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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第59話 グルメ調査


 朝方色々あって、皆に心配そうな顔を向けられてしまったが。

 妹達も元気にお仕事に向かった様なので、兄貴の俺がいつまでもメソメソしている訳にもいかず。


 「結局俺等は何すれば良いの?」


 『旨いもん探しに行くって言ってたぞ』


 「グルメ調査か! 任せろ!」


 いつも以上に元気な声を上げて返事をしてみれば、ブサ猫さんからは未だ心配そうな顔を向けられてしまった。

 こいつも結構心配性だよね、まぁ俺がいつもトラブルに巻き込まれるから余計になんだろうけど。

 よし、今回は非常に大人しく仕事をこなそう。

 せっかく知らない街に来ているのだ。

 一人で動き回ってお約束の迷子になったり、変な奴に攫われたりしない様にシャームの手は離さない。

 これで問題ない、筈!

 とか何とか一人で納得して見せた訳だが、ものっ凄く情けない事言ってるよね俺。

 今では妹ですら働いているのに、俺年上狼美女に引率してもらいながらご飯探すだけだよ。


 「う~む……」


 『今度はどうした?』


 「俺ももうちょっと、ちゃんと仕事出来ないものかなぁと」


 『無理、諦めろ。大人しくしてろ』


 「ウチの猫マジで酷い」


 そんな訳で、皆揃って美味しい物を探しに街中を歩き出す。

 やっぱり街によって特徴はあるようで、そこら中で珍しい料理なんかも沢山売られていた。

 夜に見た時は、どちらかと言えば酒の肴になりそうな物がメインだった気がするけど、昼間は普通のご飯とか軽食の類が多い様だ。

 あとは良く分からない骨とう品みたいなの売ってる店とかもある。

 という事で、そこら中にキョロキョロと視線を向けながら歩いて行けば。


 「スー、――?」


 グラベルがニコニコしながら、何やら声を掛けて来た。

 何故かリリシアと二人、フードを深く被っておられるが……何故に?

 雨も降っていなければ、街中だからフードを被る程寒くはないと思うんだけど。


 『何か食いたい物はあるかってよ』


 「え、いきなり俺が選んで良いの? グルメ調査の仕事なのに」


 まぁ分からない事は放っておいて、食べて良いと言うなら好きな物を選ばせて頂こう。

 露店だけではなくお店の方も色々と立ち並んでおり、非常に目移りしてしまう始末。

 なんだろう、今歩いている場所を表現するなら……中華街って感じの店がズラァっと並んでる。

 そう言えば妹のパーティにもチャイナドレスみたいなのを着ている人がいたけど、こっちの国出身なのかな?

