閑話 ご主人様は真っ青2
今日は二話分更新予定です。
次は二十時になると思います。
人によっては好ましくない表現があるかもしれません。
この場面は飛ばしても問題ありません。
僕は生まれてからずっと何不自由なく暮らし、望めば全てが手に入った。
僕ほど恵まれた存在は居ない。
ただ自由だけは無かった。
「午前中は学術の授業になります。
昼食をはさみまして、午後からは武術の授業になります。
夕食の後は魔術の授業になります」
一日の予定は全て決まっていた。
だがそれを不満に感じる事は無い。
それが当たり前で不満と言う物が何かを僕は知らなかった。
限界と言う物を知るまでは。
僕の周りには一流の人材が揃っていた。
もちろん教える事も一流だ。
だが僕はその一流には慣れなかった。
どんな事でも僕は出来た。
だがそれは優秀止まりでどれも一流には届かない。
誰もが僕を優秀だと言う。
だがそれを教える者達はその一つ一つの事をそれぞれ極めた者達だ。
どれほどの才能が有ろうとも簡単には追いつけない。
僕は優秀だったがまだ子供だった。
追いつけるはずが無いのだ。
だが予定は変わらない。
出来ないと分かっていてもやらなくてはならない。
僕は確かに優秀なのだろう。
普通の人が分からないような事も簡単に理解してしまう。
自分の限界すらも簡単に理解してしまった。
それでも何も変わらない。
周りは僕を優秀と呼ぶ。
出来ても出来なくてもそれは変わらない。
僕は何でも出来る優秀な者だったが一流と呼ばれる者には慣れなかった。
◇◇◇
「お前には一流の部下を付ける。
絶対に裏切らないお前の為だけに働くモノだ」
僕はどうやら一流にならなくても良かったらしい。
僕に天から与えられた才は一流の者を一流に扱うというなんとも言えない才能だったらしい。
いや扱う立場にあるという運があっただけかもしれない。
そして僕は一流とは程遠い最底辺の場所へ連れて行かれた。
ここに僕の為だけに働く一流の者がいるとは思えなかった。
「このモノがお前の部下になる。
あとはお前と言う存在を教えるだけだ。
お前を絶対に裏切れないという事をな」
何を言っているのか分からない。
いや分かっていた。
僕とは全く逆の方法で教育されたという事が分かってしまった。
同じだったのは自由が無い事だけだろう。
◇◇◇
「この者を自由にして下さい」
「出来ぬ。
お前には全てを与えるがそれは義務と言う物があってこそだ。
お前はその義務をまだ果たしていない。
そしてその義務を果たすのにこのモノが必要になる。
……それは長い歴史が証明してきた事だ」
それは分かっていた。
僕は優秀だ。
そしてどうすれば良いかも分かっている。
「歴史上この様な者を使わずとも可能だった事も何度もあります。
僕はこの様な者を使わない方法を選びます!」
「……良いだろう。
だが失敗した場合は全てを失う。
その覚悟がお前にはあるのか?」
「……はい。覚悟無くして声を上げる事はありません」
結果だけ言おう……僕は義務を果たせなかった。
僕は優秀だが天才では無かった。
失敗し、僕は立場を失った。
一流の者を扱うのにあれではいけないと思った。
いや人を扱うのにあんな事をしてはいけないと思った。
僕の部下になる者……彼女を自由にしたかった。
その為には僕も自由になるしかなかった。
僕は立場を失った。
だが僕はまだまだ恵まれていたらしい。
望めば大抵の物が手に入り、結局ほとんど不自由など無かった。
ただやっぱり一流には慣れなかった。
僕は人に扱われる立場になった。
だが驚くほど今までより自由になったのだ。
◇◇◇
まず彼女とまともに会話するまでが大変だった。
薬物と魔術による洗脳。
そして今まで人として扱われていなかった為だ。
それを解くまでには長い時間が掛かった。
