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ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第三章 現身
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第七十四話 冒険

 本日二回目の投稿です。


「ファースト、宜しくなんだよー」

「ファーストさん、宜しくお願いします」

「此方こそ、宜しくな!」


 俺は卒業課題の補助というか手伝いに来ていた。

 手伝いのはずだったのだが……。


 俺はシャルの計らいでショコラ、トートの二人と冒険者ギルドで依頼をこなす事になっていた。

 だが少しだけ問題があった。


「どうするんだよー?」

「お任せしますよ?」

「俺に聞くなよ……」


 なんていうか受け身な奴しかそこには居なかった。

 率先して指示する事が出来る者が居ない。

 リーダーシップが無いのだ。

 ……シャルの人選ミスにしか思えない。


「……取り敢えず、ギルドに行ってみるか?」


 俺の頼りない言葉で行動が開始した。

 何とも不安な始まりだった。




◇◇◇




 冒険者ギルドに着いたは良いがそこでもまた同じ事が繰り返される。


「どれにするんだよー?」

「どれでも良いですよ?」

「だから俺に聞くなよ……」


 依頼の受け方も場所も何をすれば良いのかも全て分かるが、どれを選んで良いのか分からない。

 なんでこんな事で苦労してるんだよ。

 お前ら何の為にこの卒業課題を選んだんだよ……。

 多くの依頼からどれを選ぶか決めかねている俺達に救世主? が現れた。


「お、ドラゴンじゃねーか。

 今日はあのおっかないねーちゃんは一緒じゃねーのか?」


 ……ゲファールだった。

 まさかこいつに頼る事になるとはな。


「どの依頼が良いか分からない?

 そんなのどれでも良いんだよ!

 適当に選べ、適当に」

「適当って……」

「ん、これにしとけ! 依頼内容は知らんがな」


 ゲファールは依頼内容も確認せずに、依頼が張り出されている掲示板から用紙を選んだ。


「荷物運びEランクか、初心者には打って付けじゃねーか」

「なんか地味ですね」

「賞金稼ぎとか派手なのが良いんだよー」

「そんな選び方で良いのかよ?」

「学生の、初心者の分際でお前ら偉そうだな……。

 まぁ、ギルドを信用しろよ。

 普通そんな危険な依頼はここには出てねーよ。

 どれを選んでも大丈夫なんだって」


 ゲファールは信用出来ないに決まっているが、ギルドは信用出来るのだろうか?

 そして丁度良い? タイミングでギルドマスター、エルガーが現れた。


「ゲファール、お前が付いて行ってやれ。

 ……借りもあるだろう?」

「ちっ、しゃーねーな」


 そしてゲファールが俺達に付いてくる事になった。


「お前ら俺に付いて来い!」

「宜しくなんだよー」

「宜しくお願いします」

「まー、今回は頼ってやるか」


 ……足を引っ張られる事はないよな?




◇◇◇




 荷運びの仕事は運ぶと言うより積み込むと言った物だった。

 倉庫から取り出した重い荷物を馬車へと積み込む。

 たったこれだけの仕事だ。


「おらおら、とっとと積み込め!

 積み込んだ分、儲かるんだから頑張り甲斐があるだろうが!」


 ゲファールは自分は何もせずに文句だけをまき散らしていた。

 言葉は悪いが助言のつもりなのだろう。

 俺がゲファールの暴言をそれ程気にしていないのは理由がある。


「お前は働かねーのかよ?」

「あの二人だけで十分すぎるだろ」


 俺は全く働いていなかったからだ。

 その必要が無い。


「軽い軽い、楽勝なんだよー」


 ショコラは獣人族だ。

 この程度では重い荷物とは言えないらしい。


「風の魔法はこういう事にも向いていますからね」


 風魔法は重さをある程度軽減する事が出来る。

 トートは風属性だ、魔法も風が得意なのだろう。

 次々に荷物を積み込んでいってしまう。


 それに俺がもし手伝ったとしたら、この依頼内容自体が変わってしまう。

 同じ時間で馬車など使わずとも、荷物全部が目的地まで運び終わってしまう。

 そして二人の力だけでこの依頼はあっという間に終わってしまった。


「そういや魔術師だったな。

 こんなちゃちな仕事、普通しねーからな。

 簡単すぎたか?」


 なら別の仕事を選べよ!

 ……やっぱりこいつに頼ったのは失敗だったか?




◇◇◇




「そういや、お前らは何クラスなんだ?

 それ参考に選べば良いんだよ」

「最初に言えよ!」


 なんとも要領の悪いことだ。


「あー、でも一クラスしかないんだっけか?」

「もしクラス分けをしたとしたら、僕はAクラスだったと思います」

「私はきっとEクラスなんだよー」


 トートとショコラが答える。


「ドラゴンは勿論Aクラスか?」

「……俺は生徒じゃないからな」

「きっとFなんだよー」

「多分、Fくらいですね」


 言わなくて良い事を言いやがって!

 それにFクラスなんて無いだろうが!

 ……本気出したら凄いんだからな!

 その時は逆に被害が出すぎて学園自体に居られなくなるか?


「ぷっはははは!

 そりゃお前は見学しとけって事だな。

 Fとかそんな低ランクねーから」

「うるせーよ!

 そう言うお前は今何ランクなんだよ!」

「まだCランクに下がったままだ……」


 ざまぁ。

 そのままどんどん下がっちまえ!


