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「どれ、そろそろ移動するか」

木の上は見付かりにくいと思うけど、念の為に移動した方が良いような気がする。

木を降りるために腰を浮かせかけた瞬間、体が大きく揺れた。

自分が足を滑らせたと悟った時には、さっきまで自分の居た木の枝が見えていた。


「……あれ?」

予想に反してあまり痛くない。

地面に落下したはずなのに、思いのほか強い衝撃は受けなかった気がする。


「椿ちゃん、大丈夫~?」

耳元で聞こえてくるこの声を聞いて全てがわかった。

安堵感に今まで張り詰めていたのもが、全て解ける。


こんな時でもいつもと変わらないゆったりとした声に、伸びている語尾。

きっと気が短い人なら、さっさとしゃべれ!!って怒鳴りそうな声音。


「――織」

「椿ちゃん。そんなところ昇っちゃ危ないよ。僕が来なかったら、どうなってたと思うの?」

落下した私を、織が受け止めてくれてたのだ。


「ありがとう、織。怪我とかしてない?」

「平気。椿ちゃんを守るのは、僕の役目だから」

私は立ち上がると、織に手を差し伸べる。

織が私の手を握ると、私はその手首を凝視した。


「どうしたの?それ」

たまたま視界に入ったのは、赤い痕。

何か細長い縄のようなもので縛られていたのか、織の両手首には赤い痕がついていた。


「ん~、これ?兄貴達に邪魔だって両手足縛られてたんだー。だから、ごめんね。椿ちゃんを探しにくるの遅れちゃった」

「はぁ!?縛られた~?」

「うん。でも良かった。椿ちゃんが、誰にも捕まえれれてなくて」

「ほんとよかったよ。織がみつけてくれて。あいつらやっぱ最低だね。織の事縛るなんて。赤くなってるじゃんか。このルビーのために、必死すぎ」

私はネックレスのチェーンを持ち、ルビーを視界に入れる。

まぁ、気持ちはわからないでもないけどさ。


「ねぇ、椿ちゃん。もしかして気づいてない?」

「何が?」

「兄貴達はルビーが欲しいんじゃなくて、椿ちゃんが欲しかったんだよ。兄貴達椿ちゃんの事昔から好きだから」

「はぁ!?それ、織の勘違い。普通好きな子には、ブスとか豚足とか言わないから」

だから、それは絶対にありえない。


「それは、かまって欲しいからだよ。椿ちゃん、昔から僕とばかり遊んでたから」

だってあいつらが意地悪だったもん。

砂場で友達とお城作ってたらそれ崩されたり、苦手なカエル持って来られたり。

そんな事されて、だんだんあいつらに近づかれるのすら嫌になっていった。


「今回の騒動、そもそも椿ちゃんが原因なんだよ?」

「私?」

「そう。合コンなんかに行くから」

……合コン

あ~、もしかしてついこの間のやつ?

私には、心当たりがあった。

人数が足りなくて、「どうしても今回だけ」って頼みこまれて行った合コンがある。


「椿ちゃんが合コンに行くなら、自分たちにもチャンスがあるって兄貴達今回この騒動を起こしたんだよ」

「これ、あいつら考えたの!?」

「うん。だから、ルビーなんて関係ない。メインは椿ちゃん」

「こういう物みたいな扱い嫌」

だって私の意思関係ないもん。

私は織が好きなのに。


「うん、ごめんね」

「なんで、織が謝るのよ?」

「だって僕もこの話にのったから。僕も椿ちゃんが欲しかったんだ――」

この時の織の綺麗な顔がいつもと違って見えるのは気のせい?

なんか、男って感じがする。

いや、織は男なんだけど……

私は急に織が織じゃなく感じてしまい、困惑し始めてしまう。


「僕はあの時のままの気持ちなのに、椿ちゃんは違う。その上、だんだん綺麗になっていって余計僕から離れちゃっていくし」

「織、視力たしかいいよね?」

目が悪い?って言いたいんだけど、織の視力は1.5とかなり良い。

だんだん綺麗になっていくって――


「それ気のせい。そんなに綺麗なら、告白なり手紙なりあるでしょ?」

私、経験した事ないもん。

あ、でも小学生の頃はあるよ!!って、自慢になんないか。


「うん、あるよ。あ、でも椿ちゃん知らないかも。下駄箱や机にある手紙は僕が毎日チェックして在ったら回収してるし、告白してきそうな男は全部潰してきたから~」

「――は?」

「今日天気いいね~」的なのほほんとした空気と口調で、何をさらっと言ってんだ!?こいつ!!

織の浮かべている仏様のような笑みが、一気に黒く感じる。


「お、織。私の事好きだったの……?」

「うん。ずっと好きだよ。あの約束の日から僕の気持ちは変わってない」

「約束って、あの幼稚園の時の?」

「そう。僕たちのファーストキスの時」

その事は言うな~っ!!

なんであの頃赤面せず、今赤面するんだ私!?


「織も覚えててくれたんだ……」

「当たり前だよ。――って、あれ?織もって言った?」

織は首を傾げ、私を見つめている。

覚えているのは、私だけと思っていた約束。

ちゃんと織も覚えててくれてた。



「ねぇ、約束はちゃんと守らなきゃならないよね?」

「うん」

「じゃあ、守ってね。ちゃんと私の事織のお嫁さんにして」

「もちろん。ねぇ、椿ちゃん。じゃあ、その約束を守る約束のキスしょうか?」

「約束を守る約束のキス?なんかややこしいわね」

頬に触れられた織の手はちょっと汗ばんでいた。

近づいてくる綺麗な織の顔。

それはあの頃の面影はあまりなく、男らしいつくりへとなっている。


あのませていた子供の頃と違いって、シロツメグサの王冠でもその辺に生えてる花で作ったブーケもどきでも全然構わないよ。

そのかわり、相手は織限定だけどね。








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