第六十四話 精製
今日は三話分更新予定です。
その二話目です。
次は二十一時になると思います。
四年生の授業が始まる。
大まかな内容だが魔道具の製作を行う事になる。
そして課外授業が増える。
数人での行動に引率の先生が付く。
その為、一般授業は自習が多くなってくる。
その間は課題の製作を行う事になるのだろう。
「今日は初めての製作ですので一番簡単な閃光石、一時間石を作ります。
皆さんも良く使用しているので知っていますね。
光を放ちますが、一時間で消えます。
魔石に炎属性を付与して作ります。
魔力量さえ気を付ければ簡単に出来る物です」
魔石を適量にカットするのが難しいのでそれ程簡単とは言えない。
今回はもうカットされた魔石が準備されていた。
あとはただ属性を付与させるだけだ。
魔法を使える者ならそれは簡単な事だった。
発動しないという点を除けば、魔法を使うのと同じ事なのだから。
「これはまだ先の話ですが、卒業までに生徒は何かしらの成果を上げて貰います。
卒業課題と呼ばれる物ですね。
それは魔法理論であったり軍事演習であったり様々です。
本格的に行動に移すのは五年生になってからですが、今の内から考えておいてください。
残念な事ですが、毎年多くの者が然したる成果を上げる事が出来ません。
その者には救済措置として一時間石、もしくは一日石を一万個作って貰います。
皆さんが今まで無料で使えていたのはその時作成された物です。
残念ながらあと数年はなくならないほどの量があります。
君達の代ではそれが減る事を祈っています」
一万個だと……。
正直気の遠くなるような数だった。
これは今から制作を始めろという事か?
ま、まて諦めるのはまだ早い。
何かしらの成果を上げれば良いのだ。
周りも同じような事を考えていたのか表情は暗かった。
「ファーストの最後の仕事はそれね……」
「最後とか!
製作途中で死んじゃうの!?」
確かに死んだ方が楽な気がする量に思えた。
◇◇◇
授業が終わった後も何らかの成果、卒業課題について考えていた。
「シャルはそのアイスソードが新しい魔法理論にならないのか?」
「これは……微妙ね。
ただ単に魔術をずっと使用しているだけで、従来の物理を魔法で強化する魔術と変わらないわ」
「魔法かー、魔法、強化、んーーー」
ここで元の世界での事を思い出していた。
魔法と言えば夢のような力だった。
それは想像の産物で漫画やアニメの中で様々な使い方をされていた。
その中で一つ真似できそうなことがあった。
だがしかしそれは……うーん、試してみるだけ試してみるか。
それにシャルは使えそうにない。
属性が違うからな。
それからの俺は日々研究と練習をするのだが、成果が出るのはまだ先の話だった。
◇◇◇
「こういうのは得意な奴に相談するのが良いよな」
「そうね、何か参考になりそうな事が教えて貰えると良いわね」
俺達はモーンの所へ来ていた。
「僕はどんな成果をあげるかですか?
んー、まだ決めていないのですが、出来れば魔力探知が出来ないかなぁって思ってます」
「魔力探知って特定の魔力がどこにあるか見つけるって事?」
「最終的にはそう言う事が出来ると良いなぁって。
今はまだ魔力そのものを感知する事すら出来ていないです」
「俺は多分出来るぞ」
「それをマジックアイテムでやろうって事です」
「あー、そう言う事か」
何も全く新しい理論から始めなくても良いのか。
今ある魔術をマジックアイテムで行う。
こういった物も成果として認められるのだろう。
「魔力に反応する物はもう既にあるんです。
属性を判別する水晶がそれです。
あとはその応用で出来ないかなぁって考えています」
その後は訳の分からない長いお話が始まったので聞き流した。
シャルは熱心に聞いていたが。
「ありがと。参考になったわ」
「い、いえいえ! 役に立ててうれしいです!」
なんだか今まで感じた事の無い疎外感を感じる。
俺も真面目に聞いとけばよかった。
◇◇◇
「で、何か思い付いたのか?」
「良い話が聞けたわ」
シャルはモーンの話で何か参考になる事があったようだった。
「私には無理って事が分かったわ!
ファースト、頑張って一万個作ってね」
「全然参考になってない!」
これは酷い。
あんな単純作業をどれだけの時間やれと言うのだろうか。
「まだ時間はあるし、何か思い付く事を祈りなさい」
「それを考えるのはシャルだと思うのだけど……」
俺の訴えは届かなかった。
◇◇◇
「あー、もう耐えられねぇ!
なんでこんな事ばかりしなくちゃいけねーんだ!」
授業で一日石を大量に作る課題が出た時、遂に脱落者がでた。
それはトイフェルだった。
「はぁ、先生もいねーし、サボっちまうか」
「先生は出来たかどうか後できちんと確認してるわよ?
やってなかったらまた留年しちゃうでしょうが!」
それをアネモネが諌めていた。
「お前は変に真面目な所があるな。
こんなの少しくらい少なくてもばれないだろうが」
いや先生ならきっちり数えそうだ。
今、先生は別の生徒と課外授業をしている。
交代で生徒は全員受けるのだが、今はそれが待ち遠しかった。
……残ってこの作業をしたくないだけだが。
「おい、ファーストも生徒じゃねーのに何真面目に作ってんだよ!」
「……シャルの分なんだよ。察してくれよ……」
「お、おう。すまんかった」
シャルはこういう細かくて単純な作業はあまり好きでは無いようだった。
そして今は教室で寝ている。
迷宮探索に備えて寝貯めするそうだ。
そんな事出来るのかどうかは分からないが。
「そういや最近シャルと迷宮へ行ってないようだが何かあったのか?」
「……別に何もねーよ」
気にしていた事だが何か気恥ずかしくて正直には言えなかった。
ケーゼ達には子供みたいだって、馬鹿にされたしな。
「その迷宮なんだが、ここの所モンスターが居なくなったらしい。
ファーストがいるからモンスターがビビッて出てこないって言うのなら分かるんだがな。
五年生が調査に出かけるかもしれないらしいな。
場合によっちゃあ、卒業課題の代わりになるってな」
思い当たる節はあった。
シャルがモンスターを全て狩りつくしている事だ。
「……俺より怖い存在がうろついてるのかもな」
「五年生にもなって迷宮で不覚を取る奴はほとんどいねぇよ。
……ああ、でも何年か前に五年生でも一、二位を争う強さの奴が迷宮から帰ってこなかった事があったな」
それもシャルだよ……俺も関わっているけど。
「やっぱこんなだりー事より、動いてるほうがマシだな。
……アネモネ、俺の分も頼むわ!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
そしてトイフェルは逃げるように教室を後にした。
「もう! ファーストのせいなんだから、トイフェルの分を一緒に作ってよね!」
言いがかりだ!
こんな面倒な事はもう止めたいのに。
「わざとトイフェルとアネモネの分を提出しないって事もありじゃないか?」
「それだと補習になっちゃうじゃない!」
「トイフェルと二人っきりで補習が受けれるのでは?」
「それよ!」
うん、俺は悪くない。
悪いのはトイフェルだ。
何が気に入らないのかトイフェルはアネモネを避けるようにしている。
初めはトイフェルとアネモネの立場が逆だった様な気がしたんだがな。
人間の関係なんてすぐに変化してしまうからな。
それは俺とシャルにも当てはまるのかもしれない。




