歓迎会2
色彩豊かなお店に子供たちの叫び声が聞こえる。
ユウはサラと一緒に露店へ買い物に来ていた。
家族連れやカップルたちで賑わっている中、サラはおもちゃ屋にやってきた子供のように碧色の瞳を輝かせている。
「これと~、これも」
次から次へと注文して、お店の人が袋に放り込んでいく。
しっかりと健康も考えているようで、新鮮な野菜たちが集まっていく。
「それで何の料理を作るんだ?」
「それは、お楽しみに~ってことで今は秘密」
そう言って楽しそうに笑うサラ。
料理に疎いユウは袋に入れられていく食材を見ても推測することすらできない。
だから、踊るように店員に指示するサラを眺めていた。
麦わら帽子から垂れる緑色の髪。足元を覆う半そでの白いワンピースからは清楚な雰囲気を漂わせている。しかし、白い布を盛り上げるような大きな胸に自然と視線が吸い込まれていく。近くのカップルや若い夫婦たちが通り過ぎるたびに、男たちがサラに視線を向けているのが分かる。
「ありがとうございます」
会計を済ませて店員から袋をもらうと、
「次はこっち行こ!」
サラに手を掴まれて、勢いよく引っ張られた。
勢い余ってたたらを踏んでしまう。
弓を使っているからか硬さのある手のひらをユウは転ばないように握り返した。
「そ、そんな慌てなくても」
「だって、近くの女子がユウのこと見てたから……」
そうなのだ。
さっきから、男たちはサラを、女たちはユウのことをちらちらと見ているのを感じていた。
でも、女子が見ていたから、か。まるでサラが嫉妬しているように聞こえるが気のせいだろう。
恥ずかしくなったのかしおらしく顔を下げたサラの頭を撫でた。
「わっ、わっ」
「あっ、ごめん。嫌だった?」
両手で頭を押さえて上目遣いするサラの頬は赤くなっていた。
「う~、それユウの悪い癖だよ」
恨めしい視線を向けられる。
女子と付き合ったことがないから、異性を慰める方法が分からないのだ。
口下手な自分が他にできる方法が思いつかない。
だけど、年齢が二つ上のサラには失礼だったかもしれないな。
「髪を触られるのは嫌いだった? 次から気を付ける」
「嫌じゃない」
「え?」
問い返した言葉に返事はなく、顔を背けられてしまった。
白いワンピースの背中からは彼女の感情は窺えなかった。
(怒らせちゃったかな)
無言で手を引かれて歩きながらサラにかける言葉を思いつかないまま、肉を売っている露店までやってきた。
白と赤のコントラストが綺麗な美味しそうなお肉が置かれて並んでいる。
「うーん、これがいいかな」
しばらく眺めていたサラが店員に指示してお肉を紙に包んでもらっていた。
そのたびに揺れる二つの脂肪がやはり周囲の男たちの視線を集める。
「お嬢ちゃん。今日はパーティーでも開くのかい?」
店員の男が腕組をして、話しかけてきた。
サラは彼に優しく微笑むと嬉しそうに口を開く。
「ふふふ、大きなパーティーです」
「ほうほう、それはそれは」
店員がいやらしい目つきでサラの胸元に視線を向ける。
それを知らずに、彼女は胸を揺らしながら食材に目を走らせていた。
「よかったら、サービスしてあげてもいいぞ」
「え? 本当ですか?」
サラが顔を上げて店員を見上げると、男が下品に唇の端を歪めたのをユウは見逃さなかった。
「サラ、これぐらいでいいんじゃないか?」
「う~ん、ユウが言うならそうしようかな」
「そういうことなので、俺たちは行きます」
そう言うと、店員は眉を顰めて舌打ちをする。
お金だけ突き付けるように渡し、ユウはサラの手を取ると露店から早足で離れることにした。
(まったく、サラもサラで警戒心がなさすぎる)
心のもやもやに頭を振ると、サラに嬉しそうに微笑まれた。
「強引に連れてきてしまって悪い」
「全然。そうだ、次は飲み物を買いに行こう」
今度はサラに引っ張られる。
露店にはフルーツを使った色とりどりな飲み物が瓶詰めされて並んでいた。
「ユウは何か飲みたいものある?」
上体を倒した姿のサラがユウの顔を覗き込む。
ぽよんと店員の前で大きく揺れるが、今度は女性の人だったので無駄に心配しなくてもよさそうだ。
「うーん、サラのお勧めは?」
「そうだね~、これとかは美味しいよ」
そう言って差し出されたのは深緑色をした野菜ジュースっぽい飲み物だった。
健康にいいが苦い飲み物が頭をよぎったユウは苦笑いを浮かべつつ手に取った。
「なんだか苦そうな色だけど……」
「そう思うでしょ? これが、とっても甘いんだから」
「そ、そうなの?」
予想外の回答に目が丸くなる。
思わずガラス瓶を舐め回すように眺めていると、くすくすと笑われてしまった。
店員に支払いを済ませて、広場にある噴水に二人して腰掛ける。
「これで必要な物は買い終わったかな」
三つの袋の中には色彩豊富な野菜と新鮮なお肉が積まれたもの、瓶詰めされた飲み物が入っている。
「いっぱいだから重かったでしょ?」
「これぐらい平気だよ」
心配そうに寄りかかるサラに笑顔を見せる。
些細な事でも気にかけてくれる彼女には何度も助けられてきた。
だから、自分に出来ることは何でもしてあげたい。
雲一つない晴天を仰ぎながら休んでいる時だった。
太ももにサラの手が置かれて顔を下げると、碧色の瞳に見つめられる。
「ねぇ、ユウ。……結婚してくれないかな?」
そう熱っぽく呟かれた。
「……はあ?」
ユウは突然の告白に絞り出すような声を漏らした。




