表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短気な聖女は魔王の溺愛を回避したい  作者: 浅海 景


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/47

名前と距離

ノアベルト視点です。外出前の話です。

侍女であるステラがノアベルトに余計な話をすることは、これまでなかった。思い詰めた表情で告げられたのは、リアの外出許可だった。

「駄目だ」

もちろん即座に却下した。小鳥を野に離せば戻ってこない。一度外の世界を知ってしまったら、自由になることを望むだろう。


「リア様は豪奢な衣装や宝石などに興味を示しませんが、陛下と外出できればさぞお喜びになるかと存じます」

最近のリアは元気がなく、ため息をつくことが増えていた。リア自身は恐らく気づいていないだろう。気づいていれば弱みを見せまいと気丈な振りをする、そういう娘だ。


「気分転換にもなりますし、その、陛下とも打ち解けられるのではないかと――、いえ出過ぎたことを申し訳ございません」

眉を顰めると慌ててステラが深く頭を下げる。


当てこすりでないと分かっていたが、あまり触れられたいことではない。リアを甘やかそうと物を贈っても喜ばれない。好物の菓子も食事も近頃ではあまり進んで食べようとしない。欲しい物を尋ねても断られる。リアの無邪気な笑顔を見たのは最初に食事を与えた時ぐらいだ。空腹のなか思いがけず得た食事に素直に喜びを示した。


リアにとって働かずただ過ごすことは罪悪感を覚えるらしく、何かを与えても困ったような笑みを浮かべる。一方でステラには懐いているらしく、率直に会話し素で接しているのを見て腹立たしい気分になる。


いつものようにリアの髪を撫でていると小さな溜息が聞こえた。ページを開いているものの、その目はぼんやりとどこか遠くを見ているかのようだった。

「城下に行きたいか?」

外に出すつもりなどなかったのに、ステラとの会話が頭をよぎり、気づけばそう尋ねていた。


リアの目が輝くが、すぐに不安げな表情に変わった。視線を彷徨わせ、恐る恐るという風に「行きたい」と答えた。尋ねておきながら禁じてしまえば、リアは自分のことを信用しなくなる。己の浅はかさを悔やんだが、もう遅い。

了承すると、リアは予想以上に喜んだ。いつもの困ったような笑みではない、心から嬉しそうな笑顔で礼を言うリアを直視できなかった。愛おしさが募ったものの、罪のない少女の自由を奪い閉じ込めているのだと実感させられたからだ。


せめて今回の外出では好きなようにさせてやろう、そう思うものの不安は消えず何度も繰り返し約束を求めた。内心鬱陶しく思っているだろう。いつもより活き活きした様子のリアが愛おしくて苦しい。本当はこんなところにいたくないのだと言われているかのようで。


「はい、陛下」

何度目かの返答はいつもと同じだったのに、無性に嫌だと思った。

敬称で呼ばれることで、線を引かれているようだった。

「……ノア、だ」

敬称も敬語も不要だと告げると、リアはあっさり了承した。

「ノア、もう行こ?」


名前を呼ぶように告げたのは自分なのに、実際にリアの口から名を呼ばれると不安など吹き飛んでしまった。じわりと心が満たされる、そんな気分になった。

(名は重要だとあれほど認識していたはずが……)

初めて出会ったとき、リアの存在が増したのは名を知ったからだったのに。リアから呼ばれると心地よく、気安い言葉遣いは今まで感じていた壁がなくなったかのようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