 とか何とか、関係ない事を考えながら様々なお店を覗き込んでいれば。


 「いや、え? 何あれ、デッッカ」


 『お? 何だありゃ、アレも海老か?』


 これでもかとばかりに露店の先に吊るされた、蟹の爪。

 でもデカいのだ、とにかくデカいのだ。

 俺からしたら両手で持たないと無理ってくらいに、巨大。


 「――――?」


 あまりにもガン見していたせいか、店員さんが笑いながら蟹の爪を指さして何やら説明し始めてしまった。

 不味い、何を言っているのか全く分からない。

 更にこの店員さん、えらく早口で喋っているのでマジで欠片も聞き取れない。

 ニコォっとむりやり笑みを浮かべて、どうにか話し終わるのを待っていれば。


 「――、――」


 グラベルが財布を取り出し、何枚かの硬貨を渡し始めたでは無いか。

 確かに気にはなっていたけど、最初食べるのがこれで良いのかな。

 どちらかと言えばインパクト最優先って感じの見た目に気を取られ、どういう料理なのかも見てないんだけど。

 などと思いながら、慌てていれば。


 「スー」


 まさに孫に何かを買い与える時の微笑みを浮かべたお爺ちゃんが、とんでもない物を差し出して来た。

 先程のデカい爪。

 その原型をそのままに、爪の根元から先はコロッケの様な衣が付いている。

 ごつごつした爪の部分を手にして受け取ってみれば、結構な重さ。

 こ、これはまさか……。


 「超巨大蟹クリームコロッケ?」


 『旨いのか?』


 「ここまでデカいのは食べた事ないから分かんない……」


 あまりの見た目の凄さに唖然としていれば、他の皆は何やら蟹の脚を受け取っているではないか。

 そっちもデカい、もはや本体がどれ程デカいのか想像も出来ない。

 思わずポカンと口を開けながら店の人を眺めていると、どうやら俺の視線に気が付いたらしく。


 「――、――?」


 「うわっ、でっか!?」


 『生きてたらお前が食われる側になりそうだな』


 店員さんが俺に向かって掲げて見せたのは、恐らくこの蟹の甲羅。

 なんだありゃ、もはや盾じゃん。なんて感想が生れてしまう程。

 ビルの言う通り、生きている状態だったら絶対に遭遇したくない大きさだ。


 『ま、今は死んでるからな。さっさと食おうぜ』


 「言い方……」


 笑顔の店員さんと手を振って別れ、俺達は再び歩きはじめる。

 熱い内に食べてみたいけど、このサイズを歩きながら食べていたら事故しか起こらない気がするのでまだ放置。

 という訳でデカい蟹クリームコロッケ? を両手に、座れる場所が無いのか探していれば。


 『おい、スー。逸れるなよ? そっちで座って食うとさ』


 「おぉ、やったぜ」


 向かった先には何やらテラス席の様な物が幾つか。

 どこかのお店のスペースじゃないの? とか不安になってしまったが、どうやら広場に設置された憩いの場所的な所だったらしく。

 そこいらの露店で購入したのか、周りの人を見ても各々違うモノを食べている。


 「んじゃ食べてみよっか」


 『溢すなよ?』


 「わかってらい、と言いたい所だけど……ここまでデカいと自信無い」


 そんな会話をしながら席に着き、皆揃ってでっかい蟹に齧り付いたのであった。


 ――――


 結果、とても美味しかったです。

 とだけ言えれば良かったのだが。


 「く、喰い辛かった……」


 『流石にあの量は飽きるな』


 衣の中身はやはり蟹クリームコロッケだった。

 しかしながら蟹成分が多いのか、確かに蟹食ってるぜって気分にはなったが……齧れば濃厚、更にクリームが次々と溢れて来て溢さない様に食べるのが非常に困難。

 慌てて口に入れればジワリと広がっていく旨味と、とんでもない熱さ。

 度々火傷しそうになりながらどうにか食べ進めて行った訳だが、あまりの苦戦っぷりにグラベルから助けの手が伸び、半分以上食べてもらう結果に。

 お陰で手が蟹クリームだらけになってしまったが、そちらは小動物達が食らい付いて来た。

 そりゃもう俺の手を貪っているのではないかという程の勢いでベロベロされた程。

 兎だけはいつものご飯だったので、相変わらず不満そうな顔をしていたが。


 『俺は脚の方が好きだな』


 「あっちも旨かったねぇ、結局特大サイズだけど」


 蟹の脚、旨かった。

 ガブリと食いついても口からはみ出てしまう様な大きさなのに、しっかりと味が凝縮しているかの様。

 何やらソースも頂いたらしく、ソイツにちょんちょんしながら食べるとまた味が化ける。

 夢中になって食らい付く程ではあったのだが……殻が、硬いのだ。

 蟹の脚と言えばバキッとやってズルッと引きずり出すアレ。

 子供の頃はアレがやりたいが為だけに、蟹が食いたいと親にねだった事もあった程。

 だというのに、前回の海老同様全然バキッてのが出来ない。

 結局そちらもグラベルにお願いして、俺と小動物はただ食べるだけ。

 コレは良くない。

 食べる前の工程で全て手を借りている様では、俺も小動物の一匹になってしまう。

 ご飯くらいはみんなに迷惑を掛けずに、ゆっくりのんびり食べたいというモノだ。


 「ふーむ、なかなか難しいねぇ。自立するのはいつになる事やら、なぁんも出来ないぞ俺」


 『またそんな事言ってんのか。まだチビなんだから、大人しく育てられときゃ良いんだよ』


 相変らずビルは俺の事を子供扱いしてくるが、いつまでもそういう訳にはいかないだろう。

 これでも中学卒業間近だったのだ。

 来年には高校に上がり、数年後には立派に働ける歳になる頃合いな訳だし。

 場合によっては俺と同い年でも働いている人だって居るくらいだ、あまりのんべんだらりとする訳にもいかないだろう。

 しかも、ねぇ?

