表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/59

第十三話 響きあう心

 ドラギルスとインフェルノ・クリムゾンが戦いを繰り広げたあの廃鉱山に、鎧姿の男達が集まっていた。

 その中心にいるのは、シルクハットを被ったタキシード姿に長身の片眼鏡を掛けた男、十騎士の一人、"極氷"のガブリエルだった。


「ガブリエル様、ご命令通り魔獣を大穴へ放ってまいりました」

「ご苦労さまでした、これで確実に奴らの命運も尽きたでしょう」

「しかしよろしかったので?あれはサンダルフォン様より託された、王都攻略の切り札のはずでは?」

「私の決定に何か不満でも?」

「い、いえ……そのようなことは」


 不快そうに顔を歪めたガブリエルは、言い聞かせるように話す。


「相手は手負いとはいえあの"獄炎"、そしてその獄炎を跡一歩まで追い詰めた"龍神"なのですよ、やりすぎるということはありません、それに龍神の加護を失った魔王軍など、恐れるに足りませんよ」

「は、はぁ……」


 そんな時、息を切らせて軽装姿の男が走り込んで来た。


「伝令致します!本隊の編成が終了致しました、いつでも出撃可能です!」

「ふむ、では始めましょうか、魔王軍最後の日をね……」


 これから起こる惨劇に心を躍らせ、彼は心底楽しそうに笑みを浮かべながら、進軍を待つ部下の元へと歩き出したのだった。


__________________________________


 それは小さなビルほどはある巨大なライオンだった、しかしそれは俺の知っているライオンと大きな違いがあった、なんと下半身がまるで魚のように鱗に包まれ、後ろ足の代わりに大きな尾びれが付いていたのだった。


「なんだありゃ!?」

「おそらく魔獣、しかもかなり強力な部類に入る物だろうな」

「なんで急に、元々ここに住んでたとは思えないし……」

「聞いた事がある、騎士団が戦力として魔獣を捕獲していると」


 騎士団と聞いて、俺達をここに落としたシルクハット姿の男が思い浮かぶ。


「ってことは、あのガブなんとかって奴か!」

「ああ、恐らくガブリエルの仕業だ、ここまで極端な手を打ってくるとは、本気で私を亡き者にしたいようだな」


 魔獣の様子を伺いながら、俺達は状況を確認する、手持ちの武器は俺の腕輪とメタトロンの剣のみ、どう考えても、あの巨大な魔獣を倒すには力不足だ。


「ここは私に任せ、ヒロ殿は逃げろ!」


 鎧を着込み終わったメタトロンが叫ぶ


「いきなり何を!?」

「私には白兵戦の心得もある、だが貴殿を守りながら奴と戦うほどの余裕は無い」

「そんな……」


 悔しいが、彼女の言うとおりだろう、生身であんな巨大な怪物と戦うなんて、今まで普通の生活を送ってきた俺には到底出来っこない。


「安心してくれ、これでも私はセフィロトの十騎士が一人、獄炎のメタトロンだ、あんな図体が大きいだけの魚猫一匹、どうってことはない」

「メタトロン……」


 魔獣がもうそこまで迫ってきた、話し合っている時間は無いだろう


「一つだけ、約束してくれ」

「?」

「俺はまだ、君の本名を……メタトロンじゃない君の名前を聞いてない、だから、次に会った時に教えてくれないか、君の、本当の名前を」


 正直な所、なんでそんなことを言い出したのかってのは、俺にも良く分からなかった、でもそうでも言わないと、彼女が居なくなってしまうような、そんな気がしたのだ。

 メタトロンが本当の名前じゃないって事を俺は確信していた、元々女の子にしては変な名前だなとは思ってたけど、確信に変わったのは、さっきの彼女の言葉を聴いてからだった。

 俺の言葉に彼女は少しだけ驚いたような顔をしてから、ゆっくりと頷いた。


「……分かった」


 そして、彼女は魔獣に向かって走り出して行った。


__________________________________

 驚いた、まさか、あんな事を言われるとは。

 今まで見た事も無いような凶悪な魔獣に対面しながら、それでも私の心は、とても晴れやかだった。


「私の、本当の名前……」


 彼には本当に驚かされる、何故だろう、彼に出会ってから、私は私でなくなってしまったようだ。


「彼のためにも、生き延びなければならないな」


 魔獣は目の前に現れた鎧姿の私を見て警戒しているようだ、その隙を突いて、火球を奴に叩きこむ。


「獄炎乱舞!」


 いくつもの火球が巨体に吸い込まれていく、だが巨大すぎるのか、大したダメージは与えられていないようだ。

 煙が晴れる間も無く、魔獣の鋭い爪が連続で襲ってくる。


「くっ」


 咄嗟に側面に飛びのいてかわす、そのまま後方に下がりながら次の手を考えていたその時、魔獣の口から、巨大な竜巻が発せられた、これは、避け切れない……!?