そしてそれは完全には解けないものだったのかもしれない。
だが何とか会話をする所まで彼女は回復していた。
僕は失敗したのに自由になった。
彼女も自由になった。
だが彼女は自由になってはいけなかった。
絶対的な善悪の判断が付かないのだ。
それは主と言う者に委ねられていたからだ。
そして僕はその主にはならないと決めていた。
決めていた……はずだった。
だが分かっていても避けられない事があった。
彼女には名前が無かった。
これは誰かが決めなければならない。
自分で決めるように言ったがどうしても僕に決めて欲しいと言われた。
僕は結果的に折れてしまい彼女の名前を決めた。
◇◇◇
名前を付けたその日、僕は彼女に襲われた。
……性的に、だ。
気が付いたら彼女は僕に覆いかぶさっていた。
そして口で口を塞ぐ。
抵抗をするが彼女を振りほどく事が出来ない。
彼女は僕よりも全てが優秀だった。
「私に任せて……じっとしてて」
「止めるんだ! こんな事しなくても良……」
言葉の途中でまた口が塞がれる。
僕は頭の中が真っ白になってしまいそうだった。
そして気付くと服まで脱がされている。
一体いつの間に脱がされたのかも分からない。
「貴方は私の主。主に対する行動は全て教わった」
「僕は主では無い! 君の主は君自身だ!」
「……そうは教わらなかった」
彼女は僕に跨り、両手を片手で抑えもう片方の手は僕の体を優しく撫でる。
僕は身じろぎをしながらそれに耐える。
そんな単純な事が気持ち良すぎてどうにかなってしまいそうだった。
「主の喜ばせ方は教わった。
実戦は初めてだけど……正しいみたい」
僕は服を上も下も何も身に着けていない。
そしてその反応を隠す事は出来ないという事だった。
彼女はそれを凝視し……手が触れられた。
「んっ! はぁん!」
情けない声をあげてしまう。
「……でもそんな声は聞いた事が無い。
今のは女の子があげる声だったはず?」
もう情けなくて死にそうだ。
「御免なさい、どこかが違っていたみたい。
でも次は間違えようがない」
彼女も服を脱ぎ始める。
その隙に逃げ出す事が出来たはずなのに僕は動けなかった。
思考が止まっていた。
「これで貴方は……私の主。そう、教わった」
彼女が僕と交わろうとする。
そこでなんとか考えがまとまる。
いやただ思い付いた事を叫んだだけか。
「これからは僕が教える!」
彼女が動きを止めた。
「あんな方法で教わった事が正しいとは限らない!
正しい事と正しくない事は僕が教える!
それにこんな事をしなくても……僕はもう君の主なのだろう?」
主になるつもりは無かった。
だが他に方法が無かった。
「だからもう止めるんだ。良いね?」
「はい……」
僕は妥協した。
元々僕は優秀だが天才では無い。
出来る事には限界がある。
だがその限界はこれじゃない。
「僕は今は君の主かもしれない。
だがきっと君が君自身を主だと思えるようにする」
「でも私の主は貴方!」
「……主の言う事は聞くものなんだろう?」
「はい……」
矛盾しているがこれが今取れる最良の方法だ。
今まで自由が無かった。
だが今は僕達には自由がある。
これからゆっくり時間を掛けて覚えて行けば良いだけの事だった。
だがこの時は分かっていなかった。
僕は望む物を全てを手に入れていた。
僕はまだ義務を果たさねばならない……その事をだ。
それも仕方のない事だ。
僕はそんな事を考える余裕は無かった。
これから先、何度となく僕は彼女に襲われた。
その都度、彼女を説得し止めさせる。
今はまだ僕は子供でその誘惑はあまり効果が無いのだろう。
だが必ず成長し大人になる。
何時までも誘惑に耐えられる自信など無かった。
時間は思ったよりも無いのかもしれない。
その理由は彼女では無く僕の方にあった。