 妹はもう働いているというのが、その……非常に居心地の悪さを感じると言いますか。


 「そうは言っても、俺も働ける歳なの。いつまでもヒモじゃ恰好つかないでしょ」


 なんて事を呟きながら席から飛び降りてみれば、すぐさまリリシアが寄って来てハンカチで口を拭いてくれた。

 言ってる傍から、コレである。

 内容はビルにしか聞かれていないとしても、微妙に恥ずかしいんですけど。


 『しばらくは諦めろ、マジで。コイツ等だってそんな事求めてねぇよ』


 こういう時にからかって来たりしないビル、流石です。

 俺だったら絶対「自立云々言ってソレかい」とか突っ込みを入れちゃっている気がする。

 やっぱり俺はまだまだガキという事なんだろう。

 “こっち側”に来てから、周りに大人ばかりだったからあまり意識しなかったけど。

 妹達を見るとどうしても……なんかなぁって思っちゃったりする訳ですよ。

 思わずため息を溢したらリリシアから不安そうな瞳を向けられてしまい、慌てて笑顔を作った。


 『んな事考えてる内はロクな事にならねぇよ。育って、力付けて、一匹で生きて行けるようなってから親元を離れる。人間だって俺等だって変わらねぇだろ、そんなもん』


 「猫でもそういうもん? 結構子供ほっぽり出してる野良猫とか見る気がするけど」


 『そう見えてもどっかで見てるもんさ、親なんてのはな』


 やけに格好良い事を言いながら、ペロペロと毛繕いを始めるビル。

 うーむ、まぁ確かに。

 大した能力も筋力もない俺は、今すぐ何かをしようとしても多分無理だろう。

 そもそも言葉さえ未だ分からないんだから、一人で生きていくなんて到底無理なんだけど。


 「もうちょっとゆっくり考えてみる」


 『そうしろそうしろ。お前は食い物探して、旨い旨いって食ってる方がソレっぽいんだから』


 「何かその言い方は嫌だなぁ……」


 『ソレで喜ぶ奴も居るって言ってんだよ。お前が作り笑いなんぞ浮かべてると、どいつもこいつも辛気臭い事しか喋らなくなるから鬱陶しい』


 ビルに言われて皆の顔を見てみれば、誰しも少しだけ眉を寄せながら困った様に笑っていた。

 あらら、ブサ猫様の言う通り無用な心配を掛けてしまったらしい。

 寝起きがアレだったから、余計に気を遣わせてしまっているのかもしれないが。

 それでも、やはり皆にこういう顔をして欲しい訳ではない。

 俺の問題なんて、俺が頑張れば良いだけなんだから。


 「いよしっ! 気合い入れ直してグルメ探しの旅の続きだ!」


 『おー、そうすっかぁ』


 先程のテンションとはえらい違いのビルが欠伸をしながら椅子から飛び降り、その他小動物達もワラワラと足元に集まって来た。

 皆には大丈夫だと言葉で伝えられない分、行動で表現しなくては。

 という訳で、ニカッと笑ってから再び周囲に視線を投げたその時。


 「――、――?」


 「はい?」


 急に、後ろから声を掛けられてしまった。

 そりゃもう誰かの声が聞えたとかじゃなくて、間違いなく俺に話しかけているかのような距離で。


 「どちら様?」


 振り返った先には、フードで半分くらい顔を隠した……女の子? と、なかなかガタイの良い男性が二人。

 後ろの二人は平服ではあるものの、腰に剣を下げており眼つきも鋭い。

 護衛の方ですかね? そんなにジロッと見られると怖いんですけど。

 などとタジタジになっていれば、フード女子は俺の両手を掴んで何やら必死に訴えかけて来る。

 何? 誰? 逆ナン?

 いや、今の俺女児だしナンパではないのか。


 「ビ、ビル~……」


 『頼れとは言ったが、早ぇよ。というか、いつもこんなだなお前は』


 通訳御猫様からは、いつも通りの呆れた顔を向けられてしまったのであった。


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