今年も嬉しい楽しい誕生日
今回は判りやすく誕生日回です。
今までで一番長丁場になってしまったな、と
書いてから思いました。
まあ、前に書いてた話が割と短いので
その反動なのか、それとも
何となく書いたら長くなってしまったのか
どちらかは判りませんが。
一応節目である10歳と言う事である意味
記念…になったら良いなとは思います。
ラピスラズリの月と言うのは、秋の入り口でもあるが、夏の終わりでもある。そう書くとティシュヴァンフォーレにも四季が存在するんだな、とは思うが、恐らくフォルトニア様が賢者様を呼んだ際に出来るだけ違和感を無くそうとして、調整したりした可能性もありそうなんだよね。まあ、元々あったけどそれを調整したかもしれないし、そこはまたフォルトニア様と夢で会った時に機会があれば聞いてみよう。私がその時この質問を覚えていたら、にはなりそうだけど。
そんなラピスラズリの月も残るは後1日になっていたので、明後日からはオパールの月が始まる。オパールの月が近付いて来ると、朝早くや夕方以降はだいぶ涼しくなって来ていて、寝巻きも長袖でちょうど良いくらいだ。昼間はまだ五分袖や七分袖とかでないと少し暑いかな、とは思う。体感気温とかって人によって違うから、私にとっては、になるのだけれどね。中には半袖でちょうど良い暑がりな人や、長袖でないと涼しいって言う寒がりな人も世の中にはいるだろうから、一概には言えないんじゃないかな。まあ、そんなうんちくに似たような前世で得た情報の話はさておき、私は調べたいものがまたあったので、帰りに図書館に寄って本を借りてから家路に就いたのが、ついさっきの話だ。パンの歴史については、中身を読んでノートにまとめたので、次はこの世界にある色んなパンについて、どんなものがあるのかを知りたくて様々な本を借りてきた。何しろティシュヴァンフォーレでの主食はパンだから、たくさんあると思って借りてきたんだけれどね。図書館にあるだけでも何十冊とあったので、何日かに分けて調べて読む事にした。うん、やっぱり主食になる食べ物に関する資料だから、いっぱいあるよね。多分これ、誕生日が過ぎても全部読みきれない気がして来るくらい蔵書があったので、一部しか借りる事は出来なかった。考えてみて欲しい、10歳の少女が本を何十冊と持ち歩けるかどうかを。普通に考えると無理と言うか、持ち歩いていたら、物理的におかしいと思うので数冊で済ませておいた。ディートハルト辺りに本を持ってもらえば、もっと借りる事も出来たと思うけど、そんなに急いで調べるものでもないのでこれで良かった気もする。いやだってね、多分ティシュヴァンフォーレにおけるお米と同じ品種の植物を探しに行けるのは、もっと私が大人になってからだろうし、まだまだ主食はパンかパスタみたいなものになると思う。正確にはパティスリーとこの世界では呼ばれているが、ショートパスタが主流、と言うのが特徴だ。ロングパスタはまだあまり広まってないので、短いパスタを食卓で見かける事が多い。パティスリーって確かフランス語だったと思うけど、この呼び方がティシュヴァンフォーレでは浸透しているみたい。ロングパスタはあまり浸透してないので、誰かが美味しいロングパスタやこうしたら食べやすいよ、って言うやり方を広めたらもっと浸透しそうな気もする。ただそれは、まだまだ先の話になりそうだけれど。ともかく、私は借りてきたパンに関する本を宿題の合間に読む事にした。
やはりパンに関する本は多数あり過ぎて、何日かに分けて読んでいたらもう後1週間で誕生日、なんて時期にまでなっていた。私の誕生日はオパールの月の半ばくらいにあるので、ちょうどその月の折り返しが近いと言うのも実感したりもする。そして去年辺りからになるが、お父様やお母様は私に何気なく誕生日には何が欲しいのかをリサーチするような質問をされるので、サプライズよりは確実性を重視しているのかもしれない。まあ、そりゃあ何が欲しい?って事前に聞かれたら、誕生日プレゼントだろうな、とは普通思うよね。誕生日がクリスマスだとか祝日と被ったりしなければの話になるけど。あれ、でもティシュヴァンフォーレにはクリスマスってなかったような気がするな。また今度調べてみよう。フェリクス兄様に至っては、普段はウィシュトヴァラの王城に勤務しているので、手紙で聞いて来たっけ。お城で働く琥珀騎士団に所属しているのだが、仕事も勤務範囲も広いので、向こうにある寮でフェリクス兄様は暮らしている。騎士団の寮、と言っても広くて綺麗でそこまで不自由はない所なのだと言う話は手紙にも書いてあったので、そこまで不便はないのだろう。ただ、休みが不定期である為、なかなかまとまった休みを取って家に帰る事が出来ないのが不満と言えば不満だ、とも言っていた。まあ、フェリクス兄様は今年の春に結婚したばかりだし、デルフィーナ姉様や家族が恋しいのは仕方のない事かもしれないね。パトリシア姉様やデルフィーナ姉様は、多分私と接する時間もお母様と同じくらい長いから、ちょっと聞かれるくらいだ。そうした日々が誕生日前に続いて、ついに私の誕生日がやって来たが、まだ成人していないし、あまり盛大にやったりはしないので、ちょっとしたホームパーティーみたいな感じの誕生日パーティーになっていた。
