表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様は真っ黒  作者: pinfu
第三章 現身
78/176

第六十七話 崇拝


「今日は魔力砲(マジックキャノン)を使用します。

 使用すると言っても、今回は魔力補充が主な授業内容です。

 今まで簡単な魔道具(マジックアイテム)の魔力補充は皆さんもした事があると思います。

 生活の中でそれは欠かせない事ですからね。

 ですがマジックキャノンのそれは量が圧倒的に違います。

 万が一誤った操作をした場合、周囲一帯が吹き飛ぶ可能性がありますので注意して下さい」


 今回の授業では魔力の補充の為に大量の魔石が準備されていた。

 今まで見た事も無……シャルがもっと多く迷宮から持ち帰っていたわ。

 それはおいといて、これだけの量だ。

 もし誤った使い方をすれば先生の言う通りただでは済まないだろう。


「今回は訓練の為、あまり良い魔石を用意していません。

 実際の戦闘ではもっと良い魔石を使うので、魔石の量だけは減るでしょう。

 最後に、属性だけは付与させないで下さい。

 威力が出すぎる場合がありますので」


 魔石によって魔力の密度が違う。

 同じ大きさでも魔力量が違うという事だな。

 そして属性は無し。

 純粋な魔力の力だけという事だろう。


「結構簡単だな。もう補充終わっちゃったよ」


 俺は魔石を使いマジックキャノンに魔力を補充していた。

 後で気付いたが、俺がやる必要はどこにも無かった。


「じゃあ次は実際に撃って魔力を使わないとね」


 シャルがマジックキャノンの標準を合わせていた。


「んー、ファーストあっちに行ってくれる?」

「……なんで?」

「的」


 ですよねー。

 何か狙いがないとつまらないですからねー。


「今回は物理的な弾は入ってないから大丈夫よ!

 ……たぶん」


 最後に小声で多分とか言わないで。

 結局……俺は的にされた。


「行くわよー! 撃てー!!!」


 しかもなんか今回用意された四門が全て同時に放たれる。

 お前らのこんな時の結束が今は憎い。

 だがそれは俺には当たらなかった。


「駄目ねー、全然見当はずれの所に飛んじゃったわ」

「お前らさっさと魔力を補充しろ!

 次は俺が撃つぜ!」


 トイフェルは最近あまり元気の無かった(多分アネモネのせい)が、こういう時だけは元気だった。


「私も撃つんだよー」

「獣人族同士これは負けられねぇな!」

「……私も撃つ!」


 そこへアネモネが参戦した。


「俺も撃とう。

 初めの一発から着弾点を計算した。

 狙いの修正は容易だ」


 最後の一門はトルペが担当する。


「分かってると思うけど外したら罰ゲームがあるわよー」

「「「えっ!?」」」


 シャルさんの悪乗りが始まりました。

 初めに撃ってはずした自分は罰を受けていないのですがね。


『全部避けてね』

『……了解』


 これでは狙いの修正も何も無い。

 当然……はずれだった。


「外した人はファーストの方へ行ってねー。

 アンチマジックフィールドを使えば何とかなるわよ」

『ファースト、危ない時はちゃんと防ぐのよ?』

『了解』


 一応安全については考えてはいるようだった。

 だがそれを知らないクラスメイト達は……。


「私は今日死ぬんだよー……」

「お、俺は諦めねーぜ……」

「死ぬときは一緒……」

「俺が計算を誤るなど、あり得ないはず……」


 半分あきらめているのか余裕なのか。


「薙ぎ払うのよ! 撃てー!!!」


 ノリノリである。


「魔力の補充をするだけの授業だったはずが……。

 それがいつの間にかマジックキャノンを耐える授業に……」


 先生なら止めてほしい。

 だがシャルのせいで先生の感覚もおかしくなっているようだった。


 ちなみに俺が助けるまでも無く、生徒達はアンチマジックフィールドを使用し魔力砲を耐えていた。

 先生はこの辺が分かっていたのだろう。

 それでも衝撃は凄まじかった。

 膝を屈する者、後ろに倒れる者などもいた。

 物理的な弾が入っていたり、属性が付与されていたりしたらとてもじゃないが耐えられないだろう。

 一撃で死あるのみだ。

 



◇◇◇




「最近授業が厳しくなっている気がする」

「……気のせいよ」

「いやシャルのせ……ぎゃう!」


 殴られた。酷い。


「今日は大丈夫よ。課外授業で教会のお手伝いだもの」


 今日は授業と言うよりもあれだ、ボランティア活動みたいなものだ。

 教会が恵まれない人達に炊き出しを行うのを手伝いに来ていた。


「我々魔術師が真に守らなければならないのは民です。

 そして力の無い者達です。

 ですが、助けるすべは魔術だけではありません。

 今日はそう言った事を学んで欲しいのです」


 先生がもっともらしい事を言っていた。

 食うに困るほどになるまえに働けよと思ってしまう。

 だがその働く場所が無いのだ。

 住む場所が無い、食べる物が無い。

 そして家族が居ない……。


 戦争に行った者が亡くなったら残された家族はどうなる?