「ぐうっ!」


 そのまま吹き飛ばされた私は、受身も取れずに硬い地面に叩きつけられる、そして倒れこんだ私に、魔獣の牙が襲い掛かってきた。


「それくらいで!」


 間一髪で身を翻して魔獣の顔を蹴って飛び上がり、魔獣の頭上から火球を一点に連射する。


「獄炎連舞!」


 そしてそのまま頭部に長剣を突き刺そうとした、が。


「グオオオオ!!!」


 突如として至近距離で発せられた魔獣の咆哮に、一瞬動きが止まる、そして180度その巨体を回転させた魔獣の巨大な尾が、私に直撃した。

 私は、一瞬何が起こったのか分からなかった、気が付くと私は、洞窟の岩肌に思い切り体を叩きつけられ、そのまま硬い地面に落下していた。

 傷を負いすぎたようだ、体が動かない、倒れたままの私から血がドクドクと流れ出していくのが分かる。


「約束、守れなかったなぁ……」


 動けない私に魔獣が迫ってくる、そして、止めとばかりにその巨大な腕が振り下ろされようとした、その時。


「させるかあ!」


 鋼鉄の巨大な腕が、魔獣を凄まじい勢いで吹き飛ばしたのだった。


__________________________________


「大丈夫か!」


 俺は機体に膝を付かせ、倒れている彼女を操縦席に回収する、酷い怪我だ、腕輪の治癒魔法を試してみるが、専門家ではない俺には、効いているのか分からない


「な…何故その機体が…」

「今朝機体を見たときに、違和感があったんだ、昨日の戦いで壊れた所が治ってるように見えて、でも機体は動かないままだし、俺の目の錯覚だろうと思ってたんだ」


 吹っ飛んで見えなくなった魔獣の様子を気にしながら応える、あれで倒してれば良いんだけど。


「メタトロンと分かれてから、それを思い出して、もしかしてと思って機体のところに行ったら……」

「行ったら?」

「信じられない事にまるで新品みたいに綺麗に直ってたんだ、それで乗り込んでみたら、普通に動き出してくれて、助けに来れたんだ」


 前々から出鱈目な性能のロボットだと思っていたが、まさか自己修復機能まで持ち合わせているとは、この分だと、動力も永久機関とかなのだろうか?

 

 そんな事を考えていると、さっき吹っ飛ばした魔獣が、こちらに物凄い勢いで突っ込んでくるのが見えた。


「まだ動けるのか!?」


 突っ込んできた魔獣を、両手で受け止め、その勢いを活かして、空中に投げ飛ばす。


「これで!」


 空中でもがいている敵目掛け、右手から最大までチャージしたインフィニティ・ブラストを放つ、空中で避けられる訳も無く、一瞬で魔獣はあっけなく消滅した。


「よし!」

「やったな……ヒロ殿」

「大丈夫か?」

「ああ、先程からの治癒魔法のおかげで、傷は塞がったようだ」

「そっか、良かった……」


 どうやらまた腕輪に助けられたようだ。

 

 そんな時、前触れも無く洞窟全体を大きな揺れが襲った。


「ヒロ殿」

「これは…」


 先程の戦いの影響なのか?そう考える暇も無く、突如洞窟の天井が、物凄い勢いで崩れ落ちてきた。

 と同時に、機体の足元の岩場もまた一瞬で崩れ去った。


「へっ?」


 慌てて機体を飛び上がらせようとするが、上から落下してくる岩石の勢いと量が凄すぎて、まるで身動きが取れない。


「また落ちるのかあああ!?」


俺達はまた、先の見えない深い暗闇の中へと落ちていくのだった……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