第四十一話 古の都へ
魔王城の大会議室で、魔王と重臣達が急襲してきた騎士団への対応を話し合っていた。
「では、もうカレキュラス平原を突破されたと?」
魔王の言葉に、部下が頷く、先日取り返したばかりのカレキュラス平原を、こうもあっさり突破されるとは、魔王以下誰も予想していなかった事であった。
「奴ら、この時を待っていたのか……」
魔王軍は連戦連勝で、各地へ順調に進行していた、だがそれにより兵の分散が進み、中央を守る兵が減少していたのだ。
「こちらも王都へ兵を呼び戻そうとしていますが、騎士団の進軍速度が予想以上に早く……」
もちろん魔王軍も王都への守りを疎かにしていた訳ではなかったが、騎士団はこの一戦に全てを賭けるがごとく、大兵力を投入して一気に王都へと攻め入ってきており、その勢いを止めることは困難だった。
「こちらが勝利に酔って軍を各地に進める事を予想し、わざと兵を引かせていたと言う訳か」
騎士団に連戦連勝出来ていたのは、魔王軍の新型の性能やエルフ族の協力も大きかっただろうが、騎士団自体がこの作戦の為に魔王軍に敗退したように見せかけ、兵を一つに纏めていたのだ。
「それで、龍神は?」
魔王が傍らのオルガに問いかける、旧王都へ向かったとされるグランセイバー隊とは、一週間近くも連絡が取れていなかった。
魔王は知るよしもなかったが、グランセイバー隊への伝令は安全策を取って砂漠を迂回しており、ようやくポルトルイスへ到着した頃だったのだ。
「伝令を出しましたが未だ何も」
「そうか……」
一瞬顔を落としかけた魔王が、不安を振り払うように集まった部下達に呼びかける。
「我々は魔界を取り戻す後一歩まで来たのだ、奴らにも余裕は無いだろう、皆の者、ここが正念場だ、ここを凌げば魔界奪還も目の前ぞ!」
「おおーっ!」
檄を飛ばす魔王に部下も答え、熱気を保ったまま会議は続く、だが、その間にも騎士団は王都へ刻一刻と迫っていたのだった。
____________
医務室のベッドから起きた俺は、皆に事情を説明し、艦をすぐに旧王都へと向かわせていた。
「やっと起きたと思ったら、いきなり旧王都へ行きたいだなんて、急すぎるにゃあ」
「だが、騎士団が軍を進めているのなら、ここで手をこまねいている訳にも行くまい」
皆は夢で王都が襲われるのを見たなんて俺の話を半信半疑の様子だが信じてくれているようだ、これは俺も隊長として少しは信頼されてるということなのか、龍神絡みなら何が起きても不思議じゃないと思われているのか……
「心配掛けてたのにごめん、でも、リーゼやエリィさん達が危ないんだ」
「それにしても~この船は~海も進めるだなんて~便利ですね~」
陸上戦艦だったドゥーズミーユだが、今はガリス海を特に問題なく航行出来ていた。
「親方曰く、俺が寝てて暇だったからいろいろ機能追加したんだってさ」
「……私達の機体も……強くなった……」
どうやら親方は、皆の機体の武装や機能の強化も同時にやっていたらしい、暇だからって一週間でそこまで出来るなんて。
「はは、親方らし……」
そう答えようとした時、視界が一瞬ぶれ。
「隊長!?」
「大丈夫にゃあ!?」
ふらつき、倒れ掛かった俺を、隣にいたイルミさんが支えてくれた。
「ちょっと立ちくらみしただけたから……多分、ずっと寝てて急に起きたから体が慣れてないんだよ」
「それなら良いのだが……」
「大丈夫、無理はしないから」
心配そうに見つめる皆に空元気で答えるが、正直かなりしんどかった。
一週間も寝ていたのだから当然……なのかな、とこの時は特に気にも留めていなかった。
「ここが~旧王都ですよ~」
そうこうしている内に、旧王都まで到着したようだ。
艦橋からは、海の底に沈んでいる巨大な都市の姿が見える。
「でもここからどうやって……」
「おい坊主! 今すぐ格納庫へ来てくれ!」
伝送管から親方の声が慌てた響く、格納庫で何かあったのだろうか。
「親方? 何が……」
「いいから!」
肩を貸してもらいながら格納庫に急いで到着すると、そこには異様な光景が広がっていた。
「龍神が光ってる……にゃあ」
「これは一体……」
格納庫に鎮座するドラギルスが、目も眩む様なまばゆい光を放っていたのだ、その光は一見四方に広がっているようだが、よく見ると一点へ向かっているように見える。
「多分、呼び合ってるんだ」
「隊長?」
そう告げ、操縦席へ乗り込む、不思議な事に、乗り込んだ瞬間から体のダルさが消えていた。
「親方、格納庫空けてもらえますか?」
「おう……それはいいんだが、また戦闘か?」
「いえ、俺の予想通りなら……」
格納庫からゆっくりと出撃し、艦橋の真上に機体を置くと。
「光が、旧王都へ届いて……」
ドラギルスから発せられた光が、真っ直ぐに海の底の旧王都へ伸びていた。
「海が、割れる……!?」
「なんか揺れてるにゃあ!」
「……感じる……強い……力……」
そして、まるで幕が開くように海が真っ二つに割れると、凄まじい揺れと共に、巨大な都市が海上に浮上した。
荘厳な城壁に囲まれたそれは、千年の時を経てもなお、その優雅さと雄大さを保っているように見えた。
「これが旧王都?」
「なんか~浮いてきましたけど~あそこに入るんですか~」
ノーグスさんの不安げな問いに、あえてはっきりとした口調で答える。
「ええ、行きましょう、旧王都「エンディミュオン」へ!」




