エピローグ:私が最高に幸福なら、相対的にみんな不幸ですわー!
コレハは王太子妃になった。
聖女を逃がすまいという王家は、あの卒業パーティーの日、本当に結婚を実現させた。式は盛大に見せびらかしたいというコレハの希望もあり卒業してからということになったが、コレハの籍はダイード王家に入ってコレハ・ダイードとなった。
より正確には聖女として実家のミドルネームが残ったので、コレハ・ナイアトホテプ・ダイードである。
なんとなくではあるが……ミドルネームがあると無いで死亡フラグの有無が変わってきそうな気がしたので、コレハ的に喜んで受け入れた。
そして、学園生活でも2年からはハークスと同じクラスになり、過剰なまでにイチャイチャとして過ごして周りに見せびらかした。
だが誰も文句は言えないのだ、なにせ聖女と王太子である。しかも成績もトップクラス。「学園でイチャイチャできるのは今だけなのだ、すまん、許せ!」とハークスの権力に物言わさせた。権力の無駄遣いである。
ハークスはコレハ以外の女性とは一切接触せず、コレハを膝の上に座らせ授業を受けることもあった。独身の先生がぐぬぬと呻きチョークを粉砕していたのはいい思い出だ。
「コレハ様。今日も御機嫌麗しゅう」
「まぁ! それがネイルアートというものですの? 可愛らしくていいですわね!」
「王太子妃殿下様、我々の派閥に入れない者共が悔しがってましたわ!」
と、そういう具合に取り巻きも増えた。ゲームが終わったからだろう、とても喜ばしい。
勿論、サマーはこの取り巻きの筆頭である。聖女なので。
お世話する役も引き続きサマーである。サマーは化粧をしているときは聖女ヒィロとして寄り添い、そうでない時はサマーとして普通に侍った。
身分が必要な時とそうでない時を使い分けるあたり、流石優秀な従者である。
尚、サマーはクルシュと婚約した。「本当はモトモット様と結婚できればコレハ様の義妹になれたんですが、婚約者様と仲良いし畏れ多いので義従姉妹で妥協します。第二王子? コレハ様の敵派閥じゃないですか。もう私とコレハ様の関係バレてるので色々無理ですね」だそうだ。
そんなクルシュは聖女権限でたまに女装させられるらしい。縦ロールのエクステもつけられてジェネリックコレハである。あわれ。
あと振られたケンホは剣の道にのめり込んだ。あわれ。
そんな学園生活も終わり、卒業と同時に結婚式をした。
国中から祝福されつつも、パレードで町を行くときに数人いた悔しそうな、羨ましそうな顔をコレハは見逃さなかった。その顔が見たかった!!
「うふふ……! こうして下々の顔を見るのは、ホントいいですわねぇ!」
「……うん、いい仕事をしてくれているな。さすが劇団フォーシーズン」
「ハークス様、何か言いまして?」
「ああ。以前から懇意にしてる、パレードの演出を頼んだ劇団がな。まぁなんでもないよコレハ」
その後もコレハは独立貴族となったキャンベル・ハスターに冷暖房の魔道具を作らせたり、デジタル通信の魔道具を作らせたり、芋焼酎を作る魔道具を作らせたりと、と、引き続き魔道具関連でも活躍。
孤児院の視察も積極的に行い、従業員の確保に精を出し、「オーッホッホッホ! 商人どもは権力、財力、人脈、開発力、全てにおいて我がナイアトホテプ商会を上回れない! くやしい? くやしいですわねぇー!! 王家で商売したら文字通り殿様商売で最強ですわぁーーー!!」と高笑いした。
王家の財力はかつてないほどに潤った。
また、貴族社会の派閥争いにおいてもコレハは活躍した。むしろ輝いた。敵対派閥にざまぁをくらわすのは、性に合い過ぎていたのである!
武器も山ほどあった。薬草、化粧品、魔道具……なにより王家で聖女という地位。無敵だった。
ただ、革命死亡エンドだけは勘弁だったのでそうならないようにだけは気を付けた。
「オーッホッホッホ! 貴族至上主義の連中は平民を可愛がるだけでざまぁできてお手軽ですわぁー! 王家がそういう方針なのだから、従わないのはお前らが悪い、ですわよ! 正義は私の側にありですわー!!」
「はっはっは、我が妻は率先して平民でも優秀な者を取り立てている。さすがだな」
「貴族だろうが平民だろうが無能なやつは無能! 有能なのは有能なのですわ! オーッホッホッホ!……ねぇハークス様? あなたはどっちかしらぁ?」
「……有能でありたいと思ってはいるぞ!」
「王族で、しかも王太子で無能とか救いようがありませんものねぇー! せいぜいお頑張りあそばせ!! 私の地位と名誉とざまぁのために!!
そんな風に、たまに夫であるハークスを叱咤激励しつつ、『恩寵の聖女』と崇められつつ、コレハは幸せに暮らした。
「おぐっふ!……うぐぐ」
「ど、どうしたコレハ!?」
「お腹を蹴られたのですわ……ちくしょう! 私の腹を蹴って無事だなんて、お前くらいですわよ! さっさと生まれてきなさいなー!?」
「あー……でもまぁ、お前の子だぞ? そりゃ親くらい蹴るさ」
「私、お父様を蹴ったことなんてありませんわよ!?」
……生まれた子は、乳母に割り込んできた聖女に無茶苦茶可愛がられたり、近衛騎士のケンホ副長に鍛えられたりもしたそうだ。
そんなコレハの座右の銘は『私が最高に幸福なら、それ以外は全員相対的に不幸ですわ! ざまぁー!』であり、自分が幸せになるために全力で国を発展させ色々貢がせたとか。
~完~
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