 きちんとした保証が国からされるのだろうか?

 されたとしてそれで何時までも暮らせるのだろうか?

 俺は他者を否定できるほどの根拠を持ってはいなかった。


「初めまして、私はザフィーアと申します。

 今回は手伝って頂き有難う御座います。

 また公爵様からは多額の寄付を頂きました。

 感謝の言葉もありません。

 私に出来る事は祈るだけです。

 皆様方に神の御加護があらんことを」 


 なんなんだこのケーゼの抜け目のなさは!

 まぁどうでも良いか、誰も損をしないし。


「私は料理の手伝いをしてくるわ。

 ファーストは邪魔だからどこか行ってて良いわよ」


 くっ、俺だって皿くらい洗える。

 だが今はまだ料理すら出来ていなかった。

 俺は辺りをブラブラするしかなかった。


 周りには徐々に人が集まって来ていた。

 今の所は百人ちょっとか。

 まだまだ増えそうだな。


 そしてそこに見知った顔があった。


「ゲファールか? ギルドも今回は手伝っているんだな」

「お、ドラゴンか。

 いや俺はタダで飯が食えるっていうから来ただけだ」

「お前は本当にクズだな!」

「何? 出されるのは残飯なのか?」

「ちげーし!

 もう良いよ……相手にするのも疲れる」


 自分から話しかけておいて酷いとは思うが仕方ない。

 こういう奴がいるから、本当に助けないといけない者を助けられなくなるんだな。

 そして俺はこの時、完全に油断していた。

 まさか……捕えられるとは予想していなかったのだ。


「わー、次は私の番だよー!」


 俺は小さな子供達に捕らわれていた。

 いや捕えていたのかもしれない。


「飛ぶぞー! びゅーん!」


 子供達を抱えて空を飛ぶ。

 高さも低く距離も短いが、子供達はそれで満足してくれた。


「次は僕! 僕も飛びたい!」


 大人気である。


「あらあら、魔物(モンスター)がどうしてこんな所にと思って居ましたが、貴方は良いモンスターなのですね」


 話しかけて来たのはザフィーアだった。


「さぁ皆さん、炊き出しの準備が終わりました。

 順番に列に並んでくださいね」

「「「はーい!」」」


 俺は子供達から解放されたようだった。


「言いにくい事なのですが……。

 正直申しまして、教会はモンスターを好いてはいません。

 富を得ようと迷宮で亡くなった者が多いのです。

 そしてその者を親に持つ子がですね……」


 あの子達がそうだとでも言いたげだった。

 戦争だけじゃ無く、迷宮で亡くなった者も多いのか。


「……俺は違います」

「そうでしょうね。

 ですが、それは問題では無いのです。

 ……出来る限り目立たぬようにして頂ければ助かります」

「……分かりました」


 まだ何か言いたそうだった。

 だがそれを言うのはためらわれるのだろうか。


「ファースト、来なさい。

 ……裏で洗い物を手伝って欲しいの」

「ああ、分かったよ」


 シャルが俺を呼びに来て話はそこで終わった。


『気にしなくて良いわよ』

『……気にしてない』

『もう、まるわかりじゃない。

 ……ザフィーアが言いたかったのは必要悪って事でしょうね。

 何も恨まない方が良いのでしょうけど、それは難しいわ。

 特に身内を亡くしたりしたらね』

『……分かってる』

『モンスターが人を襲うのでは無く、人がモンスターを襲っているのに都合が良いとは思うけどね』


 そうなのだ、人がモンスターを襲っている。

 魔石の為に。

 だがそれを悪とは言えない。

 本当はその逆もという事なのだが……。

 割り切らなければならない事もある。


 これは俺が乗り越えなければならない問題でもあった。


『俺、教会から嫌われてるんだよね?』

『上があの様子では、きっとそうね』

『ザフィーアって偉いの?』

『枢機卿だったはずよ』

『それめっちゃ偉くない?』

『教皇の次に偉いとは言われているわね。

 でも本人達にしたらみんな平等なのよ。

 だから実際に現場に立って同じ事をしてる。

 でもやっぱり周りへの影響力はあると思うわ』


 もしかしたら俺は人間社会には溶け込めないのかもしれない。


『そんなに気にしなくても大丈夫よ。

 教会に行ってお祈りもちゃんと出来たでしょう?

 表だって目立つ事をしなければそれで良いのよ』

『何もするなと?』

『普通にしてれば良いのよ、普通にね』

『そんな事言われても分からないよ』

『人は空を飛ばない! 分かった?』

『それは分かりやすいな』


 だが全てがそんな分かりやすい訳では無かった。

 この問題は簡単には解決出来ないのだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