なお、食パンのレシピはちゃんとフォルトニア様がジュリエッタを通じて渡してくれていた。どういう渡され方だったかと言うと、誕生日前日の朝にジュリエッタの胴体に筒のようなものが巻かれていて、筒にはまるで賞状のように丸めてレシピの書かれた紙が数枚入っていた。筒にはしっかりとフォルトニア様の愛したとされる花の紋様が刻まれていた。紙にも同じような紋様の透かしが入っていると言う徹底ぶりだ。紙に書かれていた中身はレシピと、大きな長方形の金属型に入れて焼くので、焼く為に必要なものについてまで記載されていた。そうだよね、パンを焼く為の型もいるよね。何枚か入っていた紙には、基礎的な事は書いてあったので、柔らかさや焼き加減については料理人が試行錯誤して自力で理想の食パンを産み出してくれ、と言う事なのかもしれない。まあ、そこまで深く考えてこのレシピが送られたかどうかは、フォルトニア様にしか判らないし、あくまでも私の予想なので、違うかもしれないけど。話が脱線してしまったが、入手したレシピは真っ先にお母様に報告してから、ハインリッヒが精査し、料理長であるリカルドの手へと渡った。金属型については、またお父様とも話をして調理器具を作る職人に相談する、と言う結果に落ち着いた。レシピ自体は入手出来たけど、食パンが作れるまではもう少し時間がかかりそうだ。
それが昨日の出来事だったので、何時も以上に昨日はお屋敷の中が慌ただしくなっていた。何しろ、私の誕生日が翌日に控えていたので、そもそも前日は準備で忙しくなると言うのに、突然の事に忙しさに拍車がかかってしまったものだから、もう昨夜寝る前とかはみんなヘトヘトになってしまっていたのではないだろうか。そこは全員プロなので、表には出さないかもしれないけど、後でしっかり労った方が良いかもしれない。疲労を微塵も顔に出さないヘラルダやハインリッヒ達に感謝しながら、まず最初にお母様からプレゼントを渡された。お母様からのプレゼントは可愛らしい髪留めだ。髪留めって、そう言えばあまり意識した事がなかったな。ライトアプリコットカラーのリボンと鮮やかなネオンブルーのトルマリンがあしらわれた髪留めで、リボンはヒラヒラとしているのが女の子らしさを際立たせている気もする。これは結構高価なものなのではないだろうか。
「ありがとうございます、お母様。素敵な髪留めですね。」
「ええ、女の子らしいものを、と思ってそれにしたのですよ。ミレーナも今年で10歳、もう何年かしたら、淑女としての振る舞いも覚えなくてはなりませんからね。その準備として、まずは身嗜みから、とも考えたのです。」
そうか、確かに後3~4年もすれば私もパトリシア姉様みたいに淑女としてのお勉強も始まるし、ちょっと早いけど自覚を持たせる為にって事なんだろうな。お父様は苦笑いをして、まだ気が早いんじゃないか、と呟いていたけど、これはこれで良いものだと思う。可愛らしい髪留めは、入っていた箱に入れ直して取り敢えず机に置いておく。次はお父様からのプレゼントだ。お父様からは、私が欲しかった本が何冊かと、ボールペン魔道具だった。欲しかった本はセレネドナについて書かれた本と、冒険小説だ。女の子が冒険小説?と思われるかもしれないが、私よりもう少し上のお姉様方の間で少し流行っているので、私も読みたくなった、と言うのが理由だ。まだ私は10歳になったばかりだし、恋愛小説なんかを読むのは早いので、これて良かったんじゃないかとは思う。まあ、後数年したら、ちょっとは心境の変化とかがあるかもしれないけど、今の所は恋愛とかに興味が出てきたりはしていない。こう言うのは自然と感情が芽生えるだろうし、まだ先の話だろうしね。お父様から貰った本は、ディートハルトが私の部屋の本棚へと持って行ってくれた。お父様の次はデルフィーナ姉様からのプレゼントだった。机の上にあったのはぬいぐるみ…かと思ったが、ぬいぐるみの首辺りには可愛らしいペンダントがぶら下がっていた。ピンクのトルマリンを花の形にしたペンダントは、年頃の女の子なら欲しがるに違いないデザインで、一緒に貰ったテディベアと呼ばれるくまのぬいぐるみもふかふかで抱き心地も良さそうだ。これは、10歳と言っても私はまだ子供だと実感するくらいにぬいぐるみは嬉しい贈り物で、ついつい抱き締めてうっとりしてしまった。
「デルフィーナ姉様、ありがとうございます。とっても可愛くて抱き心地の良いぬいぐるみ、嬉しいです。」
「うふふ、そうだろうと思って選んだ甲斐がありましたわ。ペンダントも、そのうちに使ってみて下さいな。」
「はい、素敵なプレゼント、ありがとうございます。」
ぬいぐるみは、これもまた枕元に置く事が決定した。前に貰ったぬいぐるみと交互に抱き締めて寝よう。主に秋冬にはって話だけれど。夏場にぬいぐるみを抱き締めるのは、ちょっとする気にはなれない。デルフィーナ姉様から貰ったぬいぐみは一旦置いといて、フェリクス兄様からのプレゼントを受け取る。中身は可愛らしいデザインをしたオルゴールだった。猫と蝶々、そして星や花が描かれていて、色合いも白地にカラフルなそれらの模様が鮮やかに映えているのは何時までも見ていられそうだ。暫く見つめていたが、まだパトリシア姉様のプレゼントを受け取っていないので、オルゴールも横に一旦置いておく。パトリシア姉様からの誕生日プレゼントは…淡い水色に白い猫の絵が描かれた可愛らしいデザインのお財布だった。正確には小銭入れ的なものだけど、お小遣いを入れておくにはちょうど良い感じだ。
「私もミレーナくらいの年にお小遣いで色々買いたいけど、お金はベラドンナに預けたりしていたわ。でも、お忍びで買い物に行ったりする時に自分のお財布があれば、って思ったもの。」
「パトリシア姉様も、私くらいの年の頃にお財布を手に入れたのですか?」
「ええ、あの時はお父様にねだったけれどね。今は自分で選んで買った財布を使ってるけど、ミレーナの好みくらいは判ってるから、それにしたの。」
「ありがとうございます。とっても可愛いデザインで嬉しいです…!」
私は思ったよりも自分好みのデザインだったお財布を入手出来た事も、パトリシア姉様が私を思って選んでくれた事も嬉しくて暫くはしゃいでしまった。流石に数分後には落ち着いたけどね。嬉しいものは嬉しいのだから、仕方がない気もする。それに、パトリシア姉様の言う通りヘラルダとお店に買い物へと行った時は、持っているお金をしまう財布を自分では持っていないので、ヘラルダが持っているお財布に預けてある状態で買い物をしている。確かにちょっとだけ不便だな、とは思っていた所だったので、ありがたく貰っておこう。全てのプレゼントを受け取り、改めて私はお礼を言って頭を下げると、お父様やお母様、フェリクス兄様やデルフィーナ姉様、パトリシア姉様もみんな私の頭を撫でて嬉しそうにしていた。誕生日と言うのは、贈る側も受け取る側も何故か嬉しくなる日である、としみじみ思った一日になったのだった。お料理もデザートも美味しかったし、家族水入らずなのも、楽しさを増加させる一因なようにも思う。
そしてその日の夜、デルフィーナ姉様から貰ったテディベアを抱き締め、以前に貰ったぬいぐるみを枕元に置いて、ジュリエッタは私に寄り添うように布団に入って来たので、ぬくぬくと暖かな気持ちで眠りについた。
翌朝、誕生日が終わり、何時も通りの一日が始まる。昨日で10歳になった私だが、誕生日を迎えたから、と言ってどこか突然成長したり、心境の変化が大きく変わった、みたいな事は全くなかった。一日で急成長なんてしたら、それはどう見ても一大事になるし、大変な事になるので、地道にちょっとずつ成長していけたら良いな、とは思う。来年とか再来年とかには、また違った感じになるだろうし、その時を楽しみにしていよう。
余談だが、誕生日については私の友人も知っているので、翌日にささやかだけど祝ってもらった。オルテンシア様、カトリーナ様からは可愛らしい小物入れを、ジュスティーノからはブローチを。そして、友人の一人であるルシウスからは、ストールを貰った。もうすぐ寒くなるから、との事で暖かそうなものを選んでくれたらしい。それはそれで、どれも嬉しいものばかりだったので、優しさに満ち溢れた友人達に感謝しかない訳だけれどね。
秋真っ只中の誕生日が過ぎて行き、オパールの月が気付けば終わりを迎えた時期になると、シトリンの月がそろそろ始まるのだが、シトリンの月は地球で言う11月なので、もう冬も間近と言っても過言ではない。後数ヶ月もすれば、いよいよパトリシア姉様のデビュタントかと思うと、私も少しわくわくとして来てしまうな、と晴れた秋空を見上げながら、今日も学園に通う為に馬車に乗り込むのだった。
簡単な人物紹介
リカルド
主人公の暮らすお屋敷の厨房で
料理長を勤めている男性。
年齢は今年の冬で28歳。
元々の仕事は公爵家が所有する
森で代々続く猟師の家に生まれたので
猟師だったが、前料理長に狩った獲物を
譲って欲しいと言われそれをきっかけに
料理の腕に惚れ込んで弟子入りを申し出た。
その結果、見習いから始まり、研鑽を積み、
副料理長までのし上がった。主人公が
9歳の誕生日を迎える頃には副料理長から
料理長へと昇格。前料理長は年齢を理由に
隠居した為に彼が料理長となった。
そして、顔がいかついので初対面で大体は
驚かれるが、主人公は違ったので尊敬している。
最近は話す機会があったのでよく話をする
年の離れた友人と言う関係。
簡単な人物紹介じゃなくなった…!(吐血)