「……そんな事はどうでも良いんだよ!

 えーと、なんだ? AとEか。

 バランスわりーな。

 間とってCにしとくか」


 クラスを聞いた意味あったのだろうか。


「Cだとこれか?

 商人と積荷の護衛、積荷は食糧か。

 目的地は西の方の町だが……片道だけってのが微妙だな」


 商人は売りに行くだけでなく、帰りにも何か仕入れてくる事が多い。

 その方が効率的だからだ。

 それなら護衛も生き帰りの両方あるはずだった。

 毎回そんな上手く行く訳ではないだろうが。


「卒業課題の場合、依頼を複数こなさないと認められない事が多いです。

 出来れば効率的に行きたいですね」

「私も早めにこんな事は終わらせたいんだよー」

「早く終わった方が良いには良いが……」

「まー、目的地にもギルドはあるからな。

 そこで何か適当に受けるのもありだな。

 こっちに戻るような依頼もあるだろ」


 つまり、行き当たりばったりである。

 結局他に依頼が無く、護衛の依頼を受ける事になった。

 ほとんどゲファールのごり押しだった気がしないでもないが。


「こういうのは取り敢えず適当に受ければ良いんだよ!」


 ……本当に良いのだろうか?




◇◇◇




「護衛の人が決まらなくて困っていたんですよ!

 本当に助かりました」

「さっき積んだ荷物だよー」


 何とも効率の悪い事だ。

 護衛がもし決まらなかったらどうするんだ?

 食糧とか腐ってしまいそうだが。


「護衛無しで出発するところでした。

 最近は物騒になりましたからね。

 道中は宜しくお願いします」


 護衛無し……か。

 商人なら商品と共に運命を共にするという事か。


「困っている人を助けるのがギルドってもんよ!」


 まったく調子の良い奴だ。


 護衛の道中は野営は無く、夜にはどこかしらの町へと入る事が出来た。

 それ程危険はない依頼という事だろう。

 商人が無理をしようとしたのも分からないでも無い。


「宿は商人が用意してくれた。

 二部屋だな。

 俺とドラゴンがこっちの部屋で、嬢ちゃん達はそっちだ。

 別に嬢ちゃん達のどっちかが、俺の相手をしてくれても良いんだぜ?」

「ぎゃう!」

「あっつ! 火は駄目だろ! 冗談だって」


 まったく、馬鹿な事を言うのは治ってないな。

 ……はっ!?

 ショコラとトートは一緒の部屋でも良いのだろうか?


「分かったんだよー」

「ショコラさんが良いのなら……」

「俺はゲファールとなんて嫌だね。

 ショコラとトートの部屋にしとくわ」

「そうしたいならそうしろ。

 そんな小さななりならどこでも同じだろ」

 

 一応見張っとかないとな。

 ……外から覗いていた方が良かったか?


「はぁ、早く帰りたいんだよー」

「そうですね」

「そういえばどうして卒業課題をギルドでの依頼にしたんだ?」


 俺はシャルに言われたからだが、ショコラとトートの理由が分からなかった。

 ……トートは陛下からの命令だろうか?

 知らない振りしとくか。


「僕は外の広い世界を知り、本当に大切な事を学ぶ為です」


 トートはもっともらしい事を言っていた。

 それが本当なら良いのだが。


「私も同じ様なものなんだよー。

 ……でもそれを言ったのはキルシュなんだよー」


 ああ、キルシュに外の世界を学んで来いって言われたのか。

 なんだかショコラが俺と同じような事で悩んでいるように感じられた。


「私はキルシュと一緒に居れれば……良いんだよー」


 少し悲しげな声でショコラは呟く。

 きっとキルシュを思い出しているのだろう。

 トートはそれを聞くと俯いてしまい、そして拳を強く握っていた。

 まさか……ないよな?


 その後はショコラが周りに構わず着替えだし、トートが目のやり場に困っていた。

 逆にトートの着替えでショコラが凝視し、トートが困っていた。

 どっちもトートが困っているのがポイントだな。

 本当に苦労の絶えない奴だな。


 あくる朝、多少問題はあったが、俺達はゆっくり休めた。

 だがゲファールは少し眠そうな感じだった。


「いやー、嫁が中々寝かせてくれなくてよー」


 お前の嫁って……こいつは本当にどうしようもねーな。


「ゲファールさんの奥さんはここに住んでいるのですか?」

「奥さんが居るとは思えないんだよー」

「……こいつの嫁は娼館にたくさんいるからな」

「おう、体がいくつあっても足りねーぜ。

 まー、金の方が足りなくて困ってるがな。

 お前らさっさとギルドへ行って仕事を決めるぞ。

 ……嫁の為にな!」


 ゲファールは悪びれもしない。


「……きちんと対価を払っているのなら問題ありません」

「仕方ないんだよー。

 ゲファールにはそこしかないんだよー」


 トートとショコラもそれを咎めなかった。

 娼館のような所を悪く思ってもいない。

 寧ろ必要な物だと考えているのかもしれない。

 なぜなら……。


「ゲファールが犯罪者にならない為にもギルドでの仕事をがんばろうか……」


 そう言う場所が無ければゲファールのような奴はきっとその手を悪に染めているからだ。


「さぁーて、次はどの嫁にするかなー」


 ゲファールは依頼では無く、もう次の嫁の事を考えている。

 このにやけた顔を見てみろ……。

 こんな事を思ってしまうのは仕方のない事だよな?




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