↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/4

第三話 鍵


巻き込まれたくはなかった。

ほんの少し好奇心があったことも嘘ではない。


そして、自分の足元に落ちている暗がりを

放置したまま生活を続けるほど、私は能天気でもない。


翌日、私は質札に書かれた街へ向かった。

賑やかな商店街の路地裏にある、古びた質屋だった。


カウンター越しに質札を差し出すと、

奥から出てきた老店主は、眼鏡の奥の目をわずかに細めた。

札の「日付」と「品名欄」を交互に見比べる。


「……あんたが、これを持って来たのか」


店主の声は低く、どこか警戒を含んでいた。

私は短く答えた。


「拾ったんです。義煎の店主の落とし物だと思って」


店主はしばらく黙っていたが、

やがてため息をつき、奥の金庫から小さな木箱を取り出した。

中に入っていたのは、高価な貴金属でも時計でもなかった。


どこにでもあるような、古びた真鍮の鍵が一本。


「あの人はね、『もし万が一、この札を持って店に来た奴がいたら、

これを渡してくれ』と言っていた。

質草の代金はすでに払われている」


私は鍵を見つめた。

義煎の店主は、捕まる前日にこの鍵を預け、

そしてあの質札を私の足元に「落とした」のだ。

偶然ではなく、明確な意図を持って。


「受取りのサインは要らない」

店主はそう言って、私から逃げるように奥へ引っこんだ。


鍵をポケットに収め、店を出る。

すぐに、背後に妙な違和感を覚えた。


商店街の人混みの中で、

一定の間隔を保ちながらついてくる足音がある。

視線を動かさずに感覚を研ぎ澄ます。


どうやら、私が質屋から出てくるのを

「待っていた」者がいたらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。