第57話 視聴覚室へ
放課後。
なんか白組のやつだけ視聴覚室にいけって先生に言われた。
話があるらしい。
視聴覚室なんて行ったことないかも……。
どこにあるかもわなんないなら、海川柚斗と一緒に行ってる。
「どうだ? 名取は」
視聴覚室に向かってる最中に、海川柚斗が訊いた。
「変なことされてねぇか?」
「されまくりだ」
「ペースに巻き込まれてねぇか?」
「ああ、結構びっくりしたけど」
本当に名取の行動には驚いた。
まさか自分の身体を使うとは思わなかった。
悪いけど、全然そそられなかった。
「本当、びっくりするよな、あいつの行動。俺も最初は驚いた」
逆にびっくりしない人はいないと思うけど。
ってか、名取と海川柚斗の関係ってなんなんだ……?
「なぁ、お前と名取ってどういう関係なんだ? ただの他人にしては、よく知ってるよな」
「……話したくねぇ」
ええ……。
話したくないの?
まぁ、話すかどうかは海川柚斗が決めることだから別に文句は言わないけど……。
「着いたぞ」
海川柚斗が突然止まる。
目の前にあるドアを見る。
ここが視聴覚室か……。
ドアを開ける。
うん、意外と感想がない。
強いて言うなら普通の教室にある大量の机と椅子がない。
そして、視聴覚室には結構な数の人がいた。
その中には実璃もいる。
「あ、天太くん! ……と、海川! 待ってたんだよ!」
前の方にいる女子生徒が俺に手を振りながら言う。
……誰だ、こいつ。
まぁ、俺たちが最後だったみたいだ。
「悪い悪い、天太がどうしても一緒に行きたいって言うから」
「俺を遅刻した理由に使うな。……確かにそうだけど」
「早く一緒に相談しましょうよ!」
別の女子生徒が言う。
うん、こいつも誰かわからない。
男子生徒はみんな無言、しかも無表情。
「今のところ、『告白』にしようと思ってるんです!」
告白?
『好きです。付き合ってください』ってやつ?
「体育祭って、色々な人が来ますよね? その人たちに、自分が今まで隠してたことを言うのです!」
なんだよ、その地獄。
しかも隠し事なんて思いつかないし。
「はい、天太さんもよいとのことなので、それにしましょう!」
いや、『いい』とは言ってないぞ?
「はい、じゃあ解散!」
一番前にいる、なんか偉そうな男子生徒が言うと同時に、みんな視聴覚室から出ていく。
……俺と海川柚斗が来た意味、なかったな……。