を俺たちは進んでいた、何かあるかもしれないのでレンカ達も出撃して艦の周りを守っている。

 旧王都の片側だけでも戦艦が通れるほど幅の広い舗装された道や、その脇に立ち並ぶ未来的な建物はレンカ達には衝撃的だったようで、皆物珍しそうにあたりを見渡していた。 


「ここが……旧王都……」

「しかし、当然ながら人の気配は無いな」


 建物などには目立った破損の後があちこちに見受けられ、千年前に激しい戦いがあったことを想起させる。


「貴重な……資料が……」

「もしかして、お宝とか眠ってるにゃあ!?」

「お宝と聞いたら~黙ってられませんね~」


 確かに千年間封印されていたのなら、何か珍しい物が眠っているかもしれないが……


「いや、時間が無いんだって」


 騎士団が侵攻してきている今、残念だが宝探しをしている余裕は無かった。


 大通りを暫く歩くと、交差点のようなところに差し掛かった、そこに到着した時俺は、ここから先の進路が何故か頭に思い浮かんだ。  

 リュミルさんと話した影響だろうか?


「えーっと、多分こっち」

「分かるんですか~」

「いや、なんとなく」


 皆は黙って付いて来てくれていたが、俺の要領を得ない答えに、何だか不安そうだった。

 俺にも良く分かってないのだから仕方ないんだけど……


「あ、ここだ」

「扉が勝手に開いたにゃあ!」


 夢で見た建物の前に差し掛かったとき、正面の重厚そうな扉が独りでに開いた。

 どうやらここがリュミルさんの言っていた場所らしい。

 建物の玄関に掛かっているプレートを見ると、文字が掠れていてよく読めなかったが、転送装置……のような事が書いてあるのが読み取れた。


 戦艦も通れる程広い扉の中に入ると、正面の通路の両脇に、ズラリと何かが並んでいるのが見えた。 

 

「この機体は!? 皆警戒しろ!」


 それはポルトルイスで戦った防衛装置のようだったが……


「……多分……大丈夫……」

「何?」

「これ、機能を停止してるみたいだ」


 その機体達には生気が感じられず、まるで動く気配が無かった。


「死んでるにゃあ?」

「まあ、そんなような物かな……」


 多分昔はこの建物の守衛だった様だけど、今は動力が停止しているのだろうか?

 何にせよ、この数と戦う事にならなくて助かったけど。 

 

 そんな事を考えながら通路を暫く進み、また巨大な扉を開けると。


「ここ……かな」

「何か~開けた場所に~出ました~」


 そこは天井が吹き抜けになっている広い神殿のような場所で、一段高い台の様な物が中央にあり、その四方には何らかの装置だろうか、未来的な外見の柱が四本設置されているのが見える。


「これが転送装置なのですか?」

「ここに何か書いてあるが……」


 レンカが中央の台の脇に置いてあるプレートの様な物を発見したが、読めない文字で書かれているようだ。


「……読め……ない」

「いや、多分これが転送装置って書いてあるんだと思う」

「読めるにゃあ?」

「うん、なんとなく」


 レンカ達が読めないのに、どうして俺が読めたんだろう……

 翻訳魔法のお陰か……?


 そんな俺の考えは、建物の奥の扉を破壊して現れた機動兵器によって中断された。

  

「何だ!?」

「なんかデカイのが出てきたにゃあ!」

「防衛……装置……!?」


 それはフォルムが幾分か凶暴になっており、サイズも一回りほど大きかったが、脚部が存在しないデザインや雰囲気などであの防衛装置と同系統の機体に感じられた。

 その機体は頭部の単眼を一瞬真っ赤に光らせると、一直線に俺たちへ向かってきた。


「こいつも暴走してるのか!?」

「来るぞ!」


 まずドゥーズミーユを後方に下がらせ、右腕のガトリングガンを乱射しながら接近してくる敵機を全機散開して回避。 

 丁度四機で敵機を囲むような位置に陣形を整える。


「丁度良い、新しい武装を験させて貰おう! 獄炎鎖剣!」


 レンカがそう告げると、長剣が幾つもの刃に分割され、それぞれが炎を纏い敵機へ襲い掛かった。

 よく見るとその刃達は鎖のような物で繋がれており、鞭のように操る事が出来る武器に見える。

 その炎の刃達が次々と不規則な機動で敵機に襲い掛かり、その装甲を抉っていく。


「にゃあも! アンカー射出!」


 レンカの攻撃から逃れようとした敵機が、ジルドリンの腰部から発射されたワイヤーアンカーによって絡め取られ、動きを封じられる。


「逃がさない! ってにゃあ!?」


 絡め取られた敵機に攻撃を仕掛けようとしたチェルシーだったが、頭部から予備動作無しで発射されたレーザーを避け切れずに……


「危ない……! エレメンタル・シールド……!」

「にゃ、ありがとうにゃあ……」


 そのレーザーはアルヴェルドの左手に装備された杖が空中に発生させた魔方陣のようなシールドによって防がれた。


「デストロイ・ナックル!」


 攻撃を防がれ、一瞬動きの止まった敵機の隙を付き、両腕を射出して攻撃、敵機の右肩を破壊する。


「体制を崩した、今だ!」

「獄炎蒼鎖斬!」


 その衝撃でバランスを崩した敵機を、蒼い炎を纏った刃達が一瞬でバラバラにした。


「倒した……?」


 そう一息ついたのもつかの間。


「にゃあ!?」

「なんか~鳴ってます~光ってます~!?」


 建物全体に警報のような物が鳴り響き、俺達のいた部屋の照明が、真っ赤に点滅し始めた。


「皆、取り合えず艦に戻っ……」


 只ならぬ雰囲気を察し、取り合えず避難しようとしたその時。


「この光は……!?」

「吸い込まれるにゃあ!」


 中央の台座が眩しく光り輝き、俺たちは逃げる間も無くその中に吸い込まれたのだった。


「ここは……?」「ううん……」「にゃああ……」

「皆無事か!?」

「艦は~大丈夫です~」


 皆無事なことを確認して、取り合えず転移してきたこの場所を見渡してみる。

 俺たちが目覚めたのは、幾つかの神秘的な柱が立ち並ぶ神殿のような場所であった、周りが岩壁に囲まれていて、洞窟の中のように思え……


「もしかして」

「隊長?」


 思わず機体を洞窟の外に走らせると、そこには予想通りの光景があった。


「ここは、まさか……!?」


 俺達は、俺がこの世界で最初に目覚めた、龍神の封印された洞窟に着いていたのだった。

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